運命の交錯点
大して高くもない天井、石造りの床、褐色で肌触りの悪い壁。ここに来てから見続け、見飽きた光景。
だけど、不思議と今は悪くないものに思える。それは愛着のためか、惜別のためか……自分の心に問いかけても分からない。
「いよいよ、だね……」
今日という日を待ち望んだ僕は自然と言葉を漏らしてしまう。
ふと、こんな風に言葉を発するのはいつ以来だろうと考えたが、僕のさらに高揚する気持ちはその疑問をあっけなく消してしまった。
――誰が来るんだろう
自分の思いを封印してから幾何もの時を過ごし、ようやく機会が巡ってきた。その時を前にして一番に僕が考えるのは、やはりこれか。
さて、此処に来るのは人間だろうか、それとも異形種なのかな。
分からないけれど、それでも期待せずにはいられないな。
――本当に来るんだろうか
その事を考えると、少し不安になる。
でも、僕の方からできることはもうない。
後はただ祈るだけ――祈るだけ、か……。僕らしくないな。最後に運命に頼るしかないなんて。もう長いこと此処に居るから少し変わってしまったのかもしれない。
――もし来たら……
僕は目の前の『扉』を見た。五つ並んだ扉のその先をようやく見ることが出来る。ここに来てから毎日見続けてきた扉にようやく手をかけられる。そう考えたら少し脇にそれていた気持ちが再び舞い戻ってきた。
それと同時に扉の一つが白く輝きだす。成功だ。
しかし、同時にこれは始まりでもある。僕だけではない。来訪者たちにとっても〈試練〉の始まりなんだ。
「さあ、見せてもらおうじゃないか。ここに来る者たちの『答え』を」
初めまして。抹茶と申します。初めての連載作品になりますので、至らない部分も多くあると思いますが読んでもらえると幸いです。
 




