第二十八話☆ 大火
◇◇◇◇◇
「ロイドです。別にゲームをするわけでもないけれど、自分の両手が映っているのがただ面白いからってだけで3Dを隅っこに載せてるロイドです。今日はよろしくお願いしますねマジョさん」
「……」
「……あれ? 繋がってますかね? おーい、マジョさん? あ、チャット? ……緊張が過剰で声が出せないみたいです。おかしぃなぁ、少なくとも昨日一度ミトさんと一緒にお昼を食べて顔合わせしたんですけどね」
〜コメント〜
おは〜
朝はマジョと夜はミトと、一日二つ配信俺得
マジョはマジのインキャだから仕方ないね
ミトがいればそりゃあなー
ミトちゃん司会の才能あるよね
これはロイドちゃん可哀想で可愛い
笑えよマジョ
「……」
「ま、まさかの無言は流石に私もどうすれば……ォホン──貴女本当はマイクをミュートにしているだけでしょう? 芸が浅いわね。でもまぁ貴女のそういう中途半端なところ、別に嫌いじゃないわ」
「ぇー……ミ、ミトちゃん?? なんでぇ」
〜コメント〜
え、なに、隣いるの
ミトちゃんww??
おい待て待てそれはチートだわ
まさか……声帯メタモン?
器用な事すんなー
騙されるなマジョ そこにいるのは化け物だ
「うそぉ。本当にミトちゃんじゃないのぉ??」
「そんな事はどうでもいいの。貴女があまりにも勝手してるから一言物申したかっただけなのよ。ロイドは貴女の付き合いにまだ慣れてないのだから、程々にしなさいな」
「うぅ……緊張してるのは本当だし」
「えぇそうね。誰だってあの方と距離を縮めるのは多少の覚悟が必要だもの。分かるわ。でも他に、貴女にとってもっと本当に思っている事があったはずでしょう?」
「……仲良くなりたい」
「そう、なんですね。良かった。私もマジョさんと仲良くなりたいですよ」
「っすごぉ。こえまね? やっぱりロイドさん凄すぎぃ……やば、興奮で鼻血でそ。でた。目の前が血みどろで死ねる」
「あー何だか少しずつ慣れてきました」
〜コメント〜
え、何これ、てぇてぇ?
軍事用AIは順応力も高い
マジョいつもと雰囲気違うけど本質は一緒
声真似の域を超えてる
お前何でも出来るんだな
もうVtuberロイド一人でいいんじゃないかな
↑それはよくない
声だけだとマジ分かんねーな
これは絵も期待
本当の意味での画伯誕生か
「あーそうでした。今日はマジョさんと一緒に絵を描くんでしたね。お絵描きの林? を使って。マジョさん風景画が得意なんですよね?」
「う、うん……人を描くのは苦手。てか描きたくない。面白くない」
「マジョさんが人の絵描いたら顔真っ黒に塗り潰しそうだもんね。私は絵は苦手ですね。多分。模写くらいしか出来そうにありません」
「模写できる。絵が苦手……苦手?」
〜コメント〜
超写実的なんだろ? 知ってるよ
カメラで撮るのとロイドが描くのは、一体何が違うんです? 教えて偉い人
マジョの『枯れた緑』すげーから一度見てみ
鉛筆画得意そうだなロイドは
お前そろそろ弱点俺達に教えろよ……
完全記憶に精密動作Aの絵が下手い訳ない
「とりあえず何か描いてみます? お題は、やっぱり風景的なので……川とか?」
「私は普段はお題は考えない想像性が失われるから最初は一点に色を置いてそこから広がる幾つもの可能性を形にすると気持ちよく描ける」
「ぉ、おー……そんな一面が。じゃあ、お題は特になしで適当に描いてみますね」
〜コメント〜
めっちゃ早口で喋って候
いや初めて聞いたわマジョの長文
普通に喋れるんかいw
今日のマジョは静かに狂ってる
やっぱりマジョは絵上手いよなぁ タッチが上手。ところでタッチってなに?
ロイド案の定写真作ってる
気持ち悪い描き方してるねぇーw!
左下の角から斜線を引くように笑
なんか既視感と思ったらこれ印刷だわ。インクジェットプリンターだわ
そんな描き方があるか!
マジョの絵を見て癒されよっと
「あ、いけない、何も考えないで描いてたら近所うつしてました。消します」
〜コメント〜
消さないでっ……消してどうぞ
いけない事かもしれないが途中までの絵が脳に刻まれちまった
安心しろみんな。これはロイドちゃんが悪い
マジョもクオリティーに反して描くスピード早い
↑※ただし人間にしては
(マジョは天使なんですがそれは)
こんなネガティブインキャの天使がいてたまるか
「ほえー、色合い鮮やかですねぇ。どこかの秘境にでもありそうな幻想と現実の中間。私じゃ描けないですね」
「……でも全く同じ絵なら描ける?」
「全く同じ絵なら、ですね。さて、どうしましょうか。私も何か描かなければならないんでしょうけど……福沢諭吉さんでも描こうかな」
〜コメント〜
はい通貨偽造の罪で逮捕ね
常習犯ですか?
もしかしてやたら金持ち風だったのは……
安心してロイドちゃん↑このバカ消しといたから
お前らは何も見なかった。いいな?
まだ単なる肖像画だから!
地味に完成しつつあるマジョ
はぇークオリティ高いじゃん
「わー凄いですね。これ、題名は決まりました?」
「……『生い茂る枯葉』。ロイドさんは、もっと心のうちを晒してみるといい。ありのままに。本能のままに。自然と手は動く」
「本能、ですか。ちょっと頑張ってやってみます」
「ん……ロイドさんならきっと『おはよーお姉ちゃん、ママ出掛けてるー?』……ぁ、またやっちゃった」
「またなんですね」
「ぅん……もう慣れた。私も。みんなも」
『あーお姉ちゃんまた配信やってる。やっほーみんな、お姉ちゃんのファンやめて私のファンにならない?』
「うっさい」
〜コメント〜
お、今日のログインボーナスじゃん
実質姉妹配信
唯一マジョが目を合わせられる人間
こいつにだけ許される所業
ぶっちゃけ妹ちゃんの方が好きです(内緒)
『あー! ロイドちゃん! なんで、なんで? お姉ちゃんみたいなキノコみたいな人と配信してくれるだなんてやっぱり聖人だよ! ずるいずるいお姉ちゃん!』
「ごめんロイドさん……うるさくて」
「元気があるのはいい事ですよ。ちなみに私は聖人じゃありませんロイドです」
「……よし、帰らせた。全く。あの子うるさいから。人間の次に嫌い」
「仲が良いのも良い事ですよ」
「仲良くなんか……ぁ、絵、完成した?」
「えっ」
〜コメント〜
これは……赤い何か
まさかのロイドちゃんも画伯だった?
下手いのかどうかも分からない
抽象画かな?
考察班たすけて
「ょし……『江戸町大火災』と命名する」
「私江戸燃やしちゃいましたか。ごめんなさい江戸時代生まれの人。でも確かに、炎が揺らめいている様にも見えますね」
「これが本能。ロイドさんの心の深いところ」
「私は熱血系だった……?」
「人間は炎に安らぎを求めるものだから。これは綺麗な火。私も火を見てると心が落ち着く。あぁ、死んだら火葬がいい。死後唯一の楽しみ……ぇへへ」
「あーいつものマジョさんに戻った」
〜コメント〜
唐突に燃やされる江戸
江戸は燃える風潮がある
扱いに慣れてきたなロイドちゃん
ミトちゃんと二人で保護者してどうぞ
↑つまり夜の配信は家族会議だった?
マジョも今日はよく喋る喋る
いつかマジョの笑い声を聞かせてやりたいぜ




