表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時空(じくう)の旅人  作者: 抹茶
第一章 始まりの空間
31/329

第三十話 恐怖と懇願

「三原……!!」

「クソッ……」


 俺達の目の前で、また仲間が一人、死んだ。

 三原の姿を見て、俺は拳を握る力を強める。


「高崎君、今……何か三原君に入っていかなかった?」


 どうやら、矢島さんも見ていたようだ。

 西田さんの体から出てきた、奇妙な煙。それが三原に入り、死んだ。

 その西田さんは、さっきの動きが嘘のように、廊下に倒れて動かない。もしあの煙が今回の敵なのだとしたら、今は……三原の体の中にいる。

 俺は、慎重に三原の体に近付く。


「おい! 高崎、何を……」

「敵の正体を、掴めるかもしれない。そして多分……三原の体にそいつがいる」

「……危険すぎる。また襲われるかもしれないよ」


 野田と氷藤が、俺を引き留めようとする。

 危険は承知だ。だけど、今敵は目の前にいる。三原の中に潜んで、俺達を待っている。確認するのなら、今しかない。


「氷藤、堀口……俺が三原に近付いて、何か出てきたら、迷わず魔法を撃て」

「君……全く、分かったよ。でも……気を付けてくれ」

「高崎、頼んだぜ……」


 氷藤と堀口は頷き、いつでも魔法を唱えられる体勢に入る。


「高崎君……」


 矢島さんが呟く。心配してくれているようだ。

 俺は振り返り、一歩一歩、すり足のように三原の体へと歩き出す。

 汗が頬を伝い、呼吸が乱れる。

 三原が、急に起き上がり、襲い掛かってくるかもしれない。あの煙が、俺に入ってくるかもしれない。どちらでも、反応が遅れれば死につながることは明らかだ。

 三原の体に届くまで、あと一メートル程の距離まで来た。


「ッ……クソ……」


 手が震える。歯がガチガチと音を立てる。死の予感が、すぐそこまで迫る。

 けれど、これは、誰かがしなければならない『役割』だ。

 今の俺には、これしかできない。皆で生き残るために、進んで危険を冒す。それが、今俺が出来る最大級の事だ。

 俺は、皆の顔を見る。心配してくれている。氷藤と堀口は、じっと俺を見てくれていた。

 大丈夫だ。あの二人を、皆を『信頼』するんだ。

 

「!!」


 三原の体に、触れた。顔がようやく見え、死の前の苦しさが伝わってきた。

 だがその直後――あの煙が、三原の体から噴き出した。


「アイスエッジ!!」

「サンダーボルト!!」


 煙は俺を包もうと大きく広がったが、氷藤と堀口の魔法が俺の目の前を横切り、それをかき消した。


「高崎君! 大丈夫か!?」


 驚いて、思わず尻もちをついた。二人の魔法が無ければ、あの煙に飲まれていたかもしれない。

 だが、四散した煙はすぐに纏まり始め、廊下の奥へと飛んで行く。


「! 待て!!」


 堀口が、それを追いかけて廊下の奥へと走って行く。


「!? おい、堀口!!」

「止まるんだ! 堀口君! 一人で行っては……」


 突然、金属をすり合わせたような音が廊下の先から聞こた。

 ――直後、堀口の悲鳴が廊下中を走った。


「!? 明人!? 明人おォォ!!」

「待て、行くな! 野田!!」


 続いて、野田も走ろうと腰を屈める。その瞬間、東悟が野田の肩を掴み、それを制止した。


「放せ! 久木原! 明人が……」

「落ち着け! 野田君! 今から皆で確かめに行く! だから、一人で走るな!」

「明人ォォ!! 返事をしろォォォ!!」


 親友である堀口の悲鳴。野田は、それを確かめたいと必死になって先に進もうとしていた。

 東悟が野田を抑えながら、俺達は廊下の先へと進む。あの煙の居場所は分からないが、今は、堀口の安否の方が重要だ。警戒し、堀口の名前を呼びながら十歩ほど進んだ時……。


「あ……明人ッ! しっかりしろォォォ!!!」


 堀口は、無数の剣や槍が体に刺さり、廊下に倒れていた。周囲に散乱したそれら剣や槍は、さらに堀口の体を切り裂き、全身を切り刻んでいた。

 それらを隠してあったと思しき穴が、天井に空いていた。


「罠か……クソッ……」

「矢島ァッ!! 早く、明人を……」

「……」

「矢島!? 何してる、早く回復……」

「……ごめん、野田君。傷は……傷は、治せる。けど、堀口君は……」

「何言っている!? 本気で治して……」

「野田君ッ!!」


 堀口を抱え、矢島さんに縋りつく野田に白川さんが声を張り上げた。


「……聞いたでしょ。堀口君は、もう死んでしまった。……矢島さんでも、命までは戻せない」

「ッ……! いや、諦めねえ! 明人! 目を覚ませ! おい!」


 野田は、堀口の体を強く揺さぶる。

 目から涙を流し、親友の目を覚ますために必死に呼びかける。

 ――だが、どんなに呼びかけても堀口が応えることは無かった。


 俺達の仲間が、こうしてまた一人、会えなくなった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ