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25 ①

本日は、ニコライ様の紹介で、刺繍の先生が来られる予定だ。

先生と言っても、教師ではなくて、刺繍の得意な方だそうだけれど。


朝食を食べ終えると、ニコライとマリーベルは客人を出迎えるために、神殿の入口に向かう。


本日の護衛騎士は、フレッドだ。


紋章の入った馬車が入口前に到着すると、ニコライは女性をエスコートするために近づいて行く。



「お兄様?」


「ミシェル、今回のこと、引き受けてくれてありがとう」


「わざわざ出迎えてくださったのですのね!

お久しぶりです、お兄様。

なかなか会えないので寂しかったですわ。

お元気そうで、安心しましたわ」



二人の会話のやり取りを見て、マリーベルは疑問に思う。


もしかして、あの方は妹さまなの?




まるで、妖精が舞い降りたかと見紛うほどの、可憐な女性が馬車から降り立った。


まるで、太陽の恵みを一身に受けているといっても過言ではない光輝く黄金色の髪、透きとおるような肌、ハツラツとした魅力的な人だった。



「ニコライ様? こちらの綺麗な方は」



「まぁ、綺麗だなんて。恥ずかしいですわ。マリーベルさまですわよね?

 

お初にお目にかかります。私、ミシェル・カーギルと申します。 手紙で兄よりうかがいましたわ。

堅苦しいことは抜きにして、どうぞ、気軽にミシェルとお呼びくださいませ」


妖精のような雰囲気とは裏腹に、ミシェル様は怒涛の如く話し始める。


カーギル侯爵家のご令嬢?

兄ということは、ニコライ様は━━。


予想外の事実を知り、マリーベルは驚く。


神殿では家名を気にせずとおっしゃっていたのは、そういうことだったのね。


「ご機嫌よう。ミシェルさま。マリーベル・マーティンと申します。私のこともマリーベルとお呼びくださいませ。」

私も淑女の挨拶を交わす。


「ミシェルも相変わらずだね。

少しマリーベル様にお話しがあるから、先に私の部屋へ行ってもらえるかな。場所は覚えているよね?」


「もちろんですわ。では、後ほどマリーベル様」


ニコライはミシェルを見送った後、マリーベルの側に戻ってくる。


「マリーベル様、本日は、私の妹ミシェルが、刺繍の基礎を教えてくれます。


見た目と中身に多少ズレがありますが、淑女としては完璧だと思いますので、ご心配なさらず。


ミシェルが到着する前にお話すべきでした━━


マリーベル様、少し私の個人的なことを聞いてくださいますか?

少し歩きましょう」



ニコライは真っ直ぐにマリーベルを見つめる。

その瞳には寂しげな影が宿っていた。


「えぇ」


マリーベルは相槌をうつと、ニコライと共に歩き出す。


個人的なこととは何かしら。


私達の後ろからは、

エドワードが付いて来ていた。フレッドかもしれないけれど。


神殿内には複数の庭園がある。ちらほら散歩している方もいる。


私達は、何も言葉を交わすことなく、庭園の一角にあるベンチへと腰をおろした。


そこはちょうど日陰になっており、そよそよとふく風が心地よい。


「━━━マリーベル様、先程の妹の発言で気づかれたと思いますが、私はカーギル家の者です。 


正確には、そうだった、と言うべきかもしれません。」


真摯な姿勢で語り始めたニコライに、マリーベルは、言葉を挟むことなく耳を傾ける。


「私は……庶子なのです。」



「っ!」



ニコライ様が、庶子?

ということは、つまり━━


どういうことなのでしょう、恥ずかしながら、言葉の意味を知りません。


お尋ねしてもよいのでしょうか……今は質問を挟むタイミングではないでしょうか……




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