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思い込みの恋(全年齢版)  作者: 秋月朔夕


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「思い、出した、の……?」




 呆然と呟く彼に、やはり彼はわたしのことを覚えていてくれたのだと悟る。

 きちんとわたしのことを知っていて、告白したのだ。



(最初から不誠実だったのはわたしだけだったのね)



 告白を罰ゲームだと思い込んで、ちゃんと付き合うつもりなんてなかったくせに適当に受け入れて、都合が悪くなったら別れるだなんて言って。

 我ながら最低だ。謝って済むことではない。けれど彼の気持ちを思えば謝らずにはいられなかった。



「……ごめんなさい」

「それは、なんの謝罪?」



 喉の奥から絞り出したような声は苦痛に満ちていた。



(ああ、また選択を間違えた)



 彼の気持ちを思えば、なんて綺麗事を言っておいて結局楽になろうとしていただけだ。

 思えばいつもこうだ。感情のまま行動し、人を傷付ける――こんな奴に好意を伝えられても彼だって迷惑じゃないの?



 幸いなことに今ならまだ彼にわたしの気持ちを悟られていない。だからこのまま誤魔化せば、それで済む。そう分かっているのに――性懲りも無く、また口から感情が溢れ出てしまう。




「なにも覚えてなくて、真剣に向き合うつもりもなかったくせに、告白を受け入れて……」

「だから? 言っとくけど俺は別れ話なら聞く気はないよ。そもそもそんなのハナから気付いていたし」




 苛立っている彼の刺々しい口調になればなる程、わたしの心臓が心臓がきゅうと締めつけられるように苦しかった。

 今にも逃げ出したくなる足を床に押し付け、掌に爪を立て、ゆっくりと彼を見上げる――わたしは逃げないと決めたのだ。



「気付いていたってどういうこと?」

「別にそのままの意味だよ。どうせ俺のことなんか覚えてもいないキミに、ただ告白したところで結果は見えていた。それならいっそ『罰ゲーム』のように仕立てれば、告白を受けてくれると思った。だから土田達にわざとキミから見える場所に居させたんだ。ついでにこっそり動画も撮って貰ったら後々の証拠にもなるしね」



 嘲笑じみた言葉であった。以前のわたしであれば額面通りに受け取り、そのまま逃げ出しそうな程の冷たい態度。けれど、よくよく見れば彼の手は震えている。


 ああ、そうか。

 彼も怖かったのか。



 わたし達は二人共、臆病者で自分を守ることばかり考えて、相手のことなんかお構いなしだった。

 そんなのであれば最初から上手くいきっこない。

 わたし達は最初から二人揃って間違えていたのだ。




「……馬鹿ね」



 初めて自分から彼の手に触れる。大きくて筋張っていて、少し日に焼けた男らしい手だが今は少し体温が低いようだ。温めるように両手で包み込めば、わたしの行動に驚いた彼がビクリと身体を硬くする。




「なに、をっ……」

「わたし達は二人とも馬鹿よ」



 わたしの一挙一動に目を丸くしている彼にどうしてこんなに怯えていたのだろう。

 息を呑み込む彼は呼吸すら忘れてわたしを見ている。恋心を自覚したからこそ、その眼差しを占領しているのが自分だけということが嬉しい。




 だから、わたしは舞い上がってまた言葉足らずなことを吐き出すのだ。





「ねぇ、蓮くん。わたし達の関係終わりにしましょう」

 



 


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