婚約破棄の仕方を教えてください!!
小さな体に不釣り合いな学校指定の大きなバックをからう君。
暑いのか後ろで1つに結ばれた黒い髪が風に揺れていた。
電車を待つ彼女の後ろで僕も同じ電車を待つ。荷物が重くないか心配でその華奢な背中を見つめていると、薄い生地越しにうっすらと下着が透けていることに気が付いた僕はとっさに視線をそらした。
いけない、いけない。僕はなるべく紳士でありたいのだ。彼女の下着をみるなんて下品なことはしない。
…しないが見えてしまうものは仕方ない。
そっと視線を前に戻すと彼女が後ろを振り向いていた。
つまり僕をみていた。
顔を真っ赤にさせ、その小さく可愛い手は小刻みに震えている。
ああ、可愛いな。
つり上げられた眉もきつく結ばれた口元もすべてが可愛い。同じ人間とは思えないな。
「いや、天使か」
「黙りなさいこの変態ストーカー!!」
「うっ…」
彼女は持っていたカバンを遠心力を使って振り回し僕のお腹へと殴り付けた。
できれば彼女の手か足でお願いしたかったが、まあこのカバンは先程まで彼女の物であり、彼女に触れていたもの。つまり彼女の一部といっても過言ではない。
うん、ほのかに彼女の香りがする気がする。
「匂いをかぐんじゃなーい!というかそのカバンを返しなさいこの変態!!」
カバンをからった僕に彼女が近づいてきたため両手を広げたら水筒が飛んできた。これもプレゼント?もしかして誕生日を覚えてくれていたのだろうか。どうしよう、嬉しい。
「あなたの誕生日は冬でしょうが!」
「覚えてくれていたの?嬉しい…抱いてもいい?」
「いいわけないでしょこの変態!!」
「ぐぅ…っ」
彼女の足が僕の脛を蹴る。その際にひらりとスカートがめくれて白くて美味しそうな太ももが見えてしまった。
別に見ようとして見たわけではなく、偶然みえてしまったのだから仕方ないだろう。そう、仕方ないのだ。ラッキー。
「もう一回!!」
「もうやだこの変態!!なんでこの人が私の婚約者なの!?ううぅ…」
先程までとは打って変わって涙目で嘆く彼女。
ああ、泣かないで。君が泣くと落ち着かないんだ。ほら、これで涙をふいて?
「これ失くしてたと思ってた私のハンカチじゃない!!」
「あ、ごめんごめん。間違えた」
サッと鞄にしまってもうひとつの方を渡す。これはまだ新品だから大丈夫。そして今からこれは彼女の涙を吸いとることで価値がつくのだ。さあ、遠慮なく思う存分使ってくれ。
「こんなもの使えるわけないでしょ、ばかーー!!」
叫んだ時の衝動で彼女の涙が宙をまう。太陽の光が反射しキラリと光る様を見て綺麗だなと思いながら僕はその雫をハンカチで吸いとったのだった。