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24.声
幼い頃に、私を助けてくれた自動車が、意識を失ったのは、……
今でも、心の中に傷として残っている思い出がある。
私は、あの頃、あまり外にも出られていなくて……、自動車の声が聴こえることに違和感を感じることもなかった。
病院の駐車場にいつも停まっていた車。
名前を篠部さんと言った。女性の声の自動車だった。
意思のある自動車は、……今なら、そういうものだという自覚はあるのだけれど、その当時、私は、不思議な感覚で、篠部さんと向き合っていたのだと思う。
……篠部さんは、かなり傷つきやすい車だった。
……あの日は、私も哀しい気持ちだった。午後。
病院にいつもお見舞いに来てくれていた友達が、全く来てくれなくなって、3日目だったから。
さみしくて、ふらっと外に出た。幽霊たちに見つからないような場所を求めて歩いていたら、駐車場で泣く車の声に気が付いたんだ。




