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26.不快
「……うん」
私は、困惑したままに答える。
その白い乗用車は、……私の目には、大粒の涙を流して下を向いている表情が浮かんで見える。
その顔が、私を見つめた。
私には、なにもかもを見透かす瞳がそこに備わっているように見えた。
……私は、何故か、全くわからないのだけれども、その白い自動車が、……堪らなく不快で、その声は、私の神経を逆なでするように思えた。
苛立ちが、幼い私の心を少しずつ覆っていく。
何故、そのような気持ちが湧くのかもわからず、私は、酷く嫌な気持ちになっていた。意地悪な気持ちが膨れ上がっていく。
「……そんな、泣いて、みっともない」
白い自動車は、傷ついたような雰囲気を出して……、私は、全然溜飲を下げることが出来なくて……さらに困惑する。
(……わたし、なんで、こんなにこの自動車の声聴いていると、苛々するんだろう……)
あまり、感情を表に出さないと言われる私が、ほぼ初対面の相手……(自動車だが)に、感情をむき出しにする。
……その違和感に、私自身、よく解らなくて……。




