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ティア・ウェネーフ視点 心中一瞬の戦い、無手格闘術

「ティアさん、一緒にグラム王国に行こう。そこで冒険者になって少しでも鍛えてティアさんと一緒に生きていけるよう頑張るからっ!!」

後ろからリゼルさんの熱のこもった言葉を聞かさてキュンと来た。そして私の心はトロトロに溶けてしまった。

(リゼルさんっ!! どうしてそんないじらしい事を言うんですかっ!! 愛おしくなってくるじゃないですかっ!! ただでさえガマンしているっていうのに……抱きしめたくなるじゃないですかっ!! もしかして誘ってるんですか!? 誘ってるんですねっ!? 既成事実を作ってもいいって事ですか!? ならもう我慢しませんっ!! 私もう……)

性欲が私を支配しリゼルさんに向かってダイブしようとするがそれを抑える者が内から現れた。それは理性だった。

(師匠にも言われたでしょう、無理矢理はやるのはダメだと。今度こそリゼルさんに嫌われてしまいますよ。そうなったらどうするの?)

(そんなの私無しじゃ生きていけない様にすればいいだけの事よ。そうすれば嫌われるなんてこともない。夢中にさせてしまえば後はどうとでもなるのよ。理性もいい子ちゃんぶらないで正直になりなよ。リゼルさんの事……好きなんでしょ)

(それはそうだけど……やっぱり無理矢理ってのはよくないよ。それよりもゆっくりと絆を深めて愛情を育てた方が絶対いい)

(まどろっこしい……やっぱり気が合わない。お互い相いれないとなるとどちらの主張が正しいか決めるにのは……)

(ええ、これしかない様ね)

性欲と理性がお互い拳を強く握りしめそして全く同じタイミングでお互いを殴る。ガチの殴り合いだった。私の心の内で性欲と理性がせめぎ合う。激しい戦いの末、性欲が倒れ理性が性欲を踏みつけていた。理性が勝っってくれた。理性の足元で性欲が最後に捨て台詞を残す。

(フハハハハッ、私は性欲四天王の中では最弱。次の性欲がお前を……)

(いいから消えなさいっ!!)

理性が性欲を強く踏みつけ性欲を打ち消した。私はリゼルさんに手を出さず前を向いたまま「はい」と頷く事が出来た。

(私、性欲に負けなかったよ、師匠)

私の脳裏に師匠と仰ぐ老女の顔が浮かんだ。

(……というか今は自分の精神力を褒めるところじゃない。私とリゼルさんとの輝かしい未来を邪魔する奴をぶっ飛ばさないと……)

私は馬車から飛び出りるとまさに疾風の速度で戦場をかける。私が身に纏う修道服、別名<歩く教会>の特殊機能を解放する事により通常ではありえない魔力が体に流れ込み更に強力な身体強化が発揮される。そして私は前方、僅かな魔力しかなく身を守る事が出来ない少年に凶刃を向ける盗賊の元に向かう。高速にだけど無音で盗賊の後ろに回り込み腰に腕を回し引き抜くように持ち上げ後方へ反り投げる、これぞ必殺岩石墜とし。



盗賊はつい先ほどまで地上にいたというのに数百メートルの高い岸壁から突き落とされたかのような錯覚に襲われる。垂直落下の瞬間、自分の今までの人生を走馬燈として垣間見る。そして最後に己の頭蓋が砕ける音を聞いて絶命した。



私は頭から地面に突きささった盗賊を手放し反り返った状態から腹筋を用いて上半身を起こすと少年の元に駆け寄った。「大丈夫!?」と安否を聞いたのだけど少年は答えない。表情はこわばりガタガタと震えている。恐怖のせいか粗相をしてしまっていた。大丈夫ともう一度聞くと少年は「ヒッ!!」と悲鳴を上げ必死に後退る。腰を抜かし立ち上がれない様だ。それを見て私は理解した。

(この、私を怖がってるんだ……何気に傷つくなあ)

だから落ち着かせるように微笑を浮かべ手を差し伸べる。

「大丈夫、私は味方だから」

「……味方」

私の言葉を反芻、咀嚼してようやく理解し安心したのかボロボロと泣き始めた。

「怖かった……怖かったよ」

「怖かったよね……こんな所から逃げ出したいよね。でももう少しだけ辛抱して。あいつらは……私が全て倒すから」

「そんな……危険だよお姉ちゃん」

少年はしゃくりあげながらも私を心配してくれた。

「大丈夫……私、今とっても強いから」

「強い?」

「うん、お姉ちゃんには守るべき人がいるからね。そういう人は誰にも負けないから」

そう言っても少年はまだ不安そうだ。

「確かにお姉ちゃんは強いけど……盗賊はあんなにいっぱいいるんだよ。冒険者の人だって……勝てる訳ないよ」

今も冒険者の一人柄男されていた。このままではこちらが制圧されるのも時間の問題だ。だけど私は不敵に少年を安心させるためにも笑った。

「普通ならそうだけど……あえてもう一度言うね。大丈夫、私強いからっ!!」

私はここを動かないようにいって走った。そして跳躍、走る勢いを推進力に空中を滑り盗賊の一人に向かって両足を突きだし飛び蹴りを食らわせた。盗賊は両腕で蹴撃を防御するがボキリッという嫌な音と同時に腕が変な方向に曲がり更に衝撃は本体に届く。盗賊は耐えきれず派手にぶっ飛び地面を転がりそのまま動かなくなった。

「まだまだあっ!!」

私は身を低くした状態で近くで呆然としていた盗賊に突進、両足を刈り転倒させた。そして盗賊の両足を掴み、そのまま全力で振り回した。盗賊は私から逃れようともがくが数十回振り回した事により頭に血が上り気を失い抵抗出来なくなった。気を失ったからと言って許すつもはない。私は狙いを定めホールドしていた手て緩める。気を失った盗賊は砲弾となって冒険者と戦っていた盗賊にうまく命中した。砲弾となった者、砲弾に当たった者ともに重傷だろう。

一連の惨状を目の当たりにした冒険者は一瞬私を怯えた目で見たがすぐに気を取り直し「助かった、ありがとう」と言ってきた。

(流石は冒険者、度胸がある)

私は素直に感心した。

「護衛対象に戦わせる何てあっちゃならねえんだが……あんたみたいなバカ強え援軍は非常に助かる。済まないがもう少し協力してくれ」

「……共に戦うよりもまだ息のある人達の治療して後ろに下がって……というか後ろの馬車を守ってくれませんか?」

「今更馬車守れってどういう事だ? それよりも協力した盗賊らを倒した方が」

「お願いします。あそこには私の大事な人が乗っているんです。それに私の技はかなり大雑把で近くにいたら……巻き込んでしまいますから」

冒険者はギョッとして私を見る。

「おっかねえな……分かった、生き残っている仲間を集めてまだ息のある乗客の治療と後ろの馬車を守るからアンタも思いっきりやってくれ」

「判断が早くて助かります」

「迷いは即死に繋がるからな。じゃあ俺はいくぜ」

冒険者は迷う事無く私から離れ生き残っている他の冒険者に声をかけこちらの言う通り行動してくれた。ここで変な正義感を持ち出されたら説得に苦労し、場合によっては気を失わせるくらいの事はしなければならななかったかもしれない。

「これで後顧の憂いは無くなりました。後は全力でやらせてもらいます」

私は自分の中の狂暴な獣を解放する。足から魔力を噴出し高速で移動し盗賊たちが集中する中に突進する。一足で間合いに入りすれ違い様右腕を伸ばし盗賊の上半身を薙いだ。巨人の腕にが如き一撃に盗賊は吹っ飛んだ。あり得ない光景を見て盗賊らの眼の色が変わる。私が強敵であると認識し殺気をむき出しにして手に持っている武器を私に向けた。

「上等……」

私は狂暴な笑みを浮かべながら無手格闘術八聖力の構えをとった。

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