4.勉強すること(2)~好きになる為には
「ところで、自動車というものがいつ頃出来たか……自動車の歴史から話すなら、初めて自動車と言えるものを考案したのは、レオナルド・ダヴィンチ(イタリア)が、渦巻きばね式や、人力による自動車を考案したのがはじまりだっていうのは、この教科書に載っているけれど、この頃の自動車には、意思というほど、明確なものは備わってなかったといわれてる。西暦1500年頃」
「それから次々に、西暦1599年、風力によって動く車両をシモン・ステイブン(オランダ)、西暦1769年、ニコラス・キュニョ(フランス)が、蒸気三輪車、西暦1839年、アンダーソン(イギリス)が電気自動車、西暦1876年オットー(ドイツ)が、4サイクルエンジンを製作、西暦1878年クラーク(イギリス)が、2サイクルエンジン、1885年ゴットリープ・ダイムラ(ドイツ)が4サイクルガソリンエンジンの自動車を製作し、カールベンツ(ドイツ)が、4サイクルガソリンエンジン付き三輪自動車を製作した。西暦1892年、リドルディーゼル(ドイツ)がジーゼルエンジンを発明し、西暦1904年(明治37年)に山羽虎夫が、蒸気自動車を製作する」
田邉は、困った顔をして、僕を見つめた。黒いツナギを着こなして、長い手足をコンパクトに縮み込めるようにして身体をすくめると、少しお人よしで気の弱い顔を僕に向ける。
黒目勝ちの田邉の目が、僕のことを不思議そうに見つめている。
僕は、なんだか、田邉の視線がやたら気持ち悪くって、次第に我慢できなくなり、思わずサスペンションのスプリングをギシギシ言わせた。……僕のいらだった時の癖だ。
田邉は、僕の不機嫌さに気づいたようで、検査場に寝転がった視点で僕を見つめていた姿勢から、あ、ごめん、と身体を起こした。
「……いや、悪い。……お前の声を初めて聴いた日のことを考えていたんだ」