38.違和感
「……ポンコツ田邊……今日のお前、何か少しおかしい」
田邊は、ぼんやりしたまま、スマートフォンを見つめている。
僕は、そんなポンコツ田邊を見ていた。田邊は、ぼんやりと口を開いた。
「……電話のあいつ、……様子、おかしかっただろ?少し前に泣いていたんだ。……何かあるのだと思う。……別に、問題なんて何も無いだろ?俺の休みは、今度の日曜。お前も勿論、連れていくさ。……俺は、手遅れなんて思いは、もう二度とごめんだ」
僕は、じっと、少し前の小百合さんの言葉を思い返して、僕の意識が無かった間に見た夢の内容も、同時に思い返していた。
――「ゆうくん、は、いつから、自分の名前が、ゆうくんだって、知ったの?」
――「……私が、自動車の意思を聴けるようになったのは、元気になって、病院の外に出てすぐだよ……それに、病室では、幽霊がたっくさん居て、……小さな私の話し相手になってくれてた」
――「……ラジオの波長が合うみたいに、きっと、どこかで、波長が合う瞬間があるんだと、おもうよ」
意識が戻った時に、夢の内容は、田邊に話している。
僕は、ぎゅっと、俯いた。気持ちと共に不自然にタイヤがきしんで、ドライブシャフトの回転が少し鈍るような気がした。路面をタイヤで滑る度に、キリリと、身体の一部分が軋む。プラネタリ・ギアで前進、セカンダリプーリから、ディファレンシャル経由でプーリ幅を変えベルトを大きくし、少し坂道を上がる為に変則比を変える。
「……田邊、その、後悔って奴の中身、……お前の過去、今度、僕にもきちんと話せよ」
そう僕が、田邊に言うと、田邊が運転する為にハンドルを動かしながら、ああ、と言って、笑った。
「……お前の話、聞いちまったしな、……俺ばかり、話さないわけにはいかねぇだろうな」
僕は、車なりに、走ることに気持ちを切り替えて、その応えにただ、沈黙を返したんだ。
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