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彼女とネコは高いところが好き  作者: 二ツ木線五
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2】見込みどおりだったらしい僕 -3

 と、このタイミングでまたネコが一匹寄ってきた。このネコも、この地域でよく見かける。

 ちょっと待って、このタイミングはマズイよー、と思いながらも、ネコの小さな額を見ていると我慢ができなくなる。もう、ちょっとだけだよ、と僕はかがみ込んで、近寄ってくるネコを迎え入れようとした。

 ――それを遮って突然、沢瑠璃さんが僕の目の前に立ちはだかっていた。

「はっはー! やはり、私の見込みどおりだったな!」

 というセリフとともに。


 突如の闖入者に、ネコは一目散に逃げていった。

 そして僕は――「ぇえー」と思っていた。

 いや。ここははっきりと言おう。引いていた。

 なぜにこのタイミング? この少女の存在に気づいてから約十分。あれだけ不備のありまくりな尾行? 後追い? を続けてもやめる気配すらなかったのに、ネコの額を堪能しようとしたこのタイミングを自らの登場になぜ選ぶ?

 脳裏にそんな疑問が膨らむけど、口にしたわけでないので目の前の少女には当然届かず、沢瑠璃さんは腕組みしながら何かに勝ち誇ったような笑みを浮かべている。


「あの。沢瑠璃さん」

 さきほどのあのセリフからして続きがあると思っていたけど、予想と違って沢瑠璃さんは腕組みに笑みを浮かべるポーズで動きを止めたままだったため、僕は恐る恐る名前を呼んでみた。

 すると、沢瑠璃さんの表情からあっという間に笑みが消え失せて、眉をひそめるというあからさまな不審感をあらわにした。

「私と初対面のはずよね。なんで私の名前を知ってんのよ、織野司」


「……」

 なんで僕の名前を知ってるんだ、と口から出かけて止まった。尾行? する相手の名前を知っててもおかしくはないだろうし(たぶん)、そうなると初対面なのに名前を知っている僕の方が断然怪しくなる(これもたぶん)。そのせいで返答に窮まってしまい、思わず「て、適当に言ったら当たったんだ」というおそらく世界有数と思われるバカげたことを口走ってしまう。うわ最悪だ、僕はなんてバカなんだ、と自分の愚かさを呪おうとしたけど、それに対する沢瑠璃さんの返答は「……そうか」だった。そして彼女に笑みが戻る。


「でも、お互いの名前が分かったなら話が早い、おい織野司」

「は、はい、なんですか沢瑠璃穂花さん」

 フルネームで呼ばれた反動で思わず僕もフルネームで呼んでしまう。すると再び彼女から笑みが消えて僕は窮まって世界有数のバカげたことを口走って以下同文。

 ……僕の頭があまりよろしくないのはこの頭ともう十八年付き合っているので十分分かっているけど……出会って早々に、僕の沢瑠璃さんへの評価が変わりつつあるなぁ。


以下同文。この言葉を使おうか悩んだ末に、我慢できず使いました。

楽しかったです。

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