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彼女とネコは高いところが好き  作者: 二ツ木線五
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6】二階アパートのトタン屋根 -3

 あ、今視線があった。あ、視線外した……いやまた合った。

 僕の声が届いたのか、屋根の上のあの人が何度かチラ見してきて、そして身を翻すと屋根の向こうへ姿を消した。

 彼女の行動原理が人智を超越していたのでそれからどうなるのかも分からず呆然としていると。

 あ。

 沢瑠璃さんがアパートの二階から階段で降りてきた。

 その仕草のあまりの普通っぷりに呆然を継続していると、沢瑠璃さんは僕の前までやってきて、

「見るなぁ!」「うわぁ!」

 鞄が降ってきて僕はそれを受け止めて彼女は押してきて僕も押し返して以下同文。


 僕は彼女がすぐそばにいることを実感した。

「……何しに来たのよ、織野司」

 少し乱れた髪を整えながら機嫌のあからさまに悪そうな口調の沢瑠璃さんに、僕の喉がぐびりと鳴った。飲み込んだのは「何しにいたの沢瑠璃さん」という言葉だった。なにしろ今日中に見つけたかった沢瑠璃さんを、探索開始二十分経過時点で見つけたどころか接触できたのだ、理塚くんに言わせれば「こんなチャンスめったにない」。よけいなことを言ってる場合じゃなかった。


 僕は駆け引きなどせずに、沢瑠璃さんへ頭を下げた。

「昨日はごめん! 一度は手伝うって言ったのに、断っちゃって!」

「……」

 返ってくるのは無言。昨日の別れ際を彷彿させるあの無言だった。昨日はそれに対して僕も何も言えなかった。

 今のこの瞬間は本当に昨日の別れ際の再現のようで、だからこそ昨日と同じ結果にしてはいけないと強く思った。そしてそれ以上に、沢瑠璃さんのクラスメートが言った「手伝うわけない」、そんなことないとも強く思った。


 クラスの誰も手伝う人がいなかったとき、やり方のマズさもありはするけど沢瑠璃さんは傷ついたはずだ。そしてその前例があったうえで、それを知らなかったといえ僕も手伝えない、と言ってしまった。沢瑠璃さんはもっと――傷ついたはずだ。だから。

 昨日と同じ結果にしてはいけないと強く思った。

 僕は、がば、と顔をあげて、沢瑠璃さんの瞳を真正面から見つめた。


「沢瑠璃さん。おでん探し、手伝わせて」

 拒否られることは充分に承知していた。失った信頼を取り戻すというのは簡単じゃないことを重々承知している。そのうえで、言葉を重ねた。

「手伝いたいんだ。少しかもしれないけど、沢瑠璃さんの力になりたい」

 せめて、この誠意が届けば。僕は沢瑠璃さんの瞳を見つめ続けた。


 と。

 ん?

 沢瑠璃さんが頬を赤らめた。そしてふいっと横を向く。そして腰に手を当てた。そして。

「ほ、ホントはお前なんかに手伝ってほしくなんかないけど、そ、そこまで手伝いたいんだったら、仕方ないけど手伝わせてやる。し、仕方なくだからね!」


 ――僕の喜びの感情と「ありがとう!」の言葉が数秒遅れたことは許してほしい。ニュアンス的になにかのアニメで見たような態度とセリフを沢瑠璃さんからいただけるとは、思ってもなかったのだから。


沢瑠璃さんのキャラも、ようやく定まった感じがあります。

いまさら!?と言わないでください、彼女はある意味、作者の行動欲求が反映されてるので、逆に定まるのに時間かかりました^_^;

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