表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/56

34

「ニコライ様、マリーベル様を返してくださいませ!」



「ちょっと、エレナ?」


エレナは強引にニコライからマリーベルを抱きしめ奪還した。


まるで騎士がお姫様をまもるような仕草だった。


「エレナ!あぁ、やっぱりエレナがいると安心するわ。こうしてまた一緒にいられて嬉しい!」



「マリーベルお嬢様、何とお優しいお言葉を!何度も侵入を試みたのですが、獰猛な犬達にいつも邪魔されて……特に眼鏡をかけたあの……」


「え?エレナ、あなた神殿に忍び込もうとしていたの?犬って、大丈夫?どこか怪我はしていない?」



マリーベルは心配そうにエレナの全身を観察する。


「マリーベル、おそらく彼女は私たちよりも頑丈ですよ、それにきっと犬というのもマリーベルの想像している犬とは違いますよ。」



「違う犬?そ、そうなのね、ごめんなさい、まだまだ世間知らずで。」



「大丈夫です」

「お嬢様はそのままで」



ニコライとエレナは同時に発言した後、二人は何かを探るような目線を交わす。まるでお互いを牽制するかのように。



「エレナと私も呼ばせてもらってもいいよね?まだマーティン侯爵には正式なご挨拶に伺えていないけれど、私はマリーベルの夫になるのだから。」


「えぇ、お好きにお呼びください。ニコライ様。まだ、正式に決まった訳でもないのに、お嬢様に触れるのはやめていただけますか!お嬢様のことは私たちがお世話致しますので!」


ニコライは、エレナの後ろにいるマリーベルに手を差し伸べる。まるでエレナに言われた事など気にもとめずに。


「マーティン侯爵にも一度はっきりとお伝えしようと思っていました。エレナ、あなたは本当にマリーベルのことを大切に思っているのですか?」


「旦那様まで侮辱するのですか‼︎ いくらニコライ様でもお言葉がすぎますよ」


「言葉が足りなかったようですね、失礼。ただ私が言いたかったのは、そこにマリーベルの意志はあるのですか?あなた達がマリーベルの為と言っていることは、全て勝手に自分達が決めつけていることではないのですか? 私は噂を信じていません。これでもそれなりの情報網は持っているのですよ。 


あなた達の行き過ぎた愛情は、単なる過保護というよりも、マリーベルのおおきな可能性を潰しているのですよ! マリーベルには自分の意志がある。もう子供ではないのですから。子供でさえ意志はあるでしょう?


助けを求められた時に手を差し伸べることが、大切なのでは?


ねぇ、マリーベル? あなたはどうしたいですか? このままエレナの言う通りに、私と距離を置きたいですか?」


ニコライは毅然とした態度でエレナに接していた。けれどマリーベルに向けられた表情は慈しむような愛情の籠った眼差しだった。


「わたっ、私は……」


マリーベルは一旦言葉を区切ると、エレナとまっすぐに向き合い言葉をかける。


「エレナ、いつも心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ。私は……ここに来てから、ニコライ様に出会えて、世界が広がった気がするの。今まで何も見えていなかった、考えることもなかった。


ニコライ様と過ごすうちに、ただ一緒にいるだけなのに、心が満たされるの。今まで何不自由なく暮らしていたのに、その時に感じることができなかった気持ち。


いつもありがとう、エレナ。私、沢山の人達に支えられている。でも、これからは、自分でできることは自分でしたいの。


エレナも大切な家族よ。だから、これからはニコライ様と歩む私を、見守ってほしい、だめかしら?」


「お、お嬢様、ご立派になられて……分かりました。今日の所は失礼します。ニコライ様、マリーベル様を少しでも悲しませるようなことがあったら、許しませんからね!」




エレナは瞳を潤ませながら、足早に立ち去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ