表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

137/175

13.顔合わせ

「それだけで足りるのか?」

「十分休憩で摘まむくらいですから。あんまり持って行っても残しちゃいますよ」


 朝からおやつを油で揚げる。

 後は揚げるだけのところまで作っておいて良かった。くわぁとあくびをかみ殺しながら、きつね色の揚げスイートポテトと揚げアップルパイを引き上げる。


 そこにイザラクがやってきた。彼の手には制服のネクタイが握られている。急いで作ってくれたようだ。


「ウェスパル、ルクスさん。おはよう」

「おはよう、イザラク」

「とりあえず一本作ったんだけど、今日はどうする?」

「この姿のままで行く。人型は疲れるからな」


 せっかく作ってくれたのにと思わなくはない。だがイザラク本人はルクスさんの言葉を特に気にした様子はない。


「じゃあこれは他の制服と一緒に馬車に乗せておくね」

「うむ」

「ところでそれ俺の分もある?」

「ネクタイの礼に分けてやろう」

「ありがとう」


 ルクスさんなりに感謝しているらしい。今この瞬間も揚げ物をしているのは私だが。といっても元々イザラクの分も考えて作っている。特に焦ることなく油に投入していく。


「それから朝食の準備が済んでいるからって」

「分かった。終わったら行くね」


 残っている分を揚げ終えたら使用人に託しておく。朝食を食べている間に油を切って、お弁当箱に詰めておいてもらうよう頼んだ。



 朝食後、ルクスさんを抱えて部屋に戻る。

 私の準備が早いのを知っているので、イザラクはすでに馬車で待ってくれている。

 ささっと制服に着替えてから髪を梳かす。着替える必要がないルクスさんは余裕だ。


「王都だとたくさん牛乳が飲めるからいいな」

「あんまり飲み過ぎるとお腹壊しちゃいますよ」

「我はそこまで弱くない」

「え〜」

「ほら早く準備しろ。登校まで時間がない」


 思い切り話を逸らしてきた。言いたいことはあるが一緒に登校するイザラクを待たせるのも悪い。ブラシを置き、代わりにスクールバッグを手に取る。

 ルクスさんの分も入っているので少し重め。両手を伸ばすルクスさんを抱えてキッチンに立ち寄る。おやつを受け取ってからイザラクが待つ馬車に向かった。


「待たせてごめんね」

「シラバスを確認してたから大丈夫だよ」


 そう言いながらシラバスと時間割を見せてくれた。時間割には赤い丸がいくつも付いており、囲まれた授業名のほとんどが見覚えのあるものだった。


「偶然ね。私達もほとんど同じ授業を受けるの」

「我が教えてやったのだ」

「馬車の都合もあるから登下校の時間だけでも合わせようかと思ったんだけど、一年時にかなり授業受けるようだから。気になっている授業以外は同じ授業を受けることにした」

「馬車がないなら歩くから大丈夫だよ?」


 昨日で学園までの距離と道順は把握している。途中で通過したギルドまで歩いたことがあるので、そこまでかかった時間から大体の時間は算出できる。急ぐような用事もない。それに王都に来てから運動する機会が減っている。良い運動になるはずだ。


「いいんだ。先に頑張って単位数稼いでおいた方が後で好きな授業受けられるから。といっても一部の授業は諦めざるを得ないけど」


 イザラクは魔法のバッジを持っていないので、魔法の授業をスキップすることは出来ない。一から順番に受けなければいけないのだ。



 また土魔法など適性がないものは受けても意味がない。なのでそれらは全て避けてある。私達に合わせつつもイザラクらしい時間割が完成していた。


 ガタゴトと揺られ、学園に到着した。

 今日の一時間目は一年生の必修『一般教養』の授業だ。ざっくりと言ってしまえば週に一度しかない朝の会みたいなものだ。


 後期からは掲示板を見るようにとのことだが、慣れないうちは顔合わせも兼ねてって感じだと思う。一時間目に入れてくるあたり、朝の登校に慣れる意味もあるのかもしれない。せっかく朝から来るなら二時間目も入れようかなっていう気になるかもしれないし。


 私達みたいに毎日最初から最後まで入れる人は少ないのだろう。



 馬車から降り、教室へと向かう。

 授業開始までまだ時間はあるが初めての授業ということもあり、すでにかなりの人数が集まっていた。イヴァンカやロドリーも席を確保している。


 私達の姿を見つけると、こっちこっちと手招きしてくれた。確保しておいてくれた席に腰掛ける。

 私とルクスさん、イザラクの席だけではなく、亀蔵のスペースまである。ありがたい。授業が始まる前まででもとハウスから出す。


「ねぇねぇウェスパル達はもう受ける授業決まった? 私はこんな感じなんだけど」

 イヴァンカ達は早く登校して、この場で受ける授業を決めていたらしい。マークがついた時間割を見せてくれた。なので私も同じようにスクールバッグから時間割を取り出して見せる。


「私はルクスさんに決められちゃった……」

「座学がメインだな」


 実技は亀蔵が希望した土魔法学Ⅲのみ。

 ルクスさんは「座学をクリアしたら後期から実技を入れるか」と言いながら後期に開かれる座学のページを見ていた。絶対後期も座学を入れる気だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ