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彼女とネコは高いところが好き  作者: 二ツ木線五
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7】理塚くんへの感謝がマズった件-2

「なにがやっぱりなんだ?」

 怪訝そうに聞いてきた沢瑠璃さんに、僕はたった今確信したことを話すことにした。

「ごめん、昨日伝えられなかったんだけど、僕、昨日沢瑠璃さんと会う直前におでんを見かけてるうわぁ!」

 鞄が降ってきた。アイスを落としながらだけど今回もなんとか受け止めたけど、今回違うのはぐいぐい押される鞄の陰から暗い闇を想起させる悪魔のような沢瑠璃さんの視線が覗いているところだった。


「織野司……お前の口はなんだ、顔に入ってるただの切れ目か……?」

「す、すいません、ホントすいません……!」

 地の底がもしあるならこんな暗さなんだろうな、と思わせる沢瑠璃さんの瞳だった。

 過去二回よりも長めの時間のあと、荒い息をつきながら沢瑠璃さんが鞄を引く。そして車のタイヤ留めに置いたカップアイスを(いつのまに!)拾いあげながら、

「……次は、その口をパテで埋めてサンドペーパーでカドとバリをとったあと塗装を施して初めから口が無かったようにするからな」

 人の顔面に施すものとはおよそ思えない修繕作業を丁寧に教えてくれたので、僕もリアルな恐怖を感じとることができ、「うん、分かった、次からは絶対にちゃんと教える」とこれまでの人生で一番固い誓いを立てた。


 けれどその恐怖が僕に一時的な健忘症を呼び起こさせて、どこまで説明したか思い出そうとすると。

 さっきの悪魔の瞳がウソというよりもあったことすらなかったかのように、沢瑠璃さんがとても明るい満面の笑顔を浮かべながら「でも、ホントにいたんだな!」と本当に嬉しそうな声を上げた。

 僕はおもわずドキッとしながら、「う、うん、良かったね」と答え、しまったちょっと素っ気ない言い方だったかな、と思ったけど、沢瑠璃さんが「ありがと」と言ってくれたので忘れることにした。


 沢瑠璃さんから空になったアイスカップを受け取ってゴミ箱に捨てると、沢瑠璃さんがさっき買ったらしいお茶のペットボトルを差し出してきた。彼女いわく「オゴるのはお前の勝手だけど、オゴられっぱなしはダメだからオゴりかえす」ということだったので、僕もありがたく受け取ることにする。

「そろそろ行くぞ」

「分かった、次は決まってるの?」

「ふふーん、バカにするなよ? 人をバカにする前にまず自分をバカにしろ?」

「……うん。バカにはしてないけどね」

 せめて間違いだけは訂正しないとと思ったけど、予想どおり聞いていなかった沢瑠璃さんが昨日の白地図を広げる。なので僕も諦めて地図を見る。


 何気なく昨日の赤マルを盗み見ると、ハンコが捺されていた。よくよく考えると、昨日でおでんが見つかっていれば今日のこの日はないわけで、ちょっと複雑な気分になる。

 沢瑠璃さんが、ここから少し離れた赤マルを指さした。

「よし、今日はここにしよう」

 僕は「昨日の近い方の赤マルまだじゃない?」と提案したけど、「後回して言っただろ」とすごい目で睨まれたのでおとなしく従うことにした。まるで、先輩の言うことは絶対、みたいな体育会系のノリだった。

 沢瑠璃さんは目標の赤マルが見えるように工夫して折り畳みながら、


「セキュリティのずさんなビルかマンションだったらいいな。あのドアは侵入するには厄介だ、ったくこっちの仕事を邪魔するなよな」

 知らない人が聞いたら確実にアウト判定が下されることをさらりと言いのけて(実際にホントにアウトだ)、沢瑠璃さんが鞄を肩にかける。

 その沢瑠璃さんの手から、僕は地図を拝借した。そして、今しがた決定した赤マルの場所を改めて確認する。

「どうしたんだ? その地図高かったからあげないわよ」

「いやもらわないよ。それより、ここに関してはセキュリティは簡単だよ」

 僕はその赤マルをてんてん、と指で小突き、怪訝そうな顔つきになった沢瑠璃さんへ笑いかけた。

「このマンション、僕の友達が住んでる」


 ――理塚くん、君の知らないところでありがとう。

 僕は心を込めて「ありがとう、君の名前を借ります」と理塚くんへメールを送った。

 部活が終わったらしき時間に、理塚くんから「何するつもりですか」と返信があった。当たり前だった。

何気に書いた二人の鞄の押し合い、こんなにも多用することになるとは。

司くん!女子相手に互角はないんじゃないか!

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