だれもいない秘密の時間
ある日の夜。遅くまでパソコンに向かっていた女性に、見た目は高校生くらいの少女に見える、真新しいスーツを着た女性が近づいてきた。
「せんぱーい、残業お疲れさまです」
「あ、しいちゃんありがとう♪ あなたこそお疲れさま」
「今日暑くて大変だったわね……」
隣に座る椎。世間話や他愛もない話をしながら残った仕事を片付けてゆく。そして最近エステに通うようになったという先輩の話を聞いたしいが、
「良かったら脚もみますよ? 先輩今日外回りで居ませんでしたよね?」
「えっ……いいの?」
「わたし、みんなにマッサージ上手いってよく言われるんです!
ほら、足出して!」
「う、うん」
恥ずかしそうに頬を赤らめる先輩に向かって、キャスター付きの椅子で先輩の隣までやってきた椎。そしてポンポンと自分の膝を叩いて笑顔で、しかし若干恥ずかしさを含んだ声色で言った。
「も、揉むのにストッキングじゃまなので脱いでもらってもいいですか……?」
「ふぇえっ!?」
茹でだこのように真っ赤になる先輩。そして椎にぐいっと近づくと耳許で咎めるようにささやく。
「何言ってるの。ここ会社よ? みんな居る前で……」
「ふふ、もう私達以外誰もいませんよ……?」
「え?」
周りを示す椎。あわてて顔を上げて周囲を見渡す先輩に、ちょっと意地悪な顔をする椎。そして今度は自分が先輩の耳許に顔をもっていくと、反応を楽しむように囁く。
「ほら、ね? だからナニをしたって……ばれないですよ?」
「……えっち」
「またまた、期待しているくせに。先輩から脱がないなら脱がせてあげます」
「な、なによ……。ちょ、スカートに手を入れないで!」
正面に移動した椎は、組んでいた足を崩した先輩のスカートのすそかにサッと手を入れると、薄い黒のストッキングのウエストを掴むと、にっこりも微笑んで先輩を見つめる。
「脱がせていい?」
「……す、好きにしなさい」
真っ赤になった顔を見られまいと両手で隠す先輩。Sっ気たっぷりの視線でみつめる椎。
「……先輩、誰もいないオフィスでしいにストッキング脱がされている気分はどうですか?」
「あぅう……」
そして完全に脱がせ終えると、にっこり笑顔でこう言った。
「いっぱい、い〜っぱいもみもみしてあげますからね?」
「うん……ふあぁっ♪」
そう、まだ本題は始まってもいなかった。
その事実に更に顔を赤くする先輩と、びとっ、と脚に自分の冷たい手を当てる椎。
二人の長い夜ははじまったばかり……。
Twitterに上げたものを短編に編集しました。