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時空(じくう)の旅人  作者: 抹茶
第一章 始まりの空間
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第七十五話 最後

 再び、セントラルと対峙する。

 今度は、負けない。その思いを持って戦い抜く。

 

「セイント・バースト!!」

「ふざけるなよ!! 高崎君、矢島さん、君達はどうやっても僕に勝てない!!」


 俺が魔力を溜めている間の時間稼ぎ。

 矢島さんの魔法は、やはりセントラルには通用しない。それでも、彼女は懸命に攻撃を繰り出していた。

 そんな俺達の様子を見て……セントラルの苛立ちは目に見えて高まった。


「皆の為だと? もう、死んでいるじゃないかッ!! そんな死人のためにどうして戦うんだよ!?」

「死んでいません!! 皆がくれたものが生きているから、私は今あなたと戦っているんです」

「意味が分からないね! 死とは敗北であり、屈辱だ! 生こそ勝利であり、栄光だ! なのに君達は何故、負けると分かっていながら死ぬ道を選ぶ!?」


 矢島さんの魔法を突き抜けたセントラルは、ソウルショットを彼女に放った。

 防御不可能の、セントラルの魔法。

 矢島さんは何とか体を捻り直撃は避けたが、セントラルの攻撃は止まらない。

 苛立ちをぶつけるかのように、矢島さんに大量の魔法を放った。


「ソウルショット! ソウルドライブ! ソウルクラッシュ! さあ、食らえ!」

「ぐッ……!! セイント・バーストッ……!!」


 魂魔法によって形作られた魔法の数々が一挙に押し寄せ、矢島さんを襲う。

 初撃こそ避けられたものの、怒涛の如く押し寄せるその魔法の全てを避けきることは不可能だった。

 彼女の肩に、腹に、足に魂魔法が直撃した。

 しかしそれでも、苦痛を堪え、悲鳴を殺して矢島さんはセントラルへの攻撃をやめなかった。

 

「ゲホッ……! ガァ……グッ……! まだ……だ!」

「高崎君? 君は、止めないのかい……?」

「どこを……見ているの、セントラル! あなたの相手は……この私です!」

「矢島さん! 頼む! あと十秒だ!」

「分かった! 高……崎君……!」


 矢島さんはもう限界だ。

 足元はふらつき、えづくような呼吸をしている。

 だが、矢島さんは止まらない。止まれない。

 俺よりもはるかに強い執念を持ってセントラルと戦っている。


「さあ! まだ続けなさい! グッ……ウッ……! 私は、まだ戦える!」

「何なんだ、君は……? 何故、そこまでして……」


 さしものセントラルも、矢島さんの姿に驚いているみたいだな。

 ああ、そうだ。彼女は……強い女性だ。

 折れることなく、ただひたすらに俺を信じてくれている。

 俺ならやってくれると信じて、今は命を懸けてくれている。だから……!


「ああ! ウザイウザイウザイ! しつこいしつこいしつこい! 諦めろよ! 寝ていろよ! それで苦しまずに終われるじゃないか! 苦しんで死ぬことこそ、最大級の恥だということが分からないのか!?」


 セントラルは髪をぐしゃぐしゃにして、化け物を見るような目で矢島さんを見ている。

 もう少しだ。あと少しで……


「違います! 一生懸命頑張るからこそ、その生は輝くんです! あなたこそ、その事が分かっていない!」

「黙れ! もういい! 全て消してやるさ! お望み通り!」

「矢島さん! 魔力が溜まった! バレット・サード!」


 今まで溜めていた魔力を一気に開放する。

 この魔法なら、セントラルを倒せる。そう考えての、俺の最大魔法。

 だがその希望は、バレット・サードがセントラルの体を素通りしたことで無残にも散ってしまった。


「ぐ……!? これでも、駄目なのか!?」

「もう、いいよね? 僕も、本気で君達を消したくなったよ……!!」

「高崎……君……」

「!? 矢島さん!!」


 矢島さんは、もうとっくに限界だった。

 倒れてしまった彼女に近寄るが、もう意識があるかどうかも怪しい。

 そんな状態なのに、まだ目はセントラルから離していなかった。

 まだ、諦めてはいなかった。


「矢島さん! しっかり……」

「私……よりも、セントラルを……た……おして。高崎君……」

「だが! もう俺の魔法は奴には通じない! どうしたら……!」

「諦め……ちゃ、ダメ。大事なのは……ここ、でしょ……?」

「!! 心臓……」

「ううん……自分自身ってこと……だよ。負けないで……自分にだけ……は……」

「矢島さん! 矢島さん!」


 それだけ言って……矢島さんは目を閉じた。


「ッ……! くそッ……!!」

「そうか……目障りな子が静かになってくれたようで嬉しいよ。けど、容赦はしない。この一撃で、君達を殺してあげるから」


 セントラルは魔法を唱える態勢に入っている。

 俺は……もう、何も出来ない。バレット・サードが通じなかった以上、もう他に手なんて――


「――いや、まだだ!」


 もう、俺しかいないんだ。

 俺だけが、彼女を守れるんだ。

 言ってくれたじゃないか。自分に負けないで、と。だったら俺も、矢島さんが見せてくれたように、最後の最後まで足掻き通すしかない。

 俺の魔法で、最後の一撃を――


「――! 魂……!」


 そう考えた時、何かが繋がった気がした。

 魂と魔法。これって確か――

 

 ――まあ要するに、ちょっと意識してみろって事だよ。『魂』を


 あの時セントラルが言っていたヒント。

 魔法を生み出すためには、魂が必要。

 それを意識したおかげで、俺はバレット・サードを生み出せた。

 だが、魔法が魂に関わっているのなら……


「今度は逆だ……! ()()()()()()()()!! 信じるぜ……! 俺の魂魔法をッ……!」

「何をゴチャゴチャ言っている!? 今更何をしても、もう遅いぞ! ソウルブレイク!」

 

 今まで以上に巨大な、セントラルの魔法。

 おそらく、奴の魔法の中でも最大クラスの一撃。これを受ければ……俺達は死ぬ。

 けれど……


「いいや……! 最後の瞬間まで、戦い抜くって決めたんだ! 絶対に諦めない!」

「は! 何を撃っても、その魔法は消せない! 消えろ、高崎君!」


 ああ。その通りだ。

 俺の魔法だけじゃ、駄目だったんだ。

 でも、皆と戦ってきた日々が、俺に……最後の魔法を放つ勇気をくれた。


「!? 君、何笑って……」

「セントラル、終わらせよう。この場所での戦いを」


 皆がいてくれたから……俺はここまで来れたんだ。 

 俺の魂を、皆への感謝を、この魔法に込めて、叫んだ。


「ソウル・バレット!!」


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