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33.結婚の約束なんてしなくてもいい

 私が心配しているのに、サルガス王子は爽やかな笑みを浮かべる。


「彼女なら私が婚約解消することをある程度想定していたようだから、気にしないと思うぞ」

「へ?」

「幼い頃は少しワガママな行動が目立っていたが、彼女は公爵家の娘だからな。シルヴェスターと王家の婚姻が形式的なものでしかないことは初めから理解していた。その上で、このような機会に恵まれたことを感謝していると。婚約者が変わったことで見える世界が変わったのは彼女も同じだからな」

「そうですか」


 マーシャル王子と上手くやっている、と。

 こんな模範的な回答をする人なら悪役令嬢になることもないと信じたい。


 そのあたりはサルガス王子とマーシャル王子が上手くやることだろう。


「それから、もう一人、気を付けて欲しい相手がいる。王族の留学は彼らだけではない。ランブルング王国の第四王子も来ることになっている」


 ランブルング王国といえば先代の魔獣神、つまりシロの親が長らく君臨していた国である。


 だが乙女ゲームでは、シロを召喚したヒロインには友好的だったはず……。

 敵意を向けて来るとは考えづらい。


「でもなぜ今? シロは今、シルヴェスターにいますよ」

「目的は亀蔵だ。なんでも彼は亀蔵が龍神が生み出した神のたまご、もしくは何かしらの理由で姿を変えているのではないかと考えているらしい。ミニドラゴンは目くらまし用に召喚したのだと」

「あー」


 まさか亀蔵が勘違いされているとは思わなかった。

 だが疑いたくなる気持ちも分かる。


 今だって亀蔵は公爵家で留守番しているのだが、それは亀蔵ルームの最終仕上げをするため。私と同じ部屋で過ごせば良いのだし、そもそもハウスがある。


 部屋は不要なのだが、お父様から亀蔵のことをよく頼まれたらしく、お爺さまはやる気だった。


 錬金獣が存在するという前提と、お父様が無類の亀好きという情報がなければ最初に疑うのはその可能性なのだろう。亀蔵溺愛がここで効いてくるなんて……。


「彼の留学期間は一年。だからくれぐれも威嚇しないように」


 会って話したいことってこれか。

 他国の王子を警戒しろなんて、外ではなかなか話しづらい内容だ。


 サルガス王子が忠告してくる時点で面倒くさいことなのは確実。私も出来るだけ関わりたくない。


「亀蔵に危害を加えられなければ」

「それでいいさ。何かあったら辺境伯も出てくるだろうからな」


 そう締めくくり、サルガス王子はパチンと指を鳴らした。


 すると外で控えていたのだろう使用人がぞろぞろと部屋に入ってくる。

 その手に持っているのは男子の制服である。


「こちらの都合で呼び出したからな。お礼として、ルクスさんの制服と運動着を用意させてもらった。一応サイズを確認して欲しい」


 サイズはイザラクにでも聞いたのだろう。

 ルクスさんはメイド達と共に隣の部屋に向かう。一緒に針子らしき人もいたので、簡単なところは今のうちに直してしまうのかもしれない。特に尻尾のあたりとか。



「ところで、ウェスパル嬢に聞きたいことがある」

「そのためにルクスさんを引き離したんですか?」

「いや、制服は元々渡すつもりだった。使う使わないは別として、あったら便利だろう。学生登録も済ませてある」

「ありがとうございます。それで聞きたいこととは?」


 文通を続けたいと言い出すほどだ。サルガス王子が私達に喧嘩を売ってくることはないだろう。


 けれどルクスさんのいない場所でないと切り出せないこととはなんだろう。

 少しだけ身体が堅くなる。


「心配しないでくれ。私はただ、彼と結婚するつもりがあるかどうか聞きたいだけだ」

「は?」

「あっさりと婚約解消に応じてくれるくらいだ。考えているのではないかと思ってな。一緒にいたら急かすみたいになるだろう」


 なるほど。気を遣ってくれた結果らしい。

 といっても私もルクスさんもそんなこと気にしたことなんてない。


 だって結婚は人間が決めた法律で人を縛るためのもの。ルクスさんには適用されない。


「話したこともありませんよ。だって私達はずっと一緒ですから」


 そんなものなくとも、私達が離れることはない。

 契約ならもうずっと前にパートナー契約を結んでいる。人間が他種族と結ぶ契約の中でも最上位に位置する契約だ。


 私はこの命尽きる時まで解除するつもりはないし、きっとルクスさんだって同じ気持ちのはずだ。


「そうか。今更な質問だったな」

「そうですよ。私達の絆を見くびらないでください」


 ミルクティーのおかわりをもらい、追加で運ばれてきたモンブランにフォークを突き刺す。


 中にマロングラッセが入っているモンブランは、サルガス王子のおすすめらしい。

 とても美味しく、戻ってきたルクスさんなんて三つも平らげていた。


四章はこれにて完結です。

ラストも近づいてきました!


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