前へ目次 次へ 25/116 25.苛立ち 「ぐすっぐすっ……ひくっ……うわぁん」 甲高い女性の泣き声に困惑して、私は、その車の前に立ったと思う。 その車は、白い乗用車だった。 そして、私が、初めて出会った意思のある車だった。 「……何故、泣いているの……?どうしたの?」 私は、困惑して、その車の前でそういった質問をした。 私も、不安でさみしい気持ちだったから、尋ねてみる気になったのだと思う。 車は、びっくりしたように声を上げた。 「私の声が聞こえるのですか……?」