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彼女とネコは高いところが好き  作者: 二ツ木線五
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2】見込みどおりだったらしい僕 -4

「まあいいわ。とにかく織野司、あんたは私の見込んだとおりだ」

 三度目の笑みを浮かべた沢瑠璃さんは、さっきも口にしたセリフとほぼ同じものをもう一度口にする。

 それに対して、僕は黙ったまま沢瑠璃さんの次のセリフを待つ。沢瑠璃さんに見込まれること自体はむしろ嬉しいことだけど、何を見込まれたのかがまったく検討もつかない。僕は帰宅部の一学生にしか過ぎないのだ。


 と思ったら、

「そ、それどういう意味ですか、って聞き返せよ!」

 なぜか怒られる。

「聞き返しを要求するの!? しかも、どもりまで!」

「じゃあお前は何を見込まれたのか分かるっていうの?」

「いや確かに分からないんだけど、論点そこじゃなくて。なんで聞き返しが必要!?」

「でないと展開が進まないだろ」

「いや沢瑠璃さん主体で進めてもらっていいから!」

 なんだろう、なんだろうこの噛み合わなささ。凸と凸、もしくは凹と凹のように引っかかりどころが無ければ諦めもつくけど、噛み合ってないけど少しずつ前には進んでいるという焦れったさ。


 なので、主導権を全部沢瑠璃さんへ明け渡すと、沢瑠璃さんは「そう? じゃあ遠慮なく」と答えた。まあ、もともとこちらに主導権はなかったのだけど。

「私が見込んだのは、お前のその能力よ」

「……帰宅部の僕のどの能力?」

「さっき、毛むくじゃらの野生獣を操ってただろ、その能力よ」

 けむくじゃら……あ、ネコのことか。でも野生獣って。愛猫家が聞いたら平行線の議論がかわされるぞ。

「あれは操ったんじゃなくて、たんに懐いてきてただけだよ。その証拠に、僕はあのコたちにお手もさせられないよ。まあネコだけど」

「む。そうか」


 沢瑠璃さんは一瞬難しそうな表情になったけど、すぐに気を取り直して、

「でも、毛むくじゃらの野生獣はお前に寄ってくるのよね」

「ネコのことを毛むくじゃらの野生獣ていうの、字数的にもしんどくない? でもまあ、そうかな」

「だったら問題ないな!」

「え、なにが!?」

 こちらに情報を与えないまま、何かの問題を解決してしまった沢瑠璃さん。けれどまず確実に僕が絡んでいる以上、心穏やかではいられない。


「あの、沢瑠璃さん。その、いったい何のことなのか教えて……くれたりするのかな?」

 そう尋ねて、ようやく物事が主題のレールへ乗ったことに気づく。そうなのだ、お互いの名前を知っていても初対面の僕に、沢瑠璃さんがいったいどんな用があるのだろうか。……けれど、まさかのこのタイミングであのキーワードが飛び出すとは予想してなかった。

 沢瑠璃さんが、フッと笑った。


毛むくじゃらの野生獣! 世界中のネコ、ごめん!

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