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周囲の騎士達は、制止の指示を無視して王族同士の諍いに介入してよいものか決めかねていた。


ユーリから手は出さなくて大丈夫だと厳命されている。しかし、ユーリの頬にはアーサーによって殴られた形跡がある。


騒がしい室内に、ニコライがマリーベルを抱き上げたまま毅然とした態度で入室してきた。


窓から差し込む陽の光を浴びて、二人の髪はキラキラと輝いて見える。金色の髪に空色の瞳を持つニコライの容姿は他国の者達も目を奪われた。それに抱き上げられているマリーベルも美しく、二人は絵本の中から飛び出してきた人物達のようだった。




アーサーは、今にもユーリに飛び掛かるのではないかと思わせるくらいに激昂していた。


「マリーベルが攫われる前に収束する約束だったはずだ!」



「別に手は出していないんだからいいじゃありませんか?それにあなたが振られた相手というのも興味がありましたし」



思いがけない言葉がひっかかり、マリーベルは思わず呟く。


「振られた……?アーサー様は、ミシェル様がお好きなのでは?」





「マリーベル!大丈夫か⁉︎ 違うんだ!誤解だマリーベル!私は━━」



「それ以上の言葉は控えてください‼︎アーサー殿下! マリーベルは既に私の婚約者なのですから‼︎」



「なっ⁉︎ ニコライ……それ…は、本当なのか? マリーベル?」


アーサーは、ニコライに抱き上げられているマリーベルへと視線を移す。改めて二人の仲睦まじい様子を見てショックを隠せなかった。


その様子を見たユーリは、アーサーから距離を取り言葉をかける。



「不正の証拠がないと手を焼いていた所だろう? 


今回のことで、膿がだせたんだ。もうこのくらいで充分でしょう?


アーサー殿、それにロゼアは同盟を結ぼうとの考えに変わりはない。


どうやら、そちらの彼が貴殿に話がありそうですね。


では、アーサー殿、殴られたことを口外しない代わりに、マリーベル嬢の件はこれ以上触れないでいただきたい。


では、また。


マリーベル嬢、怖がらせてしまい申し訳なかった。」



ユーリは、マリーベルに一礼して騎士達と共に去って行った。


マリーベルは、いまだ震えが収まっておらず、何も言葉を返すことが出来なかった。


ニコライはエントランスの壁際にゆっくりとマリーベルを下ろして、マリーベルに羽織らせた自身の上着を、再度かけ直した。


「少しだけここにいてください」と言いながら、マリーベルの頬に口付けると、アーサーの側へと歩んで行く。


「さすがに、他国の王族へ暴力を振るうわけには行かなかったので、代わりにアーサー殿下がなさってくださり、そのことに関してだけは感謝します。けれど、いくらアーサー殿下とは言え、マリーベル嬢を危険に晒したことは許せない行為です‼︎ 」


ニコライは鬼気迫る形相でアーサーを睨みつける。


「ニコライ! くそっ!ならば勝負しろ!これは決闘だ! お前の腕がどの程度のものか知りたい。マリーベルを口先だけでなく、守り切れる人物なのか見極めたい。


 例え私が怪我することがあったとしても、不問に伏す。その代わり、もし私が勝ったら、その時は━━マリーベルに気持ちを伝えさせてほしい!」



周囲の騎士がどよめき、「アーサー様、なりません」と止めに入るも無駄だった。



腰から剣を抜き、ニコライに真っ直ぐ突きつける。


「いいでしょう、その勝負お引き受けします。これでも、それなりに身を守る術は習得してきましたから。生ぬるい環境で育っている貴方とは違って。」



マリーベルを助ける為に帯剣していたので、ニコライも剣を抜きアーサーに向ける。



「ニコライ様……」



マリーベルはただ黙って祈ることしかできなかった。



文武両道と言われるアーサー様に、敵う相手がいるのか不明だ。









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