とある貴族の戯言
感情抑圧 死んだ顔
不満の言い合いなら よそでやってくれ
そういや僕は忙しい 仕事に趣味に忙殺される毎日だ
そういや死者の海に 親父の黒い血が流れたって話
汚れたニュースペーパーで見たけど
今にすれば もう関係ないことだ
もう放っておいてくれ
皇帝は今際の際に 情婦に言った
「僕の傍から離れるな」
「永遠の命が欲しくないのか」
だけど 彼が求めていたのは
ただの憐憫 憐みの情だけだったと知ると泣くに泣けないね
言語抹殺 やつれた死に顔
論破のしあいなら よそでやってくれ
そういや僕には息抜きが必要だ タイプする文字と飲み干すコーヒーの傍らで
そういや冥府の川が 詐欺師の血で汚れたって話
壊れたテレビモニターで見たけど
今にすれば どうでもいいことだ
何もかも厭世的な気分
楽になれる薬を一飲みしたような気分さ
少しの間 一人にしてくれないか
宰相は今際の際に 妾に言った
「私の手を離すな」
「君には永遠の美が約束されている」
だけど 彼が求めていたのは
ただの情欲 肉体の悦びだけだったと知れば泣くに泣けないね
今日は曇天で 雨も午後から降るらしい
気分が優れないのは そのせいか
憂さ晴らしに 賭博遊びでもしたいくらいだが
その相手の尻を蹴り上げたのは 僕だったから
孤独もしようがない
そういや僕は母の日さえ祝っていない もう母も老齢だというのに
そういや冥界の海が 独裁者の血で穢れたって話
破れた漫画雑誌で 見かけたけど
今にすればどうでもいいことだ
僕を心から愛する人だけ
僕に寄ってきてくれ
大統領が今際の際に 愛人に言った
「私の手を握り締めてくれ」
「君には世界最高の美が与えられるべきだ」
だけど彼が求めていたものは
ハイになれる束の間の快楽と ドラッグだったと知ると泣くに泣けないね
どうやら僕も死に時らしい
僕はちょっとした用なしの不具者だ
どうかこの哀れな貴族に
錆びついた勲章をぶら下げる貴族に
……………………
愛の手を