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幸いなことに廊下には誰もいない。


マリーベルは出口をもとめてひたすら走り続けた。


「あっ」


ふらついて、バタンと倒れる。


痛い……



膝を確認すると、打ち身の痣ができていた。


どうも頭がすっきりしないわ。


薬を嗅がされたのね……


でも、これくらい耐えなきゃ。


大丈夫、もう、私は昔とは違う


ニコライ様の元へ帰るんだから!



マリーベルは自身を奮い立たせて、気合いでたちあがる。



裸足で走っているので足の裏も痛い。


でも、それでも逃げなきゃ。


いったいなぜ自分がユーリ殿下に捕まったのか、襲われそうになっているのか、状況が全く分からない。


階段をみつけて、階下へと順調に降りていくマリーベル。


広い邸だけれど、人の気配がないので別荘なのかもしれない。



無我夢中で降りていくとエントランスホールが見えてきた。


「出口だわ」



外へ出られると喜んだのも束の間。


扉付近には数名騎士が待機していた。



「そんな……」



うっかり声にだしたのがまずかった。


騎士がマリーベルの姿を確認する。


マリーベルはエントランスを諦めて、廊下を突き進む。


背後からは足音が近づいてくる。


「はぁ、はぁ」



こんなに走ったのは人生で初めてかもしれない。


突き当たりの窓を開けてテラスへとでる。


2階とはいえ飛び降りるのには勇気がいる。


けれど死ぬことはないはず


後ろを振り向くと、騎士の姿が数メートル先に見えてきた。


時間がない


意を決して飛び降りようとした時


「マリーベル‼︎」


決して聞こえるはずのない人の声が響く


「どうして……ニコライ様‼︎……とアーサーさま?」



「マリーベル!無事か!今行く!」


アーサーは邸のエントランスへと走りこんで行く。



「マリーベル! 私を信じて!」


ニコライはテラスの下に駆けつけると、両腕を開いてマリーベルを誘う


「ニコライ様!」


「マリーベル!私がいる!信じて! 必ず受け止めます!急いで!」



「ニコライ様!」



マリーベルは少し躊躇った後、テラスの手すりを乗り越えて、ニコライめがけて、倒れ込むように飛び降りた。


ぎゅうっと目を閉じて、身体が落ちて行くのを感じたのは一瞬のことだった。


ドスンとぶつかる衝撃があったものの、引き締まった身体の上に倒れ込んでいて、ぎゅうっと抱きしめられる。



「マリーベル!無事で良かった……」


「ニコライ様!ニコライ様!こわかった……」


マリーベルはニコライの上で、顔を埋めて子供のように泣きじゃくっていた。


「もう何も心配いりません、あなたを一人にするのではなかった……怖かったでしょう、怪我をされているではありませんか」


ニコライは自身の上着をマリーベルへ羽織わせる。


ハンカチを取りだすと、マリーベルの膝を手当する。


「許せません‼︎」


温厚なニコライが怒気を含んだ声を漏らす。


ハンカチを巻き終えると、ちゅっとマリーベルの膝に口づけて衣服を整える。


「ひゃぁ」


「おまじないです」



スカイブルーの瞳に見つめられて、マリーベルは安堵する。


あぁ、ニコライ様の瞳にもっと見つめられたい。


「マリーベル、失礼しますね」



ニコライはマリーベルを横抱きにすると、邸の中へと入っていく。


「ニコライ様⁉︎ ど、どうして中へ入るのですか! 早くここから離れたいです!」


「心配いりませんよ、マリーベル、あなたには指一本誰にも触れさせませんから。このまま私の首に手を回して眠ってもいいですよ」


普段なら照れてしまうマリーベルだが、この時ばかりは、ニコライの言葉に甘えて、首に手を回し寄りかかるように顔を埋める。



あぁ、夢ではないんだわ と確かめるように。


エントランスホールでは言い争う声が響いていた。




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