表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

152/175

28.クァルファル村

「この辺りならいいか」

「魔物からも少し離れているし、問題ないだろう」

「私も準備は大丈夫だよ」


 目的地付近に到着し、ゆっくりと下降していく。

 上空から見えていた地点まで移動し、サクサクと倒していく。


 今回の依頼はスライムとゴブリンの討伐。倒し終わったらここで採取を行うつもりなので、他の魔物がいないかを確認する。どうしても影に隠れている魔物は見逃しがちなので念入りに。


 木の上に鳥の魔獣が二体ほど隠れていた。足元には卵がある。こちらを警戒しているようだ。


「木の上に魔獣が」

「どこ?」

「くぼみのところに二体。鳥の魔獣がいる」

「あの魔獣なら大人しいから大丈夫だよ」

「こちらから手出しをしなければ問題ないだろう。一応我が亀蔵と一緒に見張っておく」

「お願いします」


 亀蔵も呼び出し、警戒を頼む。

 その間に私とロドリーでテキパキと解体を行い、討伐報酬と使えそうな素材はポンポンとマジックバッグに入れていく。残りの魔物を探している時に見つけた焼け跡で魔物を焼いた。



 残りは採取依頼。こちらは探すまでもない。この森は依頼にあった植物の群生地として知られているだけあって、沢山生えている。取り放題だ。


 周りに冒険者がいない理由は低ランククエストで報酬も低いから。近くに冒険者ギルドもないので、わざわざこんな場所にまで取りに来る者はそうそういない。


 焼け跡の他にもいくつか採取した跡が見られるが、どちらも地元の人の残したものだと思われる。冒険者が行ったにしては処理が綺麗すぎるのだ。私達もあまり荒らさないようにしないと。


 余計なものに手を出さないように、傷つけないように気をつけながら、せっせと目的の植物を掘っていく。


「これって根っこも綺麗に取った方がいいんだっけ?」

「ああ。根っこも別で報酬が出るんだってさ。この根っこ茶すっごい不味いけど美容にいいって人気なんだよな」

「美容茶ってやつ?」

「そうそう。母ちゃんが飲んでたんだ」

「やっぱり美味しくないと続かないのね」

「いや、スカビオの美容コーラの方が効くって」

「いつの間にそんなものが……」


 スカビオ領はここ一年で美容に特化したアイテムをいくつも売り出しているようで、コーラだけでも数種類はあるそう。


 きっかけはギュンタの石けん。

 同じ年頃の令嬢だけではなく、その親世代にもかなりヒットした。プレゼントとしての人気も高く、それを受けてスカビオ領全体が女性に向けたアイテムの開発を熱心に取り組んでいるのだとか。


 入学前はギュンタの一件やマジックバッグ製作でバタバタとしていた。ギュンタとイヴァンカとレミリアさんといった個人には注目していたが、領全体で何をしているかまでは気にしていなかった。


 どうしても良いことよりも悪いことの方が敏感になってしまっているのだ。


「俺も母さんが買ってきた時、驚いた。効能だけじゃなくて味も全然違ってさ。ちょっと苦かった。酒で割ると美味しくなってるんだって」

「美容なのに?」

「美味しくて綺麗に、ってことらしい」

「なるほど」


 味の監修にシルヴェスター領も一枚噛んでそうだ。


 思えば温泉小屋にご自由にお飲みくださいって札と一緒に飲み物が置いてあることが何度かあった。もしかしなくてもあれって開発中のサンプルだったのか。


 私達の使っている小屋はともかく、温泉には毎日三領の人達が集まる。味や効能などのデータを取るにはピッタリだ。スカビオ領で作られたものなら問題ないと、お父様が許可をしたのだろう。


 まさか温泉がこんな風にも役立っているとは……。

 温泉に入れてラッキーから色々と副産物が生まれるとは思いもしなかった。さすがは神獣の子どもが掘った温泉だ。



「っと、このくらいでいいかな」

「そうだね。軽く土を落としてこれに入れて」

「ん」


 植物を持った手の首をもう片方の手で軽く叩く。

 まだ少し土が残っているが、袋の中に溜まらなければいい。袋を開き、ロドリーの分も一緒に袋に入れる。



「じゃあウェスパル、ルクスさん、乗って。村に行こう」

「村はあっちだな。屋根が見える」

「あ、本当だ」

「二人とも目がいいな。羨ましい」

「そう?」

「普通だ、普通。それより、村の少し手前で下ろしてくれ」

「なぜ?」

「ドラゴンが来たら騒ぎになるだろう?」


 ルクスさんの言葉にロドリーは固まってしまった。最後尾の私からではロドリーの姿は見えないのだが、考え込んでいるのだろうと伝わってくる。


 まさか理由が伝わらないとは思わなかった。ロドリーもかなり辺境領の空気に染まりつつあるようだ。


「普通の人の多くがドラゴンを見ずに生涯を終えるから」

「言われてみれば!」

「グリフォンも珍しいとは思うがな。とにかく、我は村の外で亀蔵と共に待機している」

「なら俺も待ってるよ」

「精霊達に聞きたいこともあるから我に構わずとも良い。それに村にはいいものがあるぞ」

「いいもの?」

「行けば分かる」


 クァルファル村の特産はドライフルーツ。その他にも野菜がいくつか。

 ロドリーの興味を引きそうなものはない。ルクスさんはただ、ロドリーに残られると都合が悪いから適当なことを言っているだけだ。


 私がドライフルーツを買いに向かっている間、ルクスさんには精霊達からの情報収集を頼んでいる。


 さすがに私とルクスさんだけで村全体を見て回るのは難しい。頑張って見て回ったけど、出来たばかりの死草を見逃していましたなんてことがあったら何の意味もない。


 そこでこの地の専門家である精霊の手を借りようという訳だ。

 ルクスさんなら彼らの言葉が分かるし、情報料としての魔結晶は手元に残っている分を全て持ってきた。制服から着替える際にルクスさんのポケットに入れておいた。


「……ルクスさんがそう言うなら」


 少し迷ったようだが、何もなかったらドライフルーツ選びを手伝ってもらうことにしよう。

 村の近くで地上に降り、グリフォンには一度タグの中に入ってもらう。私は亀蔵を呼び出して、ルクスさんとのお留守番を頼んだ。


「じゃあ行ってきますね」

「うむ。いいものを期待しているぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ