3】スタンプラリーらしき地図 -1
「ここまで来たらもうこっちのものだな」
沢瑠璃さんが額にうっすらとにじむ汗を手で拭きながら、小さく笑った。
いや追われてないしそもそも追われても仕方ないけどね、と言いたい僕の口をかろうじて抑えられたのは、彼女の笑みに一抹の苦味を読み取ったからだった。
彼女に先導されるまま到着したのは、僕も初めて来る公園だった。少し規模が大きく遊具も豊富に見える公園だけど、陽がそろそろ暮れはじめようかというこの時間帯は、遊んでいる子供の数もあまり多くない。
沢瑠璃さんは、心なしかそわそわしていた。それが、子供の可愛さからくる感情なのか遊具で遊びたい衝動なのかは僕には分からない。
「ちょっと待ってね」
僕は公園の入口にあった自販機でお茶を二本買い、うち一本を沢瑠璃さんに手渡した。飲むもの選ばせないのか、とか反撃があるかと思ったけど、彼女は「ありがと」と素直に受け取った。
「じゃあ、さっきの続きするぞ」
歩き始めた沢瑠璃さんが話し合いの舞台に選ぼうとしたのは、よりにもよって象の形をした滑り台だった。
僕には無理だった。
僕にとって、滑り台はある意味ギロチンよりも凶悪で芸術性の欠片もない怪物だった。
ただそれ以前に、話し合いに向いてないと思ったからだ。だから僕はやんわりと「あ、こっちの方がいいんじゃない」と木を円形に囲むコンクリ作りのベンチへと、承諾を得ることもなく座った。
予想どおり沢瑠璃さんは不機嫌そうな顔をしたけど、とくに文句も言わずに座ってくれた。……まあ僕との間に優に二人分はある距離を空けてだけど。
「よし、じゃあさっそく」
そう言って、沢瑠璃さんは自分の鞄をごそごそと探りはじめた。はじめながら、
「さっきの写真見てもう分かったでしょ。お前には、おでんを探すのを手伝ってほしいんだ」
「うん、それはもう分かった。それは全然いいよ。だからさっきの写真、僕のスマホに送ってもらっていい?」
探すなら、そのネコ……じゃないね、おでんの特徴を知っておかないと、ねえ。だから写真を送ってくれるのが一番手っ取り早いんだけど……
沢瑠璃さんはあからさまな不審感を募る目つきで僕をにらんでくる。
「……なに企んでんのよ」
「は!? いや写真ないと分かんないじゃない!」
「そうやってメルアドをゲッツするつもりだろ!」
「え……あ、なるほど」
言われればたしかにそういうことになって、女子はそういう所はボクサー並みに反応するから注意しろ、と理塚くんからも教えてもらったことがある。なるほど、こういうことか。
シーンの変更です。
メインは滑り台です。
そんな馬鹿な。
あ、ゲッツ、へのツッコミを忘れてた。




