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二十五話 ポョンポニョン人

◇◇◇◇◇


「わざわざ本社までご足労頂き申し訳ありません。なるべくロイド様の自由を尊重するよう努めているのですが……不甲斐ない自分を何卒お許しください」

「私そんなワガママに見えます?」


 スクエア本社に橘さんに呼ばれて、やってきて早々下手に出られると私も普段の己を反省する。自由を求める私は確かに束縛されるのは嫌いだが、ここに来る事は全然苦ではないというのに。


 ゲーム風にいうならここスクエア本社は、フラグポイント。次なるイベントのスタートラインなのだから。


「むしろ、橘さんには改めてお礼を言わせてください。この度はお騒がせしてすみませんでした」

「いえロイド様に何事もなくて良かったです。こちらは想定よりも遥かに騒ぎが起きずに拍子抜けしたくらいです……不自然なくらいに。その証拠として別件の両手3D配信について概ね算段が立ったのでご連絡させて頂きました」

「あー、リスナーの皆様に謝罪動画とかあげた方がいいですかね?」

「その必要もないでしょう。今の状況では波風立てずに軽く一言、いつもの動画に添えるくらいのお気持ちで良いと思われます」

「じゃあその、両手3D配信の時に?」

「両手3D配信の時に」

「……それはどういう?」

「もちろんロイド様の戦闘技術……失礼、ゲーム操作に対するあらぬ疑いを晴らすのが目的ではありますが、主な理由は二つあります。一つは体全体を3Dにしたとしても、両手の細やかな動きを再現する技術力が今のスクエアにはないこと。それでは本末転倒なので。二つ目に、全身を使った3D配信はまだ試験段階という事もあり一期生の方々にしか使用しておりません。その段階でロイド様に使用した事により、スクエアはロイド様を贔屓にしている、などという不必要な勘繰りを防ぐ為です」


 はぇー、初めて両手3D配信の件について目にした時は、何言ってるんだスクエアという気持ちが少なからずあったが、色々と考えているんですね。反省です。上に立つ人は結構色んな事を考えているものなのですよ。


「贔屓にしている、という事実は多少ながらありますが、わざわざ公にする事ではないので」

「それは、やはり私が世界でも有数の稀に見る端正な顔立ちだからです?」

「お金の問題です」

「大人の世界!」


「簡単な費用対効果です」と橘さんは言った。でもその後「そちらはあくまでスクエア本社の理由ですけれどね」と意味深に付け加えた。


 この方が時々、ドキッとさせる言葉を使うのは、もしかしてわざとなのだろうか……


 私が男でなくて良かったと思う。絶対に手玉に取られるもの。今は取られていないのか、それは知らない。


 私は両手3D配信の最終調節の為に、スクエア所属 第二期生 ポョンポニョン人のポンニョさんに会いに来た。橘さんは別の方の担当案件があるので私とポンニョさんを会わせた時点で帰ってしまった。ポンニョさんはアンズさんのようにライバーでありながら、こういった機械面にツヨツヨの元機械技師さんという二刀流なのだ。


 ポンニョさんは覇気のない顔で自分の自己紹介を軽く済ませると、私の手に色々な機械の類を貼り付けてデータを取っていく。私には専門外なので、その間沈黙を続かせないようにポンニョさんに話しかけた。


「ポョンポニョン人って何ですか?」

「そんなのボクが知りたいよ。徹夜続きで眠たくて設定欄に適当に殴り書きして応募したらここが採用しちゃったんだ。むしろ野生のポョンポニョン人を見かけたらボクに教えてくれ。参考にするから」


 多分そんな機会は二度とこない。


 ポンニョさんの声はとても中性的で、正直男か女か見分けの付きにくい。性別も聞いておきたかったが、失礼かなと思い私の手にぺたぺたと貼り付けてある謎の物体について聞いてみる事に。


「私の指のこの電極の様な物は一体?」

「簡単に言えばセンサー。それのお陰で指の動きを細部まで再現出来る。多過ぎてもノイズが走るだけだからバランスが大事なんだ。調整したら極薄の手袋型にするからその使用感も後で聞きたい。素手と比べると多少不便だと思う」

「ほえー。あ、にぎにぎしていいですか?」

「もうちょっとで調整終わるから──はい出来た。あ、勝手に指とか触ってごめんね。大丈夫かなボク。神聖な物に触れて不埒で不浄な心を抱いてしまったとかで、手が火傷しないかな」

「私の手にそんな浄化作用は無いと思いますけど……あ、思ったより動かしやすい」

「よかった。そうだ、見える? このモニターに出てるのが公開予定のキミの両手」


 ポンニョさんが見せてくれた画面には、真っ白な色の手をした安藤ロイドの手がにぎにぎと動いていた。ちらりと見える袖がロイドの服と一致。


 うねうねと動く真っ白な手は、人間味の薄く人間離れした美しい形をしている。


「美人さんの手ですね」

「まあイメージとしては、理想の手の形をモデルにしてるから。でも、本物の方が整っていたのは計算外だったけど。自覚ある? キミの手大理石みたいだよ。とりあえずうまくいってるみたいだ。細かい操作の仕方を教えるからメモとか……いらないんだっけ。ボクもその頭が数年前にあったらなぁ」


 結局最後までポンニョさんの性別と、ポョンポニョン人の生態は分からずじまいだった。でも、途中で母親らしき方から電話が掛かっていたので、ちゃんとご両親は健在のようだ。……むしろ私のこの体は、どうやって産まれたんだろう。案外、粘土をこねるように作られていたりして。ポョンポニョン人よりも私の方がよっぽど不思議種族じゃないか。


 私は眠たいのに頑張ってくれたポンニョさんにお礼を言って、次なる配信、カイザー五条さんと同期の夜叉金さんとの配信に備える!


 第三期生との初コラボ! 色々と順番を間違えてる気がしなくもないが、楽しみです!


◇◇◇◇◇


切り抜き


お見舞いの準備していたらとっくに退院していて、何故か病院の態度もよく分からなかったので(前話切り抜き参照)、お家で拗ねてるエリザベス様

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