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27.心
白い自動車は、じっと私を見つめると、
「あなた、私に、似てるのね」
……そう、ぼんやり言って。
私は、目を見開いて、不快感のままに叫ぶ。
「……あなたみたいなのと、私を一緒にしないでっ!」
ぜえぜえと、肩を大きく上下して、私は、苛々と声を荒げる。肩を精一杯に怒らせた。
私自身よく解らないままに感情の高ぶりに自らに驚いて。
白い自動車は、いつの間にか泣くことを止めていた。
私をどこまでも見通すような瞳で、私に静かに言う。
「あなたは、まだ小さいのに……きついでしょう、大変でしょう、お可哀想に……」
私は、頭の中が真っ赤に燃え立つような思いがする。
この腹立たしい自動車にすら、可哀想だと同情される自分。屈辱に胸が焼かれるようで、悔しさに、自然、涙がにじむ。
きっ、と、白い自動車を睨みつけた。
「お母さんも、友達も、お前も
可哀想だと言うのか、人をいつもいつも上から見下ろして」
自分でも驚く程に零れる、それは、低く押し殺した、隠していたどろどろした私の心。
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