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転校先の小学校の制服は、前の学校とは違う為、慌てて用意をしたのだけれど、結局入学式には間に合わなくて、一人だけ違う制服が微妙だったけれど、あまり心配もしなかった。
……というより、……あの日、母さんのことを諦めた日から、俺は、少し変わってしまったようだった。
俺の目の前で起きることや、景色や、触れるもの、全てが、まるで水槽の中のプラスチックガラスを通して隔てられているように、フィルターがかかっていて、自分は息苦しい水槽の中に住む魚のような気がする。
―-(こんな気持ちになる時は、夜空の星を天体望遠鏡で眺めるか、賢治の短編でも読んでいればそのうち紛れていくのに。暗い気持ちで、目線を下に落とす。
憂鬱だった。俺の心を表すように、天気も陰鬱な空の色。今にも雨が降りそうな曇天。
折り畳み傘は指定の鞄に詰め込んでいる。
……落ち着かない気持ちのせいか、随分早い時間にばあちゃんの家を出てしまった俺は、学校手前の公園の木下のベンチに座り、賢治の詩集を広げる。
開いたのは、『春と修羅』
目を通している内に言葉の迷路に投げ込まれたようだった。俺は、賢治の不思議な言葉のリズムに飲み込まれ、不思議な響きの言葉のゆりかごに乗せられ、いつしか広い空間に投げ出されたようだった。
それは喩えるなら、賢治の創り出した音の洪水。星の渦。酸素が満ちた賢治の創り出した宇宙に
投げ出されて




