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29.嫉妬する余地はない

「俺って自分で思っている以上にルクスさんに信頼されているんだな」


 村の中心に向かって歩いていると、ロドリーがぽつりと呟いた。


「どういうこと?」

「サルガス王子との婚約を解消したのってルクスさんが嫉妬するからだろ?」

「サヴィエーラの姫様と婚約を結びたいから解消してほしいって言われたからだけど?」

「そうなのか?」

「うん。別にルクスさんはサルガス王子が一緒にいても嫉妬しないし」


 もしサルガス王子と結婚していたとしても、私とルクスさんの関係は何一つとして変わらない。サルガス王子だって私達の関係に口を出してくることはないと思う。


 屋敷だって自分の分を持っているので、シルヴェスター家の屋敷に移動してくることはない。互いに不満はないままの別居状態が生涯続くだけ。


 そもそも籍を入れたところで、本当にサルガス王子がシルヴェスター領に越してくるかどうかも定かではなかった。なんとか理由をつけてスカビオ領に残りそうな気もするし、私達は特にそれを問題視しないまま進みそうな気もする。


 サルガス王子に関わらず、今後いかなる相手が私の前に現れようともルクスさんが嫉妬する余地などないのだ。


「じゃあサルガス王子のことも信頼してるのかな」

「なんでいきなりそんなこと聞くの?」

「ルクスさん、王都に来てから周りの生徒を警戒していることも多いから。だからウェスパルと二人で買い物に行くように言われたのが少し意外で」

「ああ、それは嫉妬とかじゃなくて。他に理由があるの」


 そういえばロドリーには話していなかった。

 学園にいる時ではなかなか話しづらく、他の生徒に聞かれて変な事態になっても困る。だが今は事情を話す絶好のチャンスだ。


「理由?」

「パッションピンク王子が亀蔵のことを狙っているの」

「ああ、そういえばいつも見てるな!」


 いつもの癖でパッションピンク王子と呼んでしまったが、ロドリーにはあっさりと通じた。それだけ彼が毎日のように亀蔵をストーキングしているという証拠でもある。


「そうか。彼のことを気にしてたのか」

「あとは私があんまり王都に良い思い出がなかったから。知り合い以外の生徒の動きを気にしてくれているっていうのもあるのかも」

「もしかして、俺が知らない人を食事に連れてくるの嫌だったりする?」

「ううん。彼らはなんというか、入学前試験の時の反応で大体人柄が分かったから」


 ロドリーが昼食時に連れてくる生徒とは、脳筋ズのことである。

 実技を中心に取っているロドリーは彼らと昼前の授業が被ることも多く、その流れで一緒に食事を取っているのだ。


 彼らは良くも悪くも貴族らしさというものがなく、週初めの授業でもお茶会に混ざるという適応力を持ち合わせている。まるで何年も前からの知り合いかと錯覚してしまうほどナチュラルに溶け込むのである。


 他国からやってきたのに爆速で馴染んだリーフもなかなかだったが、脳筋ズのコミュニケーション能力もかなり高い。


 私も何度か話したことがあるが、騎士の家系に生まれると幼少期から身分を問わず、大人達と接する機会が多いのだとか。幼い頃から剣術と共にコミュニケーションを養う教育がなされてきたのだろう。



 一人は乙女ゲーム攻略対象にいてもよさそうなキャラである。三人とも幼い頃から婚約者がいるので、攻略対象者になどなってほしくはないのだが。


 乙女ゲームの攻略者にいる婚約者持ちの脳筋なんて、絶対ろくな道を進まない。盲目的にヒロインに惹かれて、婚約解消だの破棄だの言い出すのがオチだ。


 まぁ今は別の意味でレミリアさんに惹かれているのだが。

 彼らの目は異性に向けるものではなく、完全に尊敬する武人を見る目である。


 レミリアさんに恋人がいることもあり、彼らの婚約者達も優しい目で見守ってくれている。そこから三人が普段から婚約者を大事にしていることも伝わってくる。彼らの同席を嫌に思ったことはない。


「無理しなくて良いからな?」

「本当に大丈夫。気を使ってくれてありがとう。……あ」


 ドライフルーツの店を探して歩いていると、あるものが目に付いた。


「どうした?」

「あれ、砥石じゃない?」

「本当だ。ルクスさんが言ってた良い物ってこれのことか!」


 店先にシートを敷き、その上にずらりと並んでいる。

 私もロドリーもすでにお気に入りのものを持っているが、こうして売っているとついつい見てしまう。


 二人でしゃがみ込み、自分の武器に合いそうなものがないか見てみる。

 その中で変わった形のものがあった。

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