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彼は彼女を護りたかった

彼は彼女を護る為にの続きです。

今回は、彼目線です。

※前話の彼女は知らないを読んでからの閲覧を推奨します

【彼は彼女を助ける為に】



『……また、××だった×。×××おしし×××ば』




平和が取り柄の小さな村に、自らを天使と名乗る中性的な子供がやって来た。外からの訪問者に僕を含め村人の殆どが珍しがって集まっている中、自称天使は、ある人物の名を出し、その人物を探して連れて行く為に来たと言う。

そして天使が出した名前の主は、僕だった。天使はその表情の読めない眼で僕を見つめ、「詳しい話は君の家でしよう」と言って有無を言わさず僕の手を取り、家に連れてかれた。

家に辿り着き、キョロキョロと周りを見渡してから、天使は僕の眼をじっと見た後、探していた理由を教えてくれた。



「君は昔大罪を犯してしまった悪魔の生まれ変わり。最近、君の身体に黒い羽根の形をした痣が浮き出ただろう?それが証拠だ。このままここに居たら、君は悪魔化して理性を失い罪のない村人だけでなく愛しい幼馴染みさえ殺してしまうだろう」

僕は自分が何が言われたか一瞬分からなかった。悪魔の生まれ変わり?そんなのは馬鹿馬鹿しいと笑い飛ばしたかったが、誰にも言わず隠していた痣の事まで知っている天使を、僕は疑う事が出来なかった。

「どうすれば、村のみんな……彼女を殺さないですむのか」そう問いかける僕に、淡々と「前世の君が罪を犯したとある場所で、この世界を護る人柱に暫くなればいい」と表情の読めないに僕の姿を映して言った。

そして僕は、彼女を自らの手で殺めない為に人柱になる事を決意して、その日の夜に天使と二人でみんなにバレないよう静かに村を出て、前世の僕が罪を犯した場所を目指し旅立った。


村からあまり出たことの無い僕にとって、見るもの全てが新鮮でとても楽しかった。けれどふとした時に村に置いてきた彼女の事を思い出して、痣と胸が酷く痛んだ。そんな時天使は、そっと手を握ってくれて、その優しさに触れて涙がポロポロこぼれ落ちた。



天使と旅をしてから暫くたったある日、僕らはとある大きな街の宿屋に泊まった。部屋に二人で寛いでいると、「旅もそろそろ終わりに近づいてきた」天使が呟いた。

そうか、もうそろそろ僕は人柱になるのかと考えていると「そろそろ終わりだからこそ、油断は出来ない。今までだって………。兎に角、君はこれから今まで以上に悪魔化する恐れがある。……もし、幼馴染みの彼女に逢ってしまったらすぐに追い返すんだ。」

天使が何時もより険しい表情で重々しく言ったから、僕はどうして彼女の話をしたのかとか今までって何の事なのか疑問に思ったが、聴ける雰囲気では出来なかった。

天使が彼女の事を言ったのは故郷の村以来だし、故郷の村から遠く離れたこの場所に、彼女が来れるとは僕には思えなかった。

けれど、天使の表情や声色から何処か嫌な予感を感じ取った。

僕らはその後、一言も喋らずに重苦しい空気が漂う中眠った。



その後は僕が悪魔化しそうになるのを天使と二人で必死に止めながら旅をし、漸く目的地の場所の近くの小さな村にまで辿り着いた。

「やっと旅も終わるな」そう呟く僕に、「油断は悪魔化を招く。あまり油断するな」と天使は重々しく言う。

分かってると返事をした後、「疲れたから僕は先に宿屋で部屋を取って休むね」と言うと、天使が「用事があるから少し単独行動になるがゆめゆめ油断するなよ」と言って村の奥に歩いて行った。そんな天使を見て、何か不吉なものを感じつつ、僕は宿屋の看板が掲げられた建物へと向かった。

宿屋で部屋を取り鍵を閉め、荷物を置いてからベッドで横になり、瞼を閉じて故郷の村や彼女の事を思い出す。あれから大分経つが、彼女は元気にしてるだろうか。そう考えていると、部屋の扉がノックされた。

僕は天使が帰って来たと思い鍵を開けるために扉に近づくと、何故かカチャリと音を出して扉が開いた。



開いた扉の先に立っていたのは、天使ではなく何度も夢に見た故郷に置いてきた彼女だった。ついに幻覚を見始めたかと冷静に考えていると、彼女は僕に抱きついてきた。僕は彼女が抱きついてきた事に吃驚した。幻覚じゃない?体温がある。…じゃあ、本当に彼女自身なのか?

僕がそんな事をグルグルと考えていると、彼女は「逢いたかった」と涙声で言った。僕はそれを聴いて、彼女も僕に逢いたかった事が嬉しくて、考えていた事を放棄し、「僕も逢いたかった」と言って彼女を抱きしめ返した。



どれ位時間が経ったのだろうか。不意に痣が痛んだ。

それは悪魔化の予兆で、今まで何度も

起こってきた。

「君はもう村に帰るんだ」そう、彼女の耳元で囁いた。

天使が居ない今、僕の力だけで悪魔化を止めるのは極めて難しいだろう。それなら、せめて彼女だけでも逃げて生き延びてほしい。

「君は僕の事を忘れなきゃいけない。僕は君を護りたいんだ」

僕が彼女を殺めてしまう。そんな事は嫌だ!悪魔になって彼女を殺したくないっ!

頭の中で悪魔が囁く。《愛しい者を亡くす痛みを、忘れたのか。何の為に私は地に堕ちたかっ!!思い出せ!》

囁きからやがて叫びになり、悪魔は僕の理性を壊そうとする。あぁもう駄目だ……頭が、割れる様に痛い。痛い痛い嫌だ、殺したくない、逃げて逃げて愛して殺した────



いつの間にか、全てが終わっていた。

「折角彼が悪魔化して貴方を殺してしまわない様に村に置いていったのに。彼が悪魔化せずに人柱となり世界を危機から護るはずだったのに」

天使が、残念そうに赤い紅い血溜りの中心に横たわる彼女の亡骸に言った。

そして、僕の意識が戻った事に気付くと、クルリとこちらを見て「やぁ。……また失敗したね。だから彼女には気を付けてって言ったのに。悪魔化してしまったら意味ないんだ。それじゃ、またね」と、僕の心臓に光輝く剣を刺して淡々と冷ややかな眼で言い放った。



意識が段々と薄れる中、「……また駄目だった。やり直ししなければ」誰かがそうポツリと呟いたのが聞こえた気がした。




end

続きます。多分次が最後です

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