第十七話 伸ばされた手
這うようにして、なんとか俺と堀口は地面から盛り上がる、鉄の槍に辿り着く。竜巻はどんどん勢力を増し、何かに掴まっていないと簡単に吸いこまれてしまいそうだ。
「いやあああああああああああああああ!!!!!!」
「たっ……助けてくれええええええええ!!!!!!」
突然、、矢島さん達と一緒にいた、岡崎さんと石川の悲鳴が横をすり抜けた。矢島さん達は氷藤が飛ばされないように必死に抑えながら、槍まで進んでいた。だが、槍まで草を掴みながら進んでいた二人の体は風で舞い上がり、そのまま――
――グシャッ
「……ッ!!」
二人は飲み込まれ、竜巻を赤く染める。思わず目をそらす。見えてしまった。あの竜巻の中。あれは……ただの風じゃない。中には風の刃も飛ばされてあり、吸い込まれれば間違いなくあの二人のように全身をバラバラにされてしまうだろう。
「……皆! こっちだ!」
俺とは別方向に飛ばされた東悟と白川さん、そしてなんとか地面にへばりついて飛ばされまいとしている野田と江藤さんの姿が見える。だが、あの距離ではこの槍には届かない。
風は更に強くなる。俺も懸命に手を伸ばすが、東悟と白川さんの手が地面から離れてしまう。
「! 東悟! 白川さ……」
「メ……メタルクリエイト!」
江藤さんが魔法を唱え、地面から数本の金属突起が再び出現する。運良く、二人はそれを掴むことが出来、助かったようだ。
「あ……ありがとう……江藤さん」
「マジで死ぬかと思った……」
「でも、今ので魔力が切れた。もう助けらんない」
向こうの四人は何とかなりそうだ。
俺は視線を矢島さん達に戻し、手を伸ばした。
「あと少しだ!! 掴まれ!」
「……う……うん! お願い!」
懸命に進む矢島さん。彼女は三原と一緒に氷藤を連れて懸命に進んでいる。浅尾が一足早く槍にしがみついた。あと少しだ。もうすこしで……
「よし! もう大丈夫だ!」
矢島さんの手が届いた。隣にいた堀口は三原の手を掴み、俺達は三人を引き上げる。
「あ……ありがとよ……堀口……高崎……」
「待って! 西田さんと太田川君……あと、村上君が!」
矢島さん達の後ろで、同じように這って進む三人。俺は、そいつらも引き上げようと、手を伸ばす。
「太田川! 掴ま……」
『ガ…グガォアアアアァァァァァ!!!………』
再び、龍が吼えた。先ほどとは比べ物にならないくらいの風が吹き、俺達を飲み込もうとする。片手だけでは体を支えられず、俺は太田川に伸ばした手を引っ込めてしまう。
「……! 高崎……」
「く……太田……川……! もう……少し……」
「い……いやだ……いやだあああああああああああああああ!!!!!!!!」
その後ろで、村上の体が転がり出した。悲鳴を上げながら、村上の体が浮き上がってゆき……
「い……いやあっ!!」
矢島さんが目をそらす。風の刃が村上を切り裂く音が、はっきりと聞こえてきた。
俺は歯を食いしばり、二人にに手を伸ばす。
「……くっ……。 二人共、頑張れ! もう少しだ!!」
「くそ……いや……高崎、もう無理だ。もう、耐えらんねえ……」
「ね……え……いやだ……死にたくない……」
「何言ってんだ! 二人とも!諦めんな!」
「太田川君! 西田さん! 手を!」
「高崎……頼む……絶対、生き残ってくれ……おらあっ!!」
そう呟いた太田川は、後ろを向き、西田さんの手を取り、俺達めがけて彼女を投げた。
「……え!?」
「ちょ……やった! 掴んだよ!」
西田さんは驚きの顔をしているが、矢島さんが何とか空中で彼女の手を取り、槍を掴ませる。
だが、太田川の体は浮き上がってしまった。
「太田川!」
「……じゃあな。皆」
そう言い残し、太田川の体は竜巻に吸い込まれた。刃が体を切り裂く音と、太田川の絶叫が響いたのを最後に、ようやく風は止まった。
「く……そっ……」
龍は、既に息も絶え絶えの状態で地に伏せていた。東悟や白川さんが急ぎ、龍の首を切り落としに行ったのを、俺はただその場で見ているだけしかできなかった。
そうして、俺達の二回目の戦いは終わった。




