第三話 クラスメート達との再会
謎の白熊からしばらく逃げ続けた俺たちは足を止め、後ろを振り返った。
白熊の姿は見えない。ああ、どうやら逃げ切ったようだ。
息を整え、涙を拭って俺は東悟を見る。
「東悟。本当に助かった。よく俺の場所が分かったな」
「急にお前の叫び声が聞こえてきたからな。急いで向かったんだ。そしたらなんだあの熊は? とりあえずそこらへんの倒木を投げといたが、まだ死んでねえよ。ありゃ」
久木原東悟。身長190、筋骨隆々とクラス内だけではなく学校中で恐れられている存在。
「番長」として学校外では不良グループを纏めており、喧嘩が無茶苦茶に強い。
そんなこいつと俺は、ある理由で中学時代からの親友だった。
「東悟。聞いてくれ。……本田と霧山があいつに喰われた」
「なんだって!? マジかよ。だからあの辺血の匂いがしてたわけか。クソッ!!」
「ここが何処なのかもわからない。だが、お前がいたということはクラスの他の奴もどこかにいると思う。あの白熊の事を伝えないと!!」
「あれ? 高崎君と久木原君?」
俺たちが話していた時、森の中から同じクラスの女子、矢島玲香が出てきた。
比較的おとなしい女子だが、その可愛さしさから一部の男子に人気の女子だ。
「矢島さん! 良かった。大丈夫だったか!?」
「え? うん。この森のことはよく分からないけれど、特に何もないよ。何かあったの?」
俺は矢島さんにあの俺が見たことをすべて話した。
その中で、彼女は特に親しかった霧山の死にショックを受けたようだった。
「そんな、明日香ちゃんと本田君が……」
「この森には俺らのクラスが本当にいるようだな」
「あの熊は危険だ。他の奴が襲われる前に集合しないといけないんだ。矢島さん、他に誰かにあっていないか?」
「そ、そうだ! 二人とも。向こうに小屋があってね。そこに氷藤君とか白川さん達が集まってるんだ! 他にも残った人たちを探している皆に知らせないと!」
「本当か! 東悟。行くぞ。森の中は危険だって知らせないと!!」
矢島さんに先導されて、俺たちは森の中の小屋に到着した。
彼女が扉を開けると、中にはクラスメートである氷藤と白川さん、そして野田がいた。
「おかえり。矢島さん……ああ、あと高崎君に久木原君か。また会えて嬉しいよ」
氷藤蛍士郎。学年主席の秀才で、常に冷静沈着で口数は少ない奴だ。
俺も言葉を交わしたことはあるが、なんだか頭の構造が違うなという感想しか出なかった。
「これで十九人ね。後十一人、見つかるといいのだけれど……」
白川加奈子。文武両道で学年屈指の美貌を持つ女子だ。
学校中の男子の憧れだが、ハッキリとした性格から女子にも人気が高い。
「よお正真。元気だったか? なんか焦ってるみたいだが?」
野田隆介。サッカー部のエースでイケメンだ。非常にモテるため、よくそれを自慢してくる。だが、少しバカなところがあるためフラれるのも早いと噂の男だ。
白川さんの言葉から、どうやら大部分のクラスメートがここに居るらしいことが分かった。
「皆、聞いてくれ。実は……」
俺は森の中で見た事を、その場にいた三人に話した。
話の中で、三人も本田と霧山の死に衝撃を受けていた。
けれど俺が話し終えた時、最悪の情報が外にいた三原雄大からもたらされた。
あの熊が、また一人、食い殺したと。