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6.亀蔵との共闘

 適当な位置で止めてもらい、車から降りる。

 耳をすませば小さな音がする。小型の魔物だろうか。


 亀蔵は車から降ろしたが、ルクスさんは車に乗ったまま。

 ナイフを握ると車から声が飛んでくる。


「魔法の練習に来たのだからナイフはしまえ」

「あ、そうだった。亀蔵、頑張ろうね」

「かめえ」


 やる気満々な私と亀蔵は数歩前に出る。

 お兄様は車に背を預けながら「頑張れよ~」と気の抜けたような応援をする。といっても警戒は忘れない。


 そして車を外したシロはその隣でちょこんとお座りをしていた。

 どうやら先鋒は私達に譲ってくれるそうだ。


 なら遠慮なく。

 深く息を吐いてから、雷魔法の玉を作る。制御のために作っていた時よりも小さく、数も多い。集中し、少しずつ硬度を上げていく。


 本当は時間をかけずに錬成出来ればいいのだが、私にそこまでのスキルはない。だからこうして時間がある時しか使えない。


 時間があるといっても、あちらもすでに私達の気配に気付いている。

 亀蔵が睨みを利かせてくれているとはいえ、そこまで長い時間はかけられない。


「かめえ!」

 亀蔵の鳴き声が戦闘開始の合図となった。


 出てきたのはホーンラビットーー額からツノが生えたうさぎである。

 この辺りでは比較的弱い魔獣だ。新しい魔法を試すにはちょうどいい。


 風魔法で作り上げたラケットを使い、空中に浮かばせた電気の玉を次々に魔物めがけて打ち込んでいく。ラケットが触れると玉は銃弾のように飛んでいった。


 複数属性魔法の同時展開が出来るようになったのは魔結晶作りの成果である。

 だが攻撃魔法として実践するのは初めて。想像以上の威力に私自身も驚いている。


 それを見た亀蔵も新しいことが試したくなったのか、プップップと短く水鉄砲を放っていく。


 私が作った玉を水魔法でマネしてみたのだろう。だが慣れていないせいか飛距離が短い。私のように風魔法で後押しすることも出来ない。


 難しいところだ。

 亀蔵もそれが気になったのか、かめえと鳴いて雨雲を作る。そしてトタトタと歩き始めた。自分で出した雨が当たる位置でストップすると、その場で足踏みを始めた。


 一体何をするつもりだろうか。

 首を傾げると、徐々に魔物付近の地面が歪み始めた。

 水を吸った地面に足を取られている魔獣に向けて、再び亀蔵は水鉄砲を放つ。先ほどよりも威力が上がっている。


 もしかしてこの雨って強化目的?

 亀蔵は私が思っているよりも強く、頭も良いらしい。


 この場にお父様がいたら確実に褒め倒していることだろう。私も戦闘時でなければ全力で褒めている。


 だがここは戦場である。

 亀蔵がホーンラビットを相手にしてくれている間に新たにやってきた魔犬に火の魔法を飛ばしていく。


 雨雲の範囲に入られると火は消えてしまうが、これも練習だ。上手く誘導しつつ、玉を打ち込んでいく。


「ホーンラビットの角は出荷するからなるべく傷つけるな。肉は後で食べる。攻撃の仕方は気をつけろ。魔犬族は時間をかけると仲間を呼ぶからさっさと片付けるように。採れるのは魔石くらいだから戦闘方法は気にするな。だが魔犬族とよく似た魔狼族は毛皮が売れるから。大体毛足が長いのが魔狼族なんだが、シャドウドッグという魔物がいて……」


 その間、お兄様はシロに魔物レクチャーをしている。

 私達に先鋒を譲ってくれたのはこのためでもあるのだろう。シロは真面目にこちらを眺めながらコクコクと頷いている。


「そろそろ魔物回収しちゃいますね。亀蔵、雨を止めてから地面戻してもらえる?」

「かめえ!」


 その一声でピタリと雨を止め、足踏みで一気に荒野に戻してしまう。

 さすが亀蔵。だが普段よりも多くの魔力を使っていたようで、ぺたりと座り込んでしまった。


 タイミングもちょうどいいし、この辺りで交代すべきなのだろう。

 お兄様に視線を向ければコクリと頷いてくれた。


「ルクスさんはこっちに」

「うむ」


 ルクスさんが亀蔵の上に着地したのを確認してから、車に乗り込む。


 まずはホーンラビットから。

 雨雲があった場所に風魔法を展開させる。大きなネットをイメージし、出来上がったそれをホーンラビットの下に潜らせる。

 風で作ったネットなので、スススと載っかってくれるのが見ていて気持ちいい。


 全て載ったのを確認してから、ゆっくりと車の上に運ぶ。

 慎重に、慎重に。短く息を吐きながら、ネットを台の上に降ろした。


「ふ~」

「その魔法便利だな。俺も真似しよう」


 お兄様は風魔法で角型スコップのようなものを作り上げると、討伐した魔犬を次々と掬い上げていく。瞬く間に車の隣に魔犬の山が出来た。


 ホーンラビットとは違い、繊細さを必要としない作業とはいえ、真似しようの一言で実行できてしまうところがなんともお兄様らしい。

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