表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時空(じくう)の旅人  作者: 抹茶
第一章 始まりの空間
17/331

第十六話 龍の咆哮

「う……は……」

「氷藤! おい! しっかりしろ!!」


 俺は氷藤を揺さぶる。背中からの大量出血。呼吸もか細く、放っておけば間違いなく死んでしまう。


「矢島さん!!」


 俺は矢島さんの名前を叫ぶ。名前を呼ばれた彼女は、氷藤の隣まで駆け寄り、膝立ちになって魔法を唱える。


「ヒール!!」


 矢島さんは手を氷藤の背中に当てる。淡い桃色の光が彼女の手から出現し、氷藤を包む。

 〈聖魔法〉。彼女は、獲得したその魔法の能力の一つである回復の魔法を氷藤に使う。

 光に包まれた氷藤の肉体は徐々に再生してゆく。気を失った氷藤の表情も、さっきより穏やかに見えた。


「高崎君!! 久木原君!! ここは私に任せて。 あの龍を!」

「……! そうだ! 悪い、任せた! 行くぞ、東悟!」

「ああ。氷藤を頼む」


 氷藤を矢島さんと残った他のクラスメート達に任せ、俺と東悟は龍がいる場所まで走る。

 目の前では、片翼がちぎれ、全身傷だらけの龍が、白川さん、野田、堀口、江藤さんと戦っていた。しかし、龍は近づけさせまいとあの風の吼えながら風の刃を放っている。


『ゴ……アアアアアアアァ!!!!!』

「くそっ!! 近づけねえ!」

「あの風の刃をどうすりゃいい!?」

「あとちょっとなのに!」


 四人は龍が繰り出す無数の風の刃のせいで近づけない。魔法を放っても、刃に簡単にかき消され、龍まで攻撃が届かない。


「! 高崎君、久木原君! どうすればいいかしら!?」


 白川さんが呼吸を荒くしながら俺達に聞く。俺より先に、東悟が答えを出した。


「……俺が突っ込む。正真、お前ら、後ろから援護してくれ。武装!」

「……分かった。バレット・セカンド!」

「え!? ちょ……ああ! もう! シャイニングエッジ!」


 「武装」と唱えた東悟の身体は鎧に覆われる。東悟は龍に向かって走り出す。

 龍は刃を迫って来る東悟に集中させるが、東悟はそれらを軽々と打ち払う。避けられない分は、俺達が後ろからサポートする。徐々に、龍と東悟との距離は狭くなっていく。


『グ……ゴ……』

「うるせえよ。とっととくたばりやがれ。クソ野郎」


 いくつかは捌ききれず、刃が東悟に命中する。しかし東悟の纏う鎧は、それらから確かに東悟の身体を守っていた。

 少しずつ、東悟は龍に近づく。龍は怒りなのか、あるいは俺達が命を刈り取ろうとしていることへの焦りなのか、憎悪に満ちた表情をする。

 そしてついに、東悟は龍を間合いに捉えた。


『ガ……ガアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!!!!!!!』

「いけ! 東悟!」

「おう!」


 龍は、東悟を自身の鋭い爪で殺そうと左腕を振り下ろす。

 それに対し東悟は、その腕を切断しようと、大剣を振り上げる。

 有利なのは、龍の方。だが、ここまで蓄積されたダメージ、そして東悟の戦意が不利を覆し――龍の左腕が、宙を舞った。


『グルガアアァ!? ゴオオオ!?』

「まだだ!」


 すかさず大剣を持ち替え、東悟は龍の首めがけて振り下ろす。


『ゴガアアアアァァ!?!?』


 大剣は龍の首に深く入り、龍はもはや頭を上げることが出来ない。決まりだ。俺達の、勝ち。

 しかしそう思った直後――龍の目が、怪しく光った。


「!? まずい! 東悟! 離れろ!」

「何言ってやがる!? 次でトドメ……」

『オオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!!!!!!』


 鼓膜が破れるかと思うほどの龍の咆哮。刹那、突風が吹き、俺達はまとめて吹き飛ばされる。


「ぐっ……」

「おい高崎! いったい何が……」


 一緒の方向に飛ばされた堀口は、何が起こったのか分かっていないようだ。

 だが、説明する暇もなく、()()は始まっていた。


「!? 竜巻……?」


 龍の上空、天高くはっきりと風が渦巻いているのが見えた。

 青色だった空は、いつの間にか鉛色にくすみ、吹き荒れる暴風が草木を巻き上げる。

 そして、俺達は異常事態に気付く。


「おい、なんか俺達、吸い寄せられてないか……!?」


 体が意図せず龍の方へと動く。力を籠めなければ、ずるずると引きずられてしまう。


「アイツ……まさか俺達をあの竜巻に巻き込むつもりか!?」


 気付いた時にはもう遅かった。体を引き込もうとする力は徐々に増してゆく。


「何かに掴まれ!! 吸い込まれるぞ!」 


 俺は周囲を見る。此処は平原。掴む事が出来そうなものは、たった一つしかなかった。


「皆! あの槍まで行くんだ!」


 江藤さんが造った、あの金属突起。あれにたどり着けなければ、竜巻に巻き込まれて死んでしまう。

 地面を這うように進み、俺達はそこを目指した。


 

 


 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ