33.前向きじゃない向日葵(2)
女性の視線を感じる。
ふっと、目線を女性に移すと、彼女は、息を止めたように私を見つめていた。
何かを言いそうになって、躊躇ったのか、彼女は瞳を惑わせる。
私は、不思議な感じがして、彼女に気づくと話しかけていた。
「……綺麗な向日葵ですよね……お姉さんも向日葵、お好きなんですか……?」
私の質問に、彼女は、目を大きく開くと、ええ、と、言い、俯く。
「……ええ、……弟が……とても、好きな、花で……っ」
俯いたまま、彼女は口を白い手で覆う。
ぽろぽろと、零れ落ちる涙を隠すように、嗚咽を隠すように、俯いて、口を手で覆って。
突如、彼女は、呼吸が不規則になり、ひきつけを起こし、蹲ってしまった。
過呼吸だ……私も良く起こすので、対処法は知っているけれど、まさか、他者の過呼吸を見ることになるなんて初めてで、顔を真っ青にして彼女に近づいた。
慌てて、彼女の肩と背中に手を当てて、落ち着いて、ゆっくり呼吸して……と、声を掛けながら、慌てて持ち歩いている何も入っていない袋を彼女の口元にあてる。
涙をこぼしながら彼女は苦しそうに袋に口をあて、空気を吸い、
落ち着いた頃に、私たちの様子に気づいた方々が駆け寄ってきた。
……それが、私がその、女性、篠部さんに出会った、初めの日の出来事だ。
……彼女のことを深く知れば知るほどに、距離が開いていったその女性は、
私が、塗りつぶしたい私と、そして、彼女の
傷――。
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