転校生に奪われたので、本性見せたら何故か戻ってきた。
……わたしは何が書きたかったんだろう。
ごめんなさい。
パッと思いついた文章を纏めもせずに載せたため、駄文です。
ふわふわした髪
小動物を思わせる小柄な身体
庇護欲をそそる仕草
愛らしい皆の“理想の女の子”
それが、私--花澤 美樹の印象です。
ま、全て作り物ですけどね!
◇◆◇◆◇◆◇◆
「お、おはようございます!」
「あ!美樹ちゃんおはよう!」
「美樹ちゃん可愛いなぁ〜癒される〜」
教室に入るとき、『精一杯大きな声を出してます!』という感じで挨拶をする。
私に気づいたクラスメイトが、次々と頬を緩めながら挨拶をしてくる。
だけど、私には一切近寄ってこない。
……いや、近寄れないって言ったほうがいいのかな?
いまの私はお姫様抱っこされた状態だ。
しかも極上のイケメンに。
そいつの顔へと目を向ければ交わる視線。
「ん?美樹どうかした?」
とびきりの笑顔を向けられて目が眩しいわ。
「ううん…ゆう君がカッコイイなぁって思って」
頬を染めて照れた様に言ってやれば、たちまち破顔する目の前の男。
おいおい、頬緩みすぎだぞ。せっかくのイケメンが台無しだ。
席に座ると時間ギリギリだったみたいで、ちょうど朝のSHRのために担任が入ってきたところだった。
退屈な連絡事項を聞いてるようで、右から左へと流していく。
「それと、このクラスに転校生が来ます。」
昨日のHRで言われていたことはこれか。
朝から少しザワついてたのはこれも理由かぁ〜。
入ってきた女の子は……うん。美人さんだなぁ。
サラサラした黒髪ロング
背筋をピンと伸ばした立ち姿は綺麗で、端正な顔立ちを余計に際立たせた。
その姿に一様に見惚れていた。まぁ、私も含めて。
仕方ないじゃん、可愛い子と美人さんは好きなの。
「椎野 朱音です。これからよろしくお願いします!」
見た目通りハキハキと話す朱音ちゃんは、クラスは歓迎ムード。
今日一日彼女は色々な人から質問攻めを受けていた。
私とゆう君はそれを眺めているだけで、その輪に入りにいこうともしなかった。
時折、ゆう君のことをチラチラと気にしているのと、私を睨むような視線を感じる。
んー、やっぱり仲良くはなれないかなぁ。残念。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ねぇ、怪我してるの?大丈夫?」
帰り支度をして、ゆう君にお姫様抱っこしてもらう。
その様子を見ていた朱音ちゃんは、不思議に思ったのか寄ってきた。
あー、そっかぁ。
周りは見慣れたけど、普通に考えたらこの光景は異質だもんね。
「ううん、違うよ」
「じゃあなんで?」
「ゆう君がしてくれるから。」
「……そんなの普通じゃないよ。周りからは何も言われないの?」
あぁ、この子苦手だ。
人のことに首を突っ込みたがる、委員長タイプってやつか。
この手のタイプは自分が正しいっていう確執した自信があるから、何言っても引かないんだよね〜。
まぁ、これに関しては正論だけども。
……うわぁ面倒くさい。
「……ダメな事なの?」
涙を浮かべて誰に言うでもなくぽつりと呟く。
その瞬間、周囲の目が変わる。
朱音ちゃんがグッと息詰まった。
このまま引かないと可愛い女の子を虐める絵面に見えちゃうねぇ……
「これは俺が好きでしてる事だから。」
「貴方に言ってないでしょ。」
ゆう君の言葉に冷静に言い放つ朱音ちゃん。
お〜?これは予想外。
その感じだと……あぁ、やっぱりね。
自分に突っかかる女子が珍しいのか、朱音ちゃんに興味をもったみたいなゆうくん。
これは……嫌な予感するなぁ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ゆう君、帰ろ?」
「あぁ、悪い。俺……てか、俺たち今日は朱音と一緒に帰るから。」
ゆう君が指を指した方を見れば、朱音ちゃんがいた。
興味を持って以来、朱音ちゃんと話すうちにいつの間にか好きになってきているらしい。
……前まで散々わたしに付き纏ってたくせになぁ。
「美樹。朱音が前に言ってたけど、もう高校生なんだから自分で帰れるよな?」
子供に言い聞かせるような態度にイラつく。
ていうか、わたし一言も抱っこして帰ってなんてお願いしたことないからな?
お前が勝手にやり出したんだろ。
それでもここは教室だし、周りの目もあるからちゃんと演じなきゃ。
「……うん、大丈夫だよっ!」
ゆう君は私の返事に満足したのか、朱音ちゃんの元へと歩いていった。
談笑しながら帰っていく二人。
何となくそれを見送っていると、朱音ちゃんがふとこちらに振り返ってきた。
私の姿を見ると、まるで嘲るように笑った。
まるで、『お前の居場所を奪ってやったぞ』とでも言いたげな笑み。
うわぁ……やっぱ茜ちゃん嫌いだなぁ。
別にゆう君を取られたことに関してはどーでもいい。
というか、基本自分がよければそれ以外は気にしない私は元よりドライな性質だ。
それより、朱音ちゃんに自分が見下されたことに酷くイラついた。
ゆう君のことだって別に好きではない。ただ単に一緒にいて侍らせとけば、周りがそれを羨望の眼差しで見つめてくることに優越感を覚えるだけだったからだ。
人一倍プライドの高いわたしは、見下されることを何よりも嫌った。
でも正直、もういいかな。
最近のゆう君も面倒だったし、何も彼を失ったから全てを失ったわけではない。
「美樹ちゃん、大丈夫?」
「ゆう君、急にどうしたんだろう…?」
「最近妙に話しかけてたもんね。茜ちゃん。」
こうして今も、慰めてくれるクラスメイトがいる。
皆には、朱音ちゃんがゆう君を誑かしたという解釈をされている。
同情されることは正直嫌だけど、味方につけて置いた方が何かと便利かもしれないし。
名前も知らない……てか、覚える気もない人達だけど。
悲しそうに目を伏せて、ポロポロと涙を流す。
それだけで、私は何も話していないのに勝手に話は飛躍していく。
朱音ちゃんが私のことを脅した。とか、ゆう君を騙してる、とか。
俯いて笑うのを堪えて震えていると、彼女達は泣いていると勘違いしたのか心配してくれる。
やばい……面白すぎる!
その日は初めて一人で帰り道を歩いた。
登下校はお姫様抱っこが当然だった私にとっては、すごく新鮮だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
次の日の朝
家の前にはいつも通りの……ではなく、神妙な顔つきのゆう君がいた。
「あぁ、美樹。おはよう。」
「おはよう。どーかしたの?」
私の問いかけにゆう君は微妙な顔をする。
あー……嫌な予感的中かな。
「実は、朱音のことが好きになったんだ。
今まで散々、美樹のこと好きって言ってたのにごめんな。
だから、美樹の傍にはもう居てあげられない。」
それぞれが告げてくる内容は、私の予想したものと同じだった。
ゆう君は私がどんな反応をするのか、すまなそうな顔をしながら様子を伺っている。
こんな時は“理想の女の子”なら、どんな回答をするのが正しいんだろう。
……やめた。
少し考えたけど面倒になって放棄した。
今や、ゆう君を手放したところで痛手などない。
そこまでして執着してたわけでもないし、演じるのもそろそろ疲れてきたところだ。
最後にとびきりのプレゼントを送ってあげよう。
「で?それがどーしたの?」
私の言葉が……態度があまりにも違いすぎて目の前の人達は目を丸くしている。
そのマヌケな表情に耐えきれず、笑ってしまう。
いつもの可愛らしい笑みではなく、嘲るような笑みで。
「なにその表情、笑える。ちなみにこれが私の本性だから。
大体さぁ、あんた何様のつもりなの?自分で登下校しろ?傍に居てやれない?そんなの別に頼んだ覚えもないし、どーでもいいよ。別に私はあんたのこと好きじゃない。てか、元よりあんな性悪女に騙されるような男なんかこっちから願い下げだし。」
お〜お〜。随分と仲良くなったんだね。
顔を真っ赤にして、震えるくらい怒っちゃって。
「あんたが好きだった、“花澤 美樹”は作り物だよ。」
◇◆◇◆◇◆◇◆
あれ以来、ゆう君とは決別……するはずだったんだけど。
「美樹、お弁当食べよ。」
何故か、いま私はゆう君に連れられて屋上でお昼を食べている。
「美樹、食べさして?」
「は?そんな面倒なこと誰がするか。」
あの日。本性を見せてから、何故かゆう君は前まで以上に引っ付いてくるようになった。
罵っても、むしろ嬉しそうにしている。
え、これヤバイやつでしょ。
朱音ちゃんのこと好きだったのも、最初の方に罵られてたからじゃない?
ゆう君は“いけない扉”を開けてしまったようだ。
朱音ちゃんはあの日以来、周りが流した噂によってイジメられているらしい。
一度見かけたことはあるけれど、あれは結構ひどい有様だったなぁ。今は不登校状態なんだっけ?
あと、めっちゃ睨まれた。なんか私のことを目の敵にしてるみたいだけど、知らない。
先に喧嘩売ってきたのあっちだし。
同情はするけど、心配はしない。
だって、私には関係ない。
周りからは相変わらず羨望の眼差しを受けるし、邪魔だった朱音ちゃんもいなくなった。
前みたいに演技しなくても良くなったのも、だいぶ楽だ。
そんなことを考えていたからか、機嫌の良かった私はゆう君が抱きついてきても何も言わなかった。
いつもみたいに振り払われなかった、ゆう君はとても嬉しそうだった。
こんなんで嬉しがるとか、バカか。
「美樹、大好きだよ。」
囁かれた愛の言葉に私は笑った。
「あはっ……気持ち悪いわ。ばーか。」
花澤 美樹
猫被ってるときは、ふわふわした女の子
小動物みたいで庇護欲をそそるような容姿。
自分がどうすれば愛らしく見えるか熟知しており、その容姿をフル活用している。
毒舌。基本的にドライなため、自分が良ければ周りはどーでもいいという考えをもつ。
ゆうのことは、一緒にいれば優越感に浸れるため傍に置いていると言ってるが、実際のところ結構気に入っている。
朱音
転校生。お節介な委員長タイプ。
イケメンのゆうを最初から狙っていた。話しかけられることに対して嫌がる素振りを見せていたが、頬が染まってるなどして嫌がる演技なことが周りにはバレバレ。
噂に関しては否定をしたが、周りからは一切認めてもらえなかった。自分がイジメられる原因となった美樹のことを恨んでいる。
いまは不登校状態。
ゆう君
庇護欲そそる美樹に、自分が守って挙げなきゃいけないという感情を抱いていたが、実は無自覚のドM。
一時期、朱音のことを好きになったのも自分に暴言を吐いてくれるような女子が朱音しかいなかったから。
美樹の本性は、ゆうのドストライクだったため前よりベッタリになった。罵られることに快感を覚える変態。
しかしその一方で、別な人に目が向かない様に美樹を監禁したいという欲を持つ。あまり親しくしないようにクラスの人に脅しをかける。など、だいぶ危ないヤツへと変貌を遂げた。