表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時空(じくう)の旅人  作者: 抹茶
第一章 始まりの空間
5/329

第四話 決意の瞬間

 

「氷藤!! 佐藤さんが熊に殺された!! こっちに来てる!!」


 三原雄大が息を切らして蹴破るように扉を開けてそう叫んだ。

 続いて、恐怖に震える顔で残りのクラスメートたちが入ってきた。

 俺は唇を噛んだ。アイツだ。あの熊がまた一人、命を奪った。

 そして、怯えて逃げてきたクラスメート達の雰囲気がさらに恐怖を伝染させ、周囲はパニックに陥った。

 

「お。おい……佐藤が死んだ? 冗談だろ、なあ!?」

「いや……いや……もう嫌よ!! 死にたくない!!」

「落ち着いて!! 皆いる!?」

「逃げよう!! 氷藤!! 早く!!」

「ま…待って!! 皆。……佐藤ちゃん……」


 野田、白川さん、矢島さんも困惑しているようだ。

 だが、騒いでいる場合じゃない。あの熊がこの小屋に近付いてきているのなら、早く逃げないとまた誰かが死んでしまう。

 俺が全員に向かってそう伝えようと時、氷藤が俺の肩をたたいた。  


「高崎君。……あと、久木原君。ちょっと来てくれ」

「なんだ、氷藤!? 今はここから出ないと……!!」

「分かっている。だが、僕は全員逃げられるとは思わない。熊は僕らをどこまでも追いかけてくるかもしれない。だから最悪、戦うことが必要になる」


 氷藤は冷静に俺に語り掛ける。こんな状況でも焦りを見せないこいつに少し恐怖を感じてしまう。


「馬鹿言ってんじゃねえぞ。アイツと戦う? 相手は人食い熊で、バカでっかい奴だぞ。……それとも何か勝算でもあるってのか?」

「ああ、これを見てくれ」


 久木原が質問すると、氷藤は机の下から何かを取り出した。


「……これ、剣か?」

「多分、正確にはレイピアと呼ばれるものだね。なんでかは分からないけれど、この小屋に置いてあったんだ。それともう一つ、小屋の裏に大剣も立てかけてある」

「おい……まさかそれであの熊と戦おうってことか……?」

「そうだ。全員生き残るには、力を合わせてその熊を倒すしかない」


 馬鹿げている。無理に決まっている。案の定、聞いていた他のクラスメート達からも同じ意見が飛んできた。その時、あの熊の声が聞こえてきた。


『グガアアアアアァァァァ!!!!!』

「「「!?」」」


 近い。すぐそこにいる。これだけ近いと、誰かは絶対に捕まってしまう。

 俺は机上のレイピアを見た。こんなものを使ったことはないし、あの熊を殺せるとは到底思えない。

 だが、もう他に道はなかった。ああクソッ!!


「氷藤! 皆! もうここまで来たらやるしかない!! 協力してくれ!!あの熊を倒す!!」


 一瞬場が静まり返った。無理か。やはり皆無理だと思ったか。だが、頼りになる親友はここでも俺を助けてくれた。


「……氷藤。どこに大剣がある? 案内しな。俺が使う」


 久木原がそう言って氷藤と、その場の全員を見る。


「……何をすればいいの?高崎君」

「やらねえとどのみち死んじまうかもだからな……。俺もやるぞ!」


 白川さんと野田も続く。それに触発されて全員が協力を申し出た。


「ありがとう。皆」


 俺はそう言ったが、作戦なんてものは無かった。ただ手元のレイピアを使うことしか頭になかった。その時、氷藤が再び俺の肩を叩いた。


「……高崎君。まさか、無策で挑んだりしないよね?」

「じゃあ思いつくのかよ。相手は3メートルクラスの大熊だぞ」


 俺はそう反論するが、氷藤はそれを聞いて微かに笑った。


「もちろん。元はと言えば僕が言い出しっぺだからね。それじゃあ、熊狩りと行こうか」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ