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時空(じくう)の旅人  作者: 抹茶
第一章 始まりの空間
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第十五話 進化

(奴に魔法が届けば……!!)


 風の刃を避けつつ、俺は奴を倒す方法を考える。このままだとジリ貧だ。


「……江藤さん!! 来てくれ!!」


 その時、氷藤が江藤さんの名前を呼んだ。俺なんかよりずっと頭のいい氷藤の事だ。きっと、何か思い付いたに違いない。

 氷藤に呼ばれた江藤さんは刃を避けながら、焦ったように返事をした。


「何!? 今忙しいんだけど!?」

「君の魔法……〈錬成魔法〉で高い柱を作れるか!? そうすれば魔法が届くかもしれない!!」

「ッ……!! オーケー!! やってみる!! メタルクリエイト!」


 彼女は手を地面に置き、魔法を唱える。すると、地面から槍状の金属突起が出現した。


「もっと……もっと大きく……!!」


 彼女は更に魔力を込める。突起は空にいる龍に向かって、徐々に大きくなっていった。


「……よし、頼む!! 白川さん!!」

「任せて!! アクセル!!」


 氷藤は突起の大きさを確認すると白川さんの名を叫ぶ。白川さんは、肉体強化の魔法をかけて、突起の上を素早く駆けて行く。


「届いて……シャイニングエッジ!!」

(!!)


 突起の一番上から飛び上がり、白川さんは魔法を放つ。光の斬撃が、龍に向かって真っすぐ飛んでいく。いける……! 届く!!

 しかし、龍は空中で低く唸りながら、事も無げにその攻撃をひらりと躱してしまった。

 まるで滑るように空中を舞う龍は攻撃を放った白川さんをその蒼眼で嘲笑っていた。


「!? くそっ!!」


 攻撃が外れたことで、落下しながら白川さんはそう吐き捨てる。

 跳び上がってバランスを崩した白川さんの身体は矢島さんと氷藤が走って受け止めたが、三人共苦しそうな表情で再び空中にいる龍を見上げている。

 今ので、駄目。江藤さんが創り出した足場からの攻撃が防がれた事で、クラス中に諦めの雰囲気が広がっていた。攻撃が届かない。倒せない。それはすなわち……俺達の、死を意味しているから。

 だがそんな中、白川さんの技を見て俺には一つ思いついた事があった。


(……いけるか?)


 魔法は、イメージの産物。俺の認識はそれだ。魔法が使えるようになった時、不思議と頭の中にこの魔法のイメージと、その名前が浮かんできた。それならば、この魔法は、イメージ次第で形を変えられるんじゃないか?

 

「なら……!!」


 俺は魔法を唱える。今このバレットは、少し大きな球形をしている。だが、実際の銃弾はこんな大きさじゃない。もっと小さく、物凄い勢いで発射される物のはずだ。だから……


「距離を伸ばしたいなら……もっと小さくだ……!!」


 形も変える。実際の銃弾に近づける。できた。これだ!! これなら……!!


「アイツに届く!! バレット・セカンド!!」


 俺の手から放たれた銃弾は、龍めがけて真っすぐ進む。龍は俺達の攻撃が全く届かないと油断していたのか、反応が遅れ――銃弾が、龍の翼を貫いた。


『グ……アアアアァッ!?!?』


 空中でバランスを崩した龍は、激痛に苦しむ声をあげる。


「!? 高崎君!! その魔法……」

「ああ。矢島さん。これなら、あの龍に届く!! もう一度だ!! バレット・セカンド!!」


 再び銃弾が放たれる。

 しかし、龍は俺を睨みつけ、乱暴に羽ばたきながら俺めがけて風の刃を放つ。


「!? くそっ!! バレット!!」

「正真!! 危ねえ!! おりゃあっ!!」

「く……高崎君!! アイスエッジ!!」


 無数の刃は銃弾をかき消し、俺に襲い掛かる。俺一人では、とても避けきれないほどの量。だが、東悟と氷藤が助けに入ってくれたことで、なんとか窮地を脱する。これで――




――ヒュウンッ!!




「「「!?」」」

 忘れていた。何故()()が来ないと思ってしまっていた。高速の突進。固まった俺達三人を、あの龍はまとめて消し飛ばす気だ。突っ込んでくる龍と目が合う。殺意に満ち、俺だけを見ている。回避できない。死――


「うあああああああああっ!!!」

「がっ!?」

「うおっ!?」


 突然、俺は横から強い衝撃を受けた。それは東悟も同じで、俺達は纏めて吹き飛ばされる。

――氷藤だ。

 直後、氷藤の背後を龍が突っ切った。


「がっ……ああああああああああ!!!!!!!」


 氷藤は叫ぶ。俺たちを弾き飛ばすために横方向に走ったのが幸いして、なんとか命だけは助かったようだ。だが、氷藤の背中は削り取られ、辺りには血がまき散らされる。


「!! おい、氷藤!!」


 俺と投げ飛ばされた氷藤のもとに俺と東悟は駆け寄る。龍は空中で振り返り、俺達と氷藤を見る。

奴は、次の突進で俺たちを消し飛ばすつもりでいるのだろう。再び、龍が突進の構えを取り……


「注意散漫よ。おマヌケさん」

『!?』


 白川さんと野田が、江藤さんの出した金属の上を駆け上がり、龍の背後に飛ぶ。俺達にばかり気を取られていた龍は、それに気づけなかったようだ。


「落ちて。シャイニングエッジ!」

「くっ……ロックブレイク!!」


 二人の魔法が直撃した龍は、再び大地に叩き落された。


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