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26.マジックバッグのつもりが?

「そろそろマジックバッグを作らないと」

「まだ先でいいのではないか? 時間はあるぞ?」

「ルクスさん、甘いですよ! そんなだらだらしてたらあっという間に入学です。それに今なら素材を取ってきてくれる人がいるから、作るなら今です!」


 素材を取ってきてくれる人とは、いわずもがなお兄様である。

 アカがいるので頼めばすぐに素材を取ってきてくれる。妹に甘いというのもあるが、やはり飛行出来る魔獣が仲間にいるのは強い。


「出来たはいいが、小さくてあんまり芋が入らなかった、なんてことになったらルクスさんも嫌でしょう?」

「アカに運ばせればいいではないか」

「それでも数時間はかかります。食べたい時に食べれないのってなかなか辛くないですか?」

「それもそうだな。だがイメージは出来ているのか?」

「それはもちろん!」


 亀蔵達のハウスを参考にすればいけるかなと思っている。


 そもそも魔獣のおうちを作った人は、なぜマジックバッグを作らなかったのだろう。

 私が知らないだけかとも思ったのだが、今までそのような物は確認されていないらしい。


 絶対マジックバッグの方が需要があると思うのだが、昔の錬金術師は魔獣好きの人だったのだろうか。


 大型の魔獣ならアカみたいに飛べればいいが、亀蔵がもう少し大きくなれば移動するだけで大変だろう。


 話しながら小屋に素材を取りに行く。


 マジックバッグの素材として目をつけているのは、お兄様が大量に採取してきた魔獣の毛皮だ。



 すでになめしてあるのでこのまま使える。


 あまりにも多くてどれがどの魔獣の毛皮なのか判別することは出来ないので、手触りが一番良いものを選んだ。


 それから金具になる鉱物と、魔結晶をいくつか。



「かなり少ないな」

「マジックバッグといっても鞄ですからね~。内容量があれば見た目の大きさは別にそこまでなくてもいいですし」


 材料を釜にポンポンと入れ、魔力を込めてかき混ぜていく。



 亀蔵と亀吉はその間に畑の世話へと向かった。

 ルクスさんは私の近くに置いた椅子の上で、眠っている。


 死草の一件があった直後から、ルクスさんはよく眠るようになった。

 食べる量も増え、身体も大きくなった気がしなくもない。成長期かな。


 とはいえ、私も錬金釜が出来てからかなり力持ちになった。

 釜にはかなりの量の水が入っており、入れるものによって重さも変わる。なのでぐるぐるとかき混ぜるだけでも大変なのだ。


 そういえばアイテムバッグって生き物入れられないんだっけ?人とか魔獣とか。


 でも亀蔵ハウスは生き物入れられる仕様になっている。


 特殊なアイテムが必要とはいえ、土とか水場も作れる。アイテムバッグとして利用できないこともないのだろうが、完全に魔物の家として作られているので、物を運ぶ道具として使う人はいなかったのかな。


 犬小屋に食料入れて運ぶみたいなものだし。出来なくはないけれど、あまりいい気はしない。


 いい気はしないといえば、魔獣が入れるなら人間も入れるのかな。


 亀蔵のおうちはペンダントだけどバッグ型にすれば……。


 前世ではバッグに入る芸を披露している芸人さんがいたけど、身体柔らかければ大人でも入りそう。マジックでも似たようなものがあったような?

 それに子どもなら足からすっぽりと入りそう。


 ハウスはこちらから呼び出したりしなくても出て来られるようになっている。

 多分、主人が亡くなった時なんかに魔獣が取り残されることを防いでいるのだろう。


 けどあれってどういう仕組みになっているんだろう……。

 マジックショーのお姉さんが派手な音と一緒にバッグから登場する姿が頭に浮かぶ。


 楽しそう......ってヤバイ、思考がずれてきた。



 アイテムバッグに思考を戻す。


 いっぱい入って、中に入れたものの時間が止められる便利グッズ。

 形はショルダー、色は汚れが目立たない黒。

 肩にかけながらごそごそ探れるように取り出し口は大きめ。頭がすっぽりと入れるくらい……ってダメダメ。また思考がずれる!



 夕食に呼ばれてもかき混ぜ続け、日が変わるかという頃。

 釜がぼんやりと光り出した。そしてぷか~っと何かが浮いてきた。


 見た目はイメージ通りのメッセンジャーバッグ。

 サイズも私の横幅よりも少し大きめ。色はなぜか紫。


 投入した毛皮の色とも魔結晶の色とも違う。

 イメージしていたものは黒色だったのだが、問題は機能だ。金具と縫製も確認しておきたい。


 机の上にタオルを広げ、木べらですくい上げたバッグを上に乗せる。

 縫製と金具はしっかりとくっついている。ベルトで長さを調整出来るようにもなっている。



 軽く拭き取ってから、ぺらっと蓋の部分を開いた。見た感じ真っ暗で底が見えない。

 いろんなものが収納出来るものなので、見えなくても良いのだろう。



「これって取り出す時、どうするんですか?」

「それはウェスパルが作ったものだ。作る時に想像した通りになる」

「そこまで深く考えていませんでした」


 ハウスの想像はしたが、仕組みが分からなかった。

 なので再現はされていないと思う。もし再現されていたとしても有効なのは動物だけだ。


 入れたはいいが、取り出せないバッグなんていらない。

 ゴミ箱としては使えるかもしれないけれど、私が欲しいのはあくまでも収納用。取り出せないと困る。


 どうしたものか。取り出したいものを念じるとか?


 少し悩んでから、書き損じの紙を入れてみることにした。

 これなら取り出せなくなっても困らない。集めた紙に①から⑤の番号を振っていく。取り出す時にこの数字を思い出すためだ。


「何をしているのだ」

「取り出せるかの練習です」


 紙をぽいぽいと中に入れてから手を突っ込む。


 まずは①の紙から。

 どこだどこだと探っていると、何かが指先に触れた。


 明らかに紙の感触とは違う。しかも動いている。驚いて手を引く。


「びっくりしたぁ」

「どうした?」

「紙以外の何か、生き物みたいなのがこの中に入ってます」

「一体どんなイメージをしたんだ」

「亀蔵達が使っているハウスみたいなやつ。あれなら生き物でも入るのでどんな素材でもいれられるかなって」


 余計なものをイメージしたせいか、色は思い描いたものとは違った。

 けれど形は納得のいくものだった。蓋を固定するためのボタンもバッチリだ。


 いくら亀蔵と亀吉が錬金術で作った生き物とはいえ、バッグの中に出来るなんてそんな変な登場の仕方があるものなのだろうか。


 それこそマジックショーの鳩のよう。

 でも指に触れた感触は鳩でもなければ亀でもなかった。


 ならなんなのかという話だが、分かっていたら掴みあげている。

 分からないから怖いのである。


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