第二十四話 賛成
その日の夜、白川さんが俺達を大広間に呼び出した。
全員集まった時、白川さんが口火を切った。
「……明日、お昼になったら〈第三の試練〉に挑もうと思います」
俺達の間に緊張が走る。第三の扉、あの赤い扉を開く。
それは再び死地に赴くことを意味していた。
「随分と急ぐじゃないか、白川さん。昨日あれだけ戦ったのに」
「分かってる。でも、このまま引き延ばすのは、時間の無駄だわ」
氷藤の問いに、ねえ高崎君と続けて白川さんは俺を見る。それを受けて、全員の目が俺を向く。
「え? おい、なんで俺……」
「そうでしょ? ズルズルと戦いを恐れて怖がっていたら、いつまでたっても此処から出られない。全員生きて帰るのなら、むしろ早めがいい」
また俺の方を見て、言葉を発する白川さん。おい、まさかまだ嫌がらせを続けているんじゃねーだろうな。
「待ってよ。白川さん。それにしたって急すぎるよ。明日なんて……」
「……いや、悪くねえ」
矢島さんの反対意見を、東悟が横から遮る。あの後、数十分ほどたって目覚めた東悟は、部屋の端で笑みを浮かべながら俺達の話し合いを見ているセントラルを睨みつける。
「どうせ、やんなきゃ帰れねえんだ。それに今は、暴れてえ」
「……俺も、白川と久木原に賛成だ」
俺と反対側に座る野田も、賛成意見を口にする。
「早くしないと……近藤や米原に申し訳が立たない。明日やるなら、俺も行く」
「隆介がそう言うなら、俺もやるぜ」
野田の隣の堀口もそれに続く。昨日の一件以降、野田も堀口も元気が無かったが、白川さんの提案で眼の色が変わる。それほど、戦いに行きたいようだ。
「……他の人は、どうかしら? 特に、高崎君」
俺達は、残り十一人。白川さんは、その内立場をはっきりさせていない俺含めた七人を見回し、俺の名前を呼ぶ。再び、全員が俺に注目する。
「ねえ高崎君、白川さんと何かあったの? なんかすごい呼ばれるけれど」
矢島さんが俺に尋ねる。それを聞いて、浅尾が慌てたように見えた気がした。
「……まあ、いろいろと、な……。なあ白川さん。そんなに急がなくても……」
「いや、明日、絶対に行ってもらうよ」
俺の発言に割り込んだのは、セントラルだった。
セントラルは、俺達の話し合いには極力関わらないように振舞っていたから、俺はこいつのこの行動に違和感を覚えた。
「せっかく白川さんや久木原君がやる気になってるんだから、それに乗ってあげないと駄目だろ?」
「おい、なんの真似だ。お前が決める事じゃ……」
「それなら、もし次生き残れたら、ちょっとしたご褒美をあげちゃおうかな」
「……ご褒美?」
その言葉に、氷藤が一番の反応を示した。
「そうだね。特に君は喜ぶかもしれないね。……次生き残ったら、此処が何処なのか、その質問に答えてあげるよ」
笑顔を見せながら、そう言ったセントラル。いや、冗談じゃない。
「おい! ふざけんな! 命を懸けた代償がそれかよ!」
「……確かに重要だけど、試練をクリアした対価としては、釣り合ってないな」
三原と浅尾がそれに対して不満を述べる。当たり前だ。いくらなんでも、そのために試練に挑む気にはなれない。
……だが、あの男にとってはそうではなかったらしい。
「……いや、それなら……」
「本気か!? 氷藤!? 此処が何処かなんて、試練を全部クリアすれば……」
「いや、案外……とてつもなく重要な事かもしれない。……セントラル、本当に生きて帰ったら、答えてくれるんだな?」
「勿論。約束は守るよ」
「そうか。分かった。……僕も、〈第三の試練〉に挑むよ」
氷藤まで、賛成側に回ってしまった。いや、いくら何でも急すぎる。もう少し、様子を見て……。
そう考え終わらぬ内、一人が手を挙げる
「あの、……私も、行きたい、です……」
西田ゆかり。話し合いの中で、一言も発言していない彼女が、賛成側に回った。
「太田川君に助けられて……、私は生き残った。彼の分まで、頑張りたいんです」
おとなしい女子だが、今だけは決意が目に満ちていた。
結局、彼女が賛成したことで、六対五。
賛成多数で、俺達は明日、試練に挑む事が決まった。




