第二十九話☆ 神様
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「ロイドです。今メンテナンス中で両手映せません……悲しいです。でもデータをたくさん取ってくれてありがとうってポンニョさんから言われました。やっぱり嬉しいです。ロイドです。今日はよろしくお願いしますミトさん」
「よろしくロイドさん。ミトでいいわよ。“さん”を付けられるほど私は出来た人間ではないもの」
「あー、自分は大抵の人に自然と付けちゃうんですよね。性分ですかね。いつの日かミトちゃんと呼べるよう目指してます」
「無理強いはしないわ。それより、朝はご苦労だったわね。あの子の相手疲れるでしょう?」
「慣れたらどうという事はなかったですよ」
「そう言ってもらえると助かるわ。ネガティブでMっ気があって性格が面倒くさいけど、悪い子ではないから。少なくとも私よりはマシよ」
「私はミトさんも好きですよ? 竹を割ったような物言い、新鮮でいつも頭がスッキリします」
「……貴女も随分と物好きね。でも全く嘘が見えない。そういう人は私も一緒にいて心穏やかでいられるわ」
〜コメント〜
意外な組み合わせ
何か会話の精神レヴェル高いね
お互い認め合ってる感じすこ
ロイドちゃんって嫌いな人いなさそうだもん
「やっぱりあれですか、私の考えてる事とか、大抵分かっちゃうんですか?」
「そう、ね。試してみましょうか?」
「何をです?」
「チキチキ! あの子の本音を見てみたい! ミトの部屋! ロイドちゃん編始めるよっ!」
「!?」
「……時々求められるの、ロリボイス。需要と供給ね。予めリスナーから私に対して貴女にしてほしい質問が届いているから、今日はそれを読んでいきたいと思ってるわ。心の内を曝け出す準備はOK?」
「おー、ミトさんならではですね。ばっちこいです」
〜コメント〜
信憑性に信憑のあるミトの部屋コーナー
これがあのマジョを丸裸にしたという……
もやしゃの握力28キロ暴露もこれだよね?
今回はロイドが餌食に……なる未来が見えない
「質問にはそれぞれレベルがあって、私が勝手にランク付けしてあるわ。まず質問イージー。これが一番多かったわね。『彼氏はいますか?』ですって。もちろん答える答えないは貴女の自由だけれど。でも私に嘘は通用しないから、そこだけは注意ね」
「彼氏って、男の人って事ですか? あー何でだろう、私の隣に彼氏が出来るだなんて全く想像出来ません」
「昔、好きな人はいた?」
「記憶にないです」
「……全部本当ね。男の影のカケラも見当たらないわ。私だって小さい頃は好きな子くらいいたのに」
〜コメント〜
ふーん男いないんだ。別にどっちでもよかったけど今人生一番楽しいわ
明日は最高の朝を迎えられる気がする
彼氏はいない、と。彼氏はね
自殺しようかと思ってましたがこの配信を見て生きる希望が出来ました。首吊り用に通販で買った縄で今二重跳びしています
お前ら! 真のファンならっ、推しの幸せを望んで彼氏の一人くらい快く迎えるのが漢ってもんだろ!? 僕はそうは思えませんけど
俺の質問こいっ……
「次は質問ノーマルね。『ロイドちゃんの一番好きなVtuberは誰ですか?』これは確かに、興味があるわ」
「むむっ、これは意外に難しい質問きましたね。全員好きだなんてありふれた答えは面白くないでしょうし。うーん……個人的に、すごく可愛がりたいのはショコラさんで、恩があるのはエクレールII世さんで、見守りたいのはエリザベスさんで……まぁ、大好き! って宣言出来るのはこの中で選ぶとやはりショコラさんになりそうですね」
「確かに彼女は私も一目見た事があるけれど、美しい心をしていたわ。人間的に尊敬出来る相手ね。ところで私はどの部類に入るのかしら?」
「ミトさんは、何だか目が離せないって感じです。どこか自分と似た雰囲気を感じます」
「あら奇遇。私もよ」
〜コメント〜
選ばれたのは、チョコレート
やっぱりここまで誰からも好かれるショコラちゃんって可愛いんだな。知ってた
お嬢様の名前出てきてくれて嬉しい
もやしゃは! もやしゃは何処に!
ロイドとショコラとか俺尊死する
「質問ハード。『嫌いなVtuberはいますか?』。あまり面白くない内容だけれど、質問の数が一人じゃなかったからチョイスしたわ。貴女の答えは聞くまでもないのだけれど……もしかして、いる?」
「いませんね」
「清々しい程の本音ね。知ってたわ」
「というか魅力的な人が多くて逆に困りますよね。私元々コラボってあんまり好きじゃなかったんですが誰かと配信をするたびにその人の事がよく知れて少なからず好きになっちゃうんですよ。もしかして惚れっぽいのかな。私は実はチョロいのかも。私も一人くらい好きじゃない人がいてもおかしくないと思うんですけどね。皆さん配信の外であっても嫌いになれる要素がないですし……」
「もう十分だと思うわ。次いってもいいかしら」
「あ、大丈夫です!」
〜コメント〜
俺もお前が配信する度に好きになってる
良い子やわー
ミトちゃん押されてるじゃん
アンドロイドは嘘をつけない。ロボット三原則の一つに、嘘はつけないってあるもんな
↑しれっと嘘をつくな
これはアンドロイド三原則
ミトの部屋はここからが本番
「じゃあ質問ダーティー。『仕事で稼いだお金は何に使っていますか?』。予想としてはエンゲル係数(家計の支出の食費の割合)がとてつもなく高いのではと思っているけれど」
「あー特に決まってるわけではないですね。いつもたくさんの量食べてはいませんし。割合でいったら確かに食事が占めるとは思いますが……最悪食べなくても死なないので。つまり趣味がないんですよ。だから必然お金が掛からないので、私は安い女です」
「食べなくても死なない? ……あれだけ多才なのに趣味がないのね。珍しいわ。例えば今日の朝に描いてた絵なんてとても興味深かった。けれど絵は趣味ではないのね」
「いやーお恥ずかしいですね。私自身に絵心はないみたいで」
「でも貴女模写は得意なのよ。つまり、そういう事なんじゃないかしら? ところで貴女は神様に会った事はある? これは質問エクストリームね」
「……会った事はありません」
「そうなの? ……私は会った事があるわ。涙すら一瞬で蒸発する様な熱いひに──なんて、面白くないわね。どうやら私に詩の才能はないみたい。もちろん絵心もないわ。遊び心も。何も、私は持っていない」
「……画伯!」
「そう。絵の話になるとまずネタにされるのが、この私なの。人が描いた動物の絵に視聴者は『憂鬱』と名付けたわ。なんてひどいのかしら」
〜コメント〜
尚、本人によると猫のつもりだったらしい
↑嘘乙、猫はあんなヘドロっぽくない
何だかんだ言ってこれまで一度も株を落としていないロイドちゃん流石です
ちょっと質問の意図がよく分からなかった
食べなくても死なないとか。アンドロイドかよ
アンドロイドなんだよ!
この流れ久しぶりだわ
「質問ダーティー2。『センシティブな嗜好はお持ちですか?』。欲に塗れた質問だけれど必死にオブラートに包み隠そうという頑張りを認めて採用したわ。決して個人的な好奇心ではないの。本当よ?」
「えぇ……うーん、この体になってから性欲は無いので、そういった期待には応えられないと思います。申し訳ないです」
「また嘘がないわね。ちなみに私のセンシティブな特殊嗜好は」
「次いきましょう次」
「そう? ……質問ダークネス。『ロイドさんの弱点を教えてください』。これは結構数が多かったわね」
「弱点、水属性的な」
「要するに苦手なものや不得意なものはないかと聞かれているわ。あまりにも貴女が何でも出来てしまうからね」
「苦手なもの? 時間の感覚がおかしいのは周知の事実ですから置いておくとして。芸術が難しいですよ。私はその真似っ子しか出来ませんので」
〜コメント〜
俺の質問キター!
↑どっち? やっぱいいや分かるもん
あまりセンシティブなのはちょっと
結局こいつに弱点はないでFA
ロイドちゃんほんと嘘つかねーな
「じゃあ最後の質問ね。これは、視聴者からではなく私から。これまでの質問の結果を踏まえて貴女の心に踏み入るわ。質問インフェルノ。ロイドさん、貴女……家族はいるの?」
「……ふぅ。家族ですね。実を言うと分かりません。凄く遠い所にいるかもしれないし、ずっと近くにいるのに私が気付いてないだけかもしれません。どうです? 何か見えましたか」
「──ごめんなさいロイドさん。何か手掛かりでも見られたらと思ったけれど、何も見えなかったわ。こんなのは初めて……代わりに私の秘密も教えるわね。私実は妖怪でもなんでもないの」
「ぶっちゃけた! アイデンティティが!」
「本当は人間で、家に帰るとちゃんと血の繋がったお爺ちゃんやお婆ちゃんがいるのよ。それが私の家族。もしも貴女が家族を探しているのなら、微力ながら私も力になるわ。家族は、一緒にいるべきだものね」
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【編集済み】次回で三章の最後です。一週間空いてまた四章始まります(基本一章を十話で使う感じ)前回と今のお話は急ピッチだったので碌に推敲も出来てません。後で修正したりするかもしれません。申し訳ありません。最後はほんわかと締めたいと思います。




