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異世界に派遣されたお仕事です!  作者: tera
一章-ゴブリン討伐編-
10/26

-9話- いきなり派遣?~ゴブリン系って誰もやらない糞仕事6~



「昔、平等院近くで食べた宇治抹茶アイスは美味しかったのう」


 気が緩む様なそんな口調で、ゴブリンと俺達の間にアリエルがフワフワと降りてくる。ゴブリンは驚いて急停止する、そして警戒しながら戦闘態勢を取った。


「ろりばばあ!!!!」

「な、なんて失礼な事を言ってるんですか! 謝りなさいゴミムシ!」


 思わず感激して本音を叫んでしまった。

 それと同時に後頭部にケティの杖が大きく振り下ろされた。


 あの、貴方も十分失礼なんですが。


《ふん、ろりばばあとやら。その魔力、かなりの強者とお見受けした》


 アリエルの姿を見て、ゴブリンキングは武者震いする。


 あかん!

 こいつそう言う奴だった!


「お、おい。あんまり調子に乗るなゴブリンさんよ」


 俺が殺されるだろうが。


《はは、お前は殺してやりたい程に我を愚弄してくれたが……それよりももっと強い仲間を、戦士を呼んでくれた事は感謝している。もう殺しはしないから邪魔にならん内に消えろ》


 そしてゴブリンは高らかに叫んだ。


 “ろりばばあとやら、——血を血で洗う戦いをしようぞ!”


 とな。



 対するロリババアもといアリエルは、妙に静かだった。

 いや違った。


 ロリを象徴する様な彼女の黒いツインテールが、プルプルと揺れていた。

 こ、これは一体どういう感情の現れなのか。


 チラっと横目で俺の姿を捉えたアリエルの目は、冷酷そのもの。

 彼女の口が、静かに動いた。


 “あ と で コ ロ ス”


 ——出来る事ならどっちも自滅してくれるとありがたい。

 そしてこのまま逃げ去る様に現代日本へ戻り、心変わった様に真面目に働くから許してください神様。


《どうした! こないのかろりばばあ! なら我から行くぞ!》


「もうやめろおおおおおお!!! 俺のライフはゼロだから!!! SAN値ガンガン削られてるんだからあああああああ!!!」


 流石にケティも冷や汗流している。

 アリエルは一つ溜息を付くとひとりごちた。


「はぁ、時間がかかり過ぎとるのうと思って見に来てみれば。こんな雑魚相手に何を苦戦しとるんじゃ……まぁでも住所不定無職童貞には流石に厳しいかのう?」


「元を付けろ元を、今は派遣社員だろ一応」

「童貞に元を付ける必要は皆無じゃろ」


 ききき貴様!

 言ってはならん事を!

 絶対に口に出してはいけない一言を!


「どどど童貞……ボッ///」


 ケティは顔を赤くしていた。

 流石に処女には刺激が強過ぎたか。


《貴様……、我を雑魚だと言ったな?》


 ゴブリンキングの浅黒い緑色の肌から蒸気が噴き出ている。

 明らかに激高していた。


「ああ、言ったのじゃ」と無い胸を張るアリエル。


《ならば受けてみろ、我が最高最強の技——、》


 ゴブリンキングが腕を広げた。すると、周りの燃えていた木々から彼の腕、身体に次々と蔓が伸びていき締め付け始めた。おびただしい量の蔓が奴に伸びて行き、蔓人間の様になって行く。


「な、何の魔法だ!?」


 そうやって驚く俺にアリエルは「ちっちっち」とムカつく表情をして舌を鳴らす。


《ぐあああ!! な、何だこれは!? 一体、一体我に何をしたああああああ!!!!》


 え、どゆこと?

 アリエルは、ケティの胸に抱えられるベビートレントを見ながら言った。


「お主は森を燃やし過ぎた。そしてその子供を脅かした。——森を治めるトレントの怒りは恐ろしいぞ」


 意志を持って蠢く蔓をつたって、火の手がゴブリンキングを包み込んだ。火が、繭の様にゴブリンを包み込み、その中から苦痛に苦しむゴブリンの声が響き渡る。


《な、何故だああああ!!! 大体この森を燃やしたのは——》


「うおおおおおお!!!! いっけぇえええええええええ!!! コイツは俺達が守ってたベビートレントを狙ってきやがったんだああああああ!!! なぁケティ!?」


「え? 森を燃やそうって言ったの貴t——」

 だめだこいつ話について来てねぇ。


「うおおおお!! 可哀想に!! こんなに怯えてしまって!! くっそぉ!! こんなに綺麗な森が、燃やされて行くのをただ黙って見ているだけだなんて!! 俺はなんて無力なのか!!」


 そして俺は、いかにも無力そうに跪いて、ギュッと土を握りしめながら、身体を大きく嗚咽混じりに震わせて、涙を流した。


 これが二十九歳派遣社員の演技力だ。


 チラっとアリエルの方を確認すると、ゴミを見る様な視線を向けていた。

 でもこれで良い。


 生き残る手段がこれしか残ってないから……。

 もしプライドはあるのかと聞かれたら、逆に聞いてやるよ。


 プライドが金になるのか、プライドで腹が膨れるのか、プライドで雨風が凌げるのか。

 そんなもん捨ててやる。


「これが森の怒りだああああああ!!!!」


 このギリギリな物語に終止符を打つべく。俺は大きく右手を振りかぶって、焼き焦げて膝をついたゴブリンキングに駆け出した。


「プライド捨てた派遣社員の拳は、ちっとばっかし響くぞ!!!!」


《無念。だが、その一撃を求めていたのだ》


 アリエルが片眉をもたげて口笛を吹く。

 振りかぶったと同時に大きな突風が吹いた。


 山火事が一瞬で消えてしまう程の、凄まじい威力の衝撃が生まれた。それだけでは飽き足らず、ゴブリンの集落とされていた洞穴も、その盛り上がった地形ごと消滅して、一瞬にして荒れ地になった。


「——へ?」


 放心する俺に、アリエルが言う。


「でも少しは威力を抑えんかいたわけ」


 うそだろおい……。

 オラ、地球育ちのサ○ヤ人だったってのか。








落ちが弱い。(確信

ツイッター@tera_father


処女作、テラ神父の方もよろしくおねがいします。


『Real Infinity Online』VR初心者ゲーマーがテラ神父

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