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3.悪役令嬢は二人いる

 ちなみに一部、二部、三部はヒロインの学年ごとに分かれている。


 入学直後から進級式までが第一部 レッドside。

 珍しい力を手にした平民の少女が男爵家の養子となり、学園ひいては貴族社会に馴染んでいくストーリーがメインである。


 攻略対象者は第二王子、宰相の息子の公爵令息、大商人の息子の三人。

 こちらでは第二王子の婚約者であるシェリリン=スカーレット公爵令嬢が悪役を務める。


 彼女は典型的なワガママ令嬢で、自分より目立つヒロインに嫌がらせを繰り返し、最終的に断罪される。

 極めてスタンダードな悪役令嬢である。



 それに対して、第二部 ブラックsideは少し様子が違う。

 二年次開始から二度目の長期休みまでと、一部と比べてやや期間が短いこちらでの悪役令嬢はヒロインに物理的な嫌がらせを一切しない。


 それどころかほぼほぼヒロインの前に登場しないし、攻略対象者との仲を引き裂くようなこともしない。


 では何をするかと言えば、ひたすらステータスを下げるのである。


 一年次は座学中心だったヒロインは、二年生に進学したことで実践に参加するようになる。


 攻略もとい学園生活を進めるためには好感度とともにステータス上げも重要となる。


 作業のごとくひたすら上げたステータスが、悪役令嬢の妨害により一気に下げられる。


 しかもランダムで。

 そのせいで何度イベントが発生せずにロード作業を繰り返したことか!


 最終的に補助アイテムゴリ押しで通過したプレイヤーも少なくない。

 実際、私の友人がそうだった。



 また悪役令嬢 ウェスパル=シルヴェスターは恋愛の邪魔をしてくることはないが、好感度が低ければ攻略対象者達は悪役令嬢を優先するのである。


 そもそもウェスパルはシェリリンとは違い、攻略対象者達から嫌われてはいない。むしろ彼らは幼い頃からほとんど領から出たことのないウェスパルを心配してさえいる。


 ほぼ全てのスチルでヒロインと悪役令嬢の差分が用意されていたほど。

 なんなら結婚式スチルまで用意されていた。


 ウェスパルの婚約者である第三王子のルートのみならともかく、なぜか彼女の従兄弟や彼女の兄の親友の弟のルートでまでも結婚するのである。


 ーーと、悪役令嬢としては大変イレギュラーな扱いを受けてはいるものの、ここまでならウェスパル=シルヴェスターに転生したところでさほど悩むことはない。



 問題はヒロインが攻略者の誰かと上手くいった際に発生する。



 ヒロインの持つ光の力とは対称の闇の力を持つウェスパルは、その力でシルヴェスター領に封印された邪神を解き放つのである。その後、魔王とも手を組み、国を滅ぼそうとする。


 第一部よりも殺意マシマシである。

 ちなみに好感度が高くてもヒロインのステータスが低いとヒロインと攻略者は死ぬ。場合によっては国どころか大陸中が焦土と化す。



 だが最後までなぜウェスパルがそこまでしたのか理由が明かされない。


 シェリリンのように嫉妬をしている様子もなく、邪神復活まではステータスを下げることしかして来なかったのである。


 これはのちにシリーズ最大の謎としてファンの中で語られたほど。

 一部ではヒロインのステータスを下げるために闇の力を使い続けた結果、自分でも制御できなくなり、闇に飲まれてしまったのではないかと言われていた。


 その他にもウェスパルの従兄弟ルートでは『本来ならウェスパルも幼馴染達と共に学園生活を送るはずだったんだがな……』と意味深な言葉が残されていたり、ウェスパルの名前に何かしらの意味があるのではないかとも言われている。


 だがシリーズ完結後も公式が頑なに口を噤み続けたため、真偽のほどは不明である。


 そんなわけでウェスパルは私のプレイした乙女ゲーム登場キャラで謎が残る人物、堂々の一位に輝いている。出来ればウェスパルにだけは転生したくなかった。


 だが、おーまいごっと! と天に叫んだところで状況は何も変わらない。

 そもそもこんなところで神を呼んで邪神様がこんにちはしても困る。


「なんか頭痛くなってきた……。とりあえず芋食べて糖分とろ」

 大きなため息を吐き、屋敷に戻ることにした。

 料理長に蒸かし芋を作ってもらい、お皿と薬草茶を部屋に持ち帰る。



「今まで特に何も考えずに食べてたけど、この芋うまっ」

 ちなみにこの芋はシルヴェスター領で育てているものである。

 雑草すら育たないのになぜか甘藷だけ育つのだ。普通の芋は育たない。


 ご先祖様がいろいろ植えてみたようだが、甘藷以外は全て枯れてしまったらしい。そのため我が領土の半分近くが甘藷畑となっている。


 主食はもちろん甘藷。おやつも甘藷。

 肉は魔物の肉を食べているが、基本的に食事は他領土頼りとなっている。

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