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「んん、ここは?」


マリーベルはパチリと目を開けると見慣れない天井に戸惑う。


慌ててガバリと上体を起こす。

マリーベルは見慣れないベッドに寝かされていた。


服装に乱れがないかを確認して、ほっと安堵する。


私はどうしたのでしょう?


たしかジャクリーン様とレイチェル様と馬車に乗って……


「った、痛い」


思い出そうとするとこめかみの付近がズキンと痛む。


なぜお二人が私を?


誰もいない室内を見まわすと、急に心細くなる。


ゆっくりとベッドから足を下ろし、立ちあがろうとした時だった。


ガクンと視界が揺れてその場に崩れ落ちる。



「力がおもうように入らないわ。どうしたのかしら」



「大丈夫ですか?」



ガチャリと扉が開かれた音がすると、颯爽と男性が駆け寄ってきた。



低いバリトンボイスの声色で呼びかけられたかと思うと、マリーベルを抱き上げてベッドへと横たえる。


「やめて、くださいっ、大丈夫ですからっっ」



マリーベルは見知らぬ男性に抱き上げられて、嫌悪感を露わにする。


ゾワゾワと身体中に鳥肌が立ち、不快で仕方なかった。


触らないでっ!



ニコライ様に触れられた時とは違い、拒否反応を起こしていた。



ゴツゴツとした硬い胸板も意図せずに感じてしまい、触れられた箇所全てを消毒してしまいたい気分になる。



私に触れていいのはニコライ様だけ、


触れてほしいのはニコライ様。


それ以外の男性には触れられたくない。



マリーベルは、そこで、初めてその男性と二人きりだということに思い至る。



底知れない不安に駆られた。



「そんなに警戒しないでください、マリーベル嬢。何もしませんから。ですが……噂に聞いてはいましたが、実にお美しい。あぁ、申し遅れました。私はユーリ・ロゼア。ロゼア国の第二王子です。お見知りおきを」



言い終えたかと思うと、ユーリはマリーベルの手の甲にそっと口づける。


「ひゃあ!」


マリーベルは、手の甲を慌てて引き離す。


「おや、こういうことに慣れていないのですね?初心な所もかわいらしいですね。どうでしょう?私にもチャンスをいただけませんか?あなたを振り向かせたい。


あぁ、身体がおつらいのですね。まだ薬が抜け切れていないのでしょう。もう少し眠られるといいでしょう。さぁ」



サラサラとしたアッシュグレーの髪をしたユーリは、マリーベルをベッドに横たえると、あろうことかマリーベルの上に覆い被さる。



「⁉︎」



あまりのことに声も出せずマリーベルは、ドン‼︎っとユーリを力の限り押し退ける。



が、ビクともせずユーリはその翡翠色の瞳でマリーベルを見つめる。


マリーベルは、ユーリの瞳の中に自分が映り込むのも耐えられずジタバタ暴れる。


「はは、そんなに怖がらなくても、本当に何もしませんよ。ただ、寝かしつけてさしあげようかと」



その体制のままユーリはマリーベルの頭を優しく撫でる。


「いや!」



マリーベルは知らずに涙を流していた。


「すみません。なかせるつもりはなかったのですが」


動揺して力が緩んだユーリを、マリーベルは死に物狂いで押し退けた。


「おっと」


バランスを崩すようにユーリがマリーベルの上から横へと移動する。


マリーベルは、一目散に扉の外へと駆け出した。



「まだ走るのは無理だ!」


というユーリの声を無視して、必死に廊下を駆けて行く。









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