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12.初等教育の勝利

 食糧がないからとあの場所を動かれては前線を守る人がいなくなるので、芋が長期保管出来るように専用のアイテムを作ってくれた。

 それが芋小屋の空調管理アイテムである。


 国内で対処が難しい魔物が出たりしたら頼るのはシルヴェスターなので……と色々頑張ってくれた結果だそうだ。


 錬金術師が何回も来るうちに当時の領主と仲良くなり、質の良いものを作ってくれたおかげで今も多くのものがしっかり稼働している。


 そしてその錬金術師というのが、亀蔵ハウスのクリーニングを担当しているところの先祖にあたる人だという。

 なのでクリーニングは無償で行ってくれるし、オプションは金ではなく物々交換だそうだ。馬車のメンテナンスも行ってくれるらしい。


 付き合いって大事だな、と改めて思う。

 ご先祖様と錬金術師さんのおかげで空調管理アイテムはともかく、馬車はバリバリ現役である。


 なので私が馬車をどうにかする必要はないのだが、話を聞いた時から私も馬車を作ってみたいなと思っていた。


 だがよく考えれば私には前世の知識がある。

 今あるものの再現に留まる必要はない。自分のものが欲しい。


「じどうしゃ? なんだそれは」

「前世にあった、ガソリンとか電気とか水素とかを入れると動き出す車のことです」

「馬や魔獣はいないのか?」

「はい。エネルギー源さえあれば車だけで動き出します」

「それは便利だな」

「まぁガソリン車の場合は排気ガスによる環境問題とかが出てくるんですけど。でもこのエネルギー源を魔力にすれば出るのは魔素ですよね? バッテリー部分を魔石にすれば、環境にも優しい! 歩かなくて良い! 荷物いっぱい詰める! でウィンウィンウィンのウィナーさんです」

「そんな乗り物があれば便利だとは思うが、その自動車というものは簡単にできるものなのか?」

「詳しい作りは分からないんですけど、電気モーターカーを作った経験はあるので細かいところは想像力でいけるかなと」


 電気モーターカーを作ったといっても、小学生の頃、理科の授業で配られたキットを組み立てただけ。だが複雑なものを作るつもりはない。


 ようはエネルギーが車輪を動かし、ブレーキとハンドルがちゃんと作用すればいいのだ。


「電気モーターカー?」

「材料もあるし、とりあえず作ってみようかなと!」


 出来たらいいなと軽い気持ちで、バラバラのパーツを紙に書いていく。

 魔石を投入する場所は漏斗みたいな形にして、中身が空になった物は下に落下するように受け皿を作って……とそれらしいものを描いていく。


 初めてなので、ドアや屋根は取り除いた。

 車輪は土の上でも走りやすいように太めに。見た目は四輪バギーをイメージした。


 後ろには台車を引っかけるようの出っ張りも作って、夢のマイカーズの完成である。

 けれどルクスさんの頭には未だ、クエスチョンマークが大量に浮かんでいる。


「よくわからんが、爆発にだけは気をつけるようにな」

「はい! それではレッツメイキング!」


 上手く出来てくれよ~と念じながら、完成パーツを思い浮かべる。

 今度は余計なことを考えずにひたすらかき混ぜて、魔力と素材を投下していく。


「私、天才かもしれない!」

「本当に出来るものなのだな……」


 数日かけて作り上げたパーツを組み立てれば、イメージ通りの車が完成した。

 ルクスさんはとても驚いている。


 だがこれではまだ模型状態。動かなければ意味はない。

 お父様からもらった空魔石に魔力を込め、漏斗の中にポンポンと突っ込んでいく。漏斗に入ればいいので、大きさは小さくても良いと言ったらかなりの量を集めてくれた。


 上手く動いたら食料の買い付けの際にも使いたいとのことだ。


「動かしますよ~。ルクスさん、亀蔵亀吉、乗って乗って」


 全員が乗り込むとギリギリ。

 釜の大きさの関係でこれがマックスだったのだ。拡張するなら台車の方で工夫するしかない。そちらは追々考えていくとして、動くかどうかが重要だ。


「スイッチオン!」

 レバーを引き、エンジンをかけてアクセルを踏む。するとスウッと動き出した。



 成功だ。

 スピードは思ったよりも出ないが、今後の課題ということで!


 無事にマイカーを得た私達はそのまま領内を乗り回した。

 途中、エネルギーが足りなくなりそうだったが、なにせ動力は魔力である。


 受け皿に落ちた魔石に魔力を込め、再び漏斗に入れればまた動き出した。


 初等教育様々である。


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