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27.ハウスと召喚タグ

「防御のためと割り切るなら手の甲だけ覆って、平と指は覆わない方がいい。魔法にこだわらず防具を作るのも手だな」

「攻撃に転じるなら魔法を纏わせていた方が何かと便利ですよ」

「後は魔法をどれくらい使えるかにもよるな。強化ばかりに気を取られて、攻撃魔法を打ち込みたい時に魔力切れになったら目もあてられんぞ」

「そういえば兄貴もダグラスさんと一緒に依頼を受けるうちに魔法の重要性を思い知ったって言ってたな。お前はもうちょっといろんな活用法を身につけておいた方がいいぞって。なぁ今から練習したら魔力量って増えるものか?」

「増えることには増えるが限度がある。だが熟練度で発動時無駄を省くことは出来る」

「なるほど」

「この辺りは慣れるしかないな。簡単なものからだと、球を切る練習なんかがいいぞ。亀蔵に協力してもらえ」

「ところでその亀蔵はどこに?」

「ちょっと待ってて」


 森のお散歩と畑を耕すことが日課になってからは、亀蔵はお昼寝をするようになった。昼食後すぐに寝て大体一刻ほど。長くてもおやつ前には起きる。


 そろそろ起きる頃だ。

 ペンダントに手を添え「亀蔵」と呼んでみる。するとすぐに亀蔵の鳴き声が聞こえてくる。まだ少し眠たげだが出てきてくれた。


「かめぇ」

「まさかそれ『ハウス』か?」

「うん、亀蔵のおうち」

「実物、初めて見た」

「そんなに珍しいアイテムなの?」

「そりゃあもう! 最後の錬金術師が残したアイテムの中で一番有名なのがこのハウスだ。だがこれは大陸中を探しても五十個しかないんだ」

「五十って多いんだか少ないんだか分からないわね」

「破損したものや紛失したものもあるし、一度手にしたらなかなか手放さないから今はいくつ存在しているのかは分からない。ただ、かなりのレアものなことだけは確かだ。こんなものどこで手に入れたんだ?」

「お父様が亀蔵のために用意したの。ルクスさんの分も用意してくれたらしいけど、そっちはシロが使ってる」


 そう伝えるとロドリーはあんぐりと口を開いた。

 新品が残っているという話は聞かない。おそらく五十個全てが使用済み。それらをクリーニングして使い回しているそうだ。


 使い回していると言っても、クリーニングですら専用の錬金アイテムが必要になるらしい。クリーニング代だけで王都に屋敷が建つほどの値段が取られるそう。


 クリーニングだけで、ってことはオプションも入れたらいくらかかったんだろう……。


 想像しかけたが、すぐに止めた。神の子どもであるフェンリルが易々と入ってくれるおうちが安いはずがなかった。


 とりあえずルクスさんの分をシロが使ってくれたおかげで、無駄にならずに済んだことを喜ぼう。


 そんな私の想像の遙か上を行く高価なアイテムだが、一般市場に出回ることはまずないそうだ。そもそも所有者が手放すことがほぼない。


 過去、オークションで取引されたものは、所有者が金に困って手放したものか、最高ランククエストの報酬となっていたそれを冒険者が流したかの二択。


 最近もこれが達成報酬になっていた依頼があったらしく、ちまたでは大騒ぎになっていたようだ。

 貴族の多くは今まで同様、オークションに流れることを期待していたが、今回は出品されなかったらしい。


 最高ランククエストとなると達成した冒険者の名前も明かされることはないので、誰がゲットしたのかは分からない。だが持っていれば目立つので、おそらくどこかの貴族に抱えられていた冒険者だったのだろうとのことだった。


 もしかしてそれが亀蔵かシロのものになっていたりして……。

 あり得ない話ではない。まぁ貴重な品と分かったところで、亀蔵のおうちを誰かに譲るつもりは毛頭ないが。


「珍しいアイテムなのは分かったけど、学園でも同じようなものが配られるのよね? あれとは違うの?」

「召喚タグのことか? あれは魔獣召喚の際に発動させる魔法を応用して作ったものだ。指定の場所から呼び寄せているだけ。登録した魔獣だけが通れるゲートと言った方がわかりやすいか」


 一つのアイテムで呼び出せる魔獣は一体だけ。場所も一カ所しか指定出来ない。さらに指定場所から呼び出し場所までの距離が遠ければ遠いほど強い力を必要とし、アイテムの値段も高くなる。

 だからといって下手にケチるといざという時に呼び出せないなんてこともあるそうだ。


 学園で配られるものはちょっと良い品で、王都内ならどこからでも呼び出せるそうだ。


「便利ですね」

「小型ならまだしも、大型魔獣となると常に連れ歩く訳にはいかないからな。一カ所しか指定出来ないといっても召喚タグを複数所持すればいいだけだから、そこまで不便でもない。帰省なら専用の馬車を用意すればいい。学生ならこれで十分だ」


 いろいろ考えられているようだ。


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