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彼女とネコは高いところが好き  作者: 二ツ木線五
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17】召喚魔法、イマイチなサッカー部員 -1

 日中の授業は、大きな問題もなく過ぎていった。僕が課題をやり忘れていたという件はあるにはあったけど、その件については大きな問題でないので、やはり大きな問題はなかったという言葉の範疇内にあると思っていいと思う。

 ここ数日で、その日の集合場所は昼休みに沢瑠璃さんからメールで届くという流れがなんとなくできていて、今日もそれは変わらず昼休みに沢瑠璃さんからメールが届いた。


 沢瑠璃さんが今日の待ち合わせに指定してきた場所は、学校から徒歩二十分ほど離れた、郊外にある少し大きめの本屋だった。

 僕はその本屋をスマホの地図アプリで確認してみる。そしてその後すぐだった、その待ち合わせにイヤな予感がめぐったのは。

 待ち合わせが本屋なのは全然問題ない、むしろあり得るだろう。立ち読みしておけばどちらかが到着するまでの時間を潰すことができるのだから。だから待ち合わせが本屋なのは全然問題ない。問題があるのはその立地だ。本屋周辺をぐぐっと拡大してみると、本屋のそばには線路が敷設されていて、そしてさらにはやはりその本屋のそばに線路の上を超える架橋があるのが分かった。

 その架橋が気になる。どうしたって気になる。相手が沢瑠璃さんなものだからものすごく気になってしまう。


 だから僕はホームルームが終わると同時に学校から飛びだした(彼女の教室に行くのはもう諦めている)。そしてスマホの地図アプリを頼りに、本屋まで最短ルートをたどる。イヤな予感があたっているなら、早く着けば着くほど今想像している状況を未然に防ぐことができる。と言うか防ぎたい。

 そして本屋へたどり着いたとき、僕は「ああ、沢瑠璃さんのことがよく分かるようになったなぁ」と、僕自身よく分からない自虐的な笑みを浮かべてしまった。


 果たして、沢瑠璃さんはすでに到着していた。さすがは沢瑠璃さん、超音速下校を習得しているだけにその到着速度はさすがだった。

 けれど、彼女は本屋で待っていなかった。

 もうイヤなくらい予想どおり、彼女がいたのは架橋の下だった。大きくやぶれたフェンスの向こう、架橋の支柱に付設されているメンテ用のハシゴ、それに向かって飛びつこうとしている彼女の姿がそこにあった。


 やぶれたフェンスの向こうにあるメンテ用のハシゴに飛びつこうとしている制服姿の女子。その絵画はもう、ダリでも引いてしまうんじゃないかというくらいシュールレアリスムだった。……いや、ダリの名前を借りるのは卑怯というべきだろう。正直に言いましょう、僕が引きました。


 この件について二つ救いなのは、一つはフェンスの錆びようを見るとつい今しがた、つまり沢瑠璃さんが破壊したのではないだろうというのが分かったこと、そして彼女に対する世間の評価が下がることを未然に止められたということだった。一人のおばさんが自転車を止めて高い位置にあるハシゴの始点向けて飛んでいるのをあからさまに不審げに見ている。僕はフェンスを抜けると、飛びつこうと身を低くした沢瑠璃さんの両肩をすっと押さえつけて、おばさんに聞こえる大声で一芝居をうった。


「何を考えてるんだ、明日は大事な試合なのに、今日は体を休めるんだ、決勝であいつと会うと誓ったんだろ」

 メンテ用のハシゴに飛びつくのがいったいなんの試合なのか、正直言ってる僕自身分からないし教えてほしいくらいだったけど、とっさに出てきたのはそんなセリフなものだからもう変更できない。僕は沢瑠璃さんの手をつかむと、「さあ帰ろう、明日の優勝のために!」と言いつつ、とどめにおばさんへ律儀に頭を下げてから、本来の待ち合わせ場所だった本屋の駐車場へと彼女を連行した。


「……司、手、はなせ」

 ふと気づくと、手をつかんだままの沢瑠璃さんが少し頬を赤らめている。僕もあわてて離す。おでん探しの時は毎回手をつないでもらっているけど、やっぱり慣れない、というより照れるなぁ。

 照れると言えば、司、という呼び名も照れる。土曜日あたりから気づけばそう呼ばれていて、かなり親しくなってきているバロメーターの一つになるのだろうけど、くん付けとかを一気に飛び越えてるあたり沢瑠璃さんらしくはあるけどやっぱり照れる。それでもまだ距離を感じるのは、僕の名前を呼ぶ時は男言葉とペアなところだ。

 まあ、それでも喜ぶべきことではあるのだろう。

「くそ、でもやっぱりあのハシゴには届かないなぁ」


 沢瑠璃さんもたぶん照れていて、それをごまかすように少し大きな声でそう言う。

 「やっぱり」がつくそのセリフを出すには今しがたの経験プラス一つ以上の想像上もしくは実体験での同経験が必要なはずだけど、沢瑠璃さんがどちらで経験したのかはもう聞かないでおくことにした。

 聞かないでおくことにすればすればで「そう言えばさっきの優勝とか、なんの話?」と聞かれたので、「まったく意味ないから聞かないで」とうやむやにする。

誤って消してしまった章をとにかく急いで書き直し。


せっかく多少でも稼いだ書き溜め分が、水の泡に。。

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