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25.コーラがもたらした変化

 早速追加のコーラシロップ作成に励んでいると、お父様がひょっこりと顔を出した。


「その材料、どうしたんだ?」

「ギュンタに頼んで用意してもらったんです。今日作った分と同じくらいの量ができて、一部はイヴァンカとギュンタ用に確保しておくつもりです」

「なるほど。ギュンタに聞けば分かるんだな。ならスカビオ家に頼んでおこう」


 お父様はその確認をしたかっただけらしく、すぐに居なくなってしまった。

 よほど気に入ったのだろう。


 昨日と同じように一晩置き、味を確認したが問題なし。イヴァンカとギュンタの分を少し多めに確保し、残りは使用人達に振る舞った。


 使用人の列に数人ほど、マイグラスと酒瓶持参でやってきたらしい領民が混ざっていたが、シロップが足りたので良しとしよう。


 どこから聞いたのかは分からないが、なにせ人が少ない領なのでこんなことは今までもたまにあった。深く気にしたら負けだ。


 大人達にはかなりの好評を博したコーラシロップだが、イヴァンカとギュンタの反応はパッカリと分かれた。


「薬草茶の方がいいかな」

「家でも作りたいから作りかたを教えてくれ!」


 前者がイヴァンカで、後者がギュンタ。

 イヴァンカは申し訳なさそうにしているが、素直な感想が欲しいと言ったのは私だ。気にしないでほしい。コーラを気に入ったギュンタは私が書いたメモを上機嫌でポケットに入れている。やはり好みの分かれる味なのだろう。



 手土産のアップルパイに合うようにと紅茶も淹れてもらって正解だった。

 シロップが残った場合はキッチンで再現してもらうべく、好きに飲んでくれと伝えてある。余る心配はない。


「ところでウェスパルはこんな不思議な飲み物をどこで知ったんだ?」

「え?」

「複数の薬草を煮込んだ飲み物らしいが、コーラなんてお祖父様も聞いたことがないと言っていた」

「えっと、その……ドラゴンの知恵で!」


 ルクスさんが何か言いたげな視線を向けてくるが、ちょうどいい言い訳が浮かばなかったのだ。許して欲しい。苦し紛れの言葉ではあったが、ギュンタは納得してくれたようだ。


「ドラゴンの知恵か! 精霊の時といい、ルクスさんは物知りだな〜」

 ギュンタが素直に褒めたからか、ルクスさんも満更ではない表情だ。念願のアップルパイが食べられたことと合わせて上機嫌である。




 ギュンタがコーラのレシピを持ち帰ってから一ヶ月と経たずに、コーラはスカビオ領で爆発的な人気となった。


 主に気に入ったのは大人で、どの酒で割ると一番美味いかを研究しているようだ。また割るお酒に合わせてスパイスの調合自体も変えるそう。


 コーラのためにスパイスの栽培量と種類を増やす計画が立っていると聞いた時には思わず言葉を失った。まさかそこまで気に入られるとは思わなかったのだ。


 実際、ギュンタがお礼にと送ってくれたスパイスはどれも見たことのないものばかり。これらはコーラのために栽培が始められたものではあるものの、肉や魚などに合わせても美味しいそうだ。


 最近ではどこからか噂を聞きつけたのか、スパイスを求めて各地から料理人がやってくるようになったとか。


 また薬として利用する研究も進められており、お祖父様が飲んでいるような健康薬の分野でさらなる発見が見込めそうとのこと。


 きっかけはコーラでもそこで止まらないところは、さすがスカビオ。


 私達はその恩恵を受けて作られたご飯でお腹と心を満たしている。明日はどんなご飯が出てくるのかますます楽しみである。



 薬といえば、シェリリン様は最近薬学の勉強を始めたらしい。


 きっかけはコーラ。

 ギュンタから話を聞いたサルガス王子がたまらずお城でも作らせ、マーシャル王子とシェリリン様にも飲ませたのだとか。


 彼女は一口飲んで「これは配合次第で薬にもなるのでは?」と考え、薬草の勉強を始めたそうだ。

 それもスカビオ家に手紙を送るほど熱心に。


 前世では風邪の時にコーラを飲む習慣がある国もあったようが、一口飲んだだけでその可能性に辿り着くとは恐ろしいものだ。


 頭の回転は元々だったにせよ、婚約者が変わっただけですごい変わりようである。


 第一部のヒロイン虐めも行動力があると言ってしまえばそれまでだが、虐めより勉強の方が何百倍も健全である。


 悪事に走らなければ、という条件がつくが、連絡を取る相手がスカビオ家なら問題ないだろう。

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