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やもめ暮らしのパスワード

 先日、突然亡くなった主人の遺品を整理していました。

 本当は亡くなった後、すぐに手をつけるべきでしたが、葬式、相続、遺産分与とやることが多く、息子達と遺品を分けた直後も何からすればいいのかわかりませんでした。

 旦那は旅行と世界各国の骨董品集め、写真が趣味で、正直私には到底価値が分からないものを揃えては、孫がインスタにあげる自撮り写真の角度に悩むように、どの画角で写真を撮るか悩んでいました。

 写真は旦那にとって出来のいいものであれば私にも見せてくれましたが、納得がいかないと、自分のプライベートのパソコンに封印すると言って頑なに見せてはくれませんでした。

 特に興味がなかったので見せてもらおうと思ったことはありませんし、恥ずかしながら私は機械音痴なものでわざわざ旦那の見ていない隙にパソコンを開いて覗く、みたいな芸当も出来ませんでした。

 だから、と言ってはなんですが、私にとってはガラクタみたいな骨董品の整理はすぐに終わったのにも関わらず、私がパソコンを開いたのは主人が亡くなって半年近く経った頃でした。

 充電は欠かさずしていたので電源はすぐについたのですが、パスワードが分かりません。

 旦那の誕生日、私の誕生日、息子や他の親族に関するあらゆる候補を考えましたが、全く思いつきません。

 息子に聞いたら山の名前ではないか、と言われました。

 確かにまだヨーロッパなどの遠いところに行っていた時は名も知らない山の写真を撮っていました。

 主人曰く、


「山は登るものではなく遠くから眺めるもの」


 らしく、富士山ですら登ったことはない人でした。まぁ、体力がない人だったから登りたくなかっただけなのでしょうけどね。

 そんな思い出に浸りながら山の名前を考えること数時間。私はある山の名前を思い出しました。

 ファグラダルスフィヤル。アイスランドの火山の名前です。まさかな、と思い打ち込んでみるとなんとそのまさかでした。

 パソコンの中の写真を見ていると旅行先の思い出が蘇ってきます。その内の一枚にファグラダルスフィヤルの写真がありました。現地の人と同じように発音しようとして、どうしても空耳でフォアグラやるすぐやるに聞こえてきて笑って諦めてしまった主人の顔を思い出します。ふふ、今度自分のパソコンを買ったらフォグラダルスフィヤルをパスワードにしようかしら。

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